第197話 さてと、今日も今日とてホネホネ退治です。

前回のあらすじ:潜ったダンジョンはアンデッドがいっぱい。



 地下二階を踏破し、次なる階層へと挑む私達。と多少格好付けてはみたけど、実際にはこれといって新たな魔物は出てこずに、ひたすらホネホネさん達やらゴーストさん達やらと戯れるだけ。数少ない違いといえば魔物達が多少強くなっていることくらいだ。


 まぁ、多少強くなったところで、マーブル達の敵とはならない。同じように倒して劣化魔石をひたすら集める作業を繰り返しているだけだった。一応強くなっている分は劣化度合いも低くなっているようだけど、劣化は劣化である。組み合わせて魔石にできれば、かなりの数確保できるけど、問題はこれを魔石にできる領民がいるかどうかである。仮にいなかったらタダのゴミ、、、。こういう加工は洞穴族のみんなが詳しそうだから一応聞いてみますかね。後はゴブリンのみんなの中で誰か詳しい人がいるかもしれない、そんな期待を込めて集めるには集める。


 ・・・期待を込めなきゃ、こんなことやってられっか!! というのは私の心の叫である。現在、私の役割といったら、可愛いうちの猫(こ)達が嬉しそうに倒して出てきたこの劣化魔石を集めること。ある程度やっているといい加減飽きてきたので、水術を繰り出して手元にたぐり寄せてから回収するやり方で行っている最中である。普通の水だと流れてくれないので、床の部分を氷で張り巡らせてから水を流すという、ある意味器用なやり方で楽に回収する方法を思いつき、それを実行していた。


 それを見たマーブル達が嬉しそうに見ていたので、こちらも張り切ってしまった結果、マーブル達も妥協無くガンガン倒していくので、数は増える一方である。もう、いくつ集まったのか数えるのが嫌になるほどである。いや、空間収納がしっかり仕事をしてくれているので、何がいくつ集まっているのかは確認出来るけど、その確認する作業すら面倒でねぇ、、、。


 そんなこんなで、地下三階と四階もあっけなく殲滅。もちろん隅々まで歩き回りましたよ、水術の移動でね。というのも、地下一階から四階まで構造が同じなんだよね、、、。念のためにマッピングもして確認済みである。


 地下五階に到着。ここは地下一階から四階までとは違う構造のようだ。降りてすぐに何も無い部屋があり、その先には大きな扉があった。多分ボス部屋だろう。しかし、ダンジョンって、何で五階毎にボス部屋があるのだろうか? テンプレか? テンプレなのか!? いや、変にそういったお約束みたいなことを避けるものに比べたらかなりマシか、、、。一応声かけをしておきましょうか。


「マーブル、ジェミニ、ライム。この扉の先にはボスがいると思います。疲れてない?」


「ミャア!」「大丈夫です!」「いつでもいけるよー!」


 3人が元気よく返事をする。これだけでも癒やされるなぁ、、、。って、一番疲れていたのってひょっとして私なのか!? まぁいいか。行けるのであればさっさと行ってしまいましょうかね。どうせまだ続きがあるだろうから、、、。


 マーブル達が私の定位置に飛び乗ったので、前を進んで扉を開けて中に入ると、そこには玉座? のような座る椅子に偉そうにふんぞり返りながら座って待ち構えているホネホネさんが1人。いわゆるリッチという存在なのか!? いや、ボロ布を身に纏ってないな、てことは違うのか? ということでアマさん出番です。


 ボスということで、アマさんの鑑定結果を少しだけワクワクしながら確認したら、おざなりな紹介であったので、食べられない+大したことの無い相手ということだろう。結果も「ボーンキング(格下)」と出ていたので、恐らくそういうことだろう。曲がりなりにも格下なので、ホネホネさんに決定。そのホネホネさんが話してきた。でも、口動いてないんだよな。しかも、結構イケメンボイスだし。


「よくぞここまでたどり着いた、、、って、何だ、そのガッカリした顔は!! 私はボーンキング。アンデッドを統べる者である。」


「いや、統べる者って、あんた、格下でしょ?」


「フッ、そうか、お主、鑑定持ちか、、、。しかも、我を格下と見破るということは、かなり高ランクの鑑定者であるな。」


 ・・・そりゃ、アマさん印(一応神)の鑑定ですからねぇ、そのくらいは余裕でしょ。当人いい加減な鑑定しかしてなかったけど。でも、おざなりということは、倒したドロップを確認しても、大したことなかった場合が多かった、いや、全て大したことなかったんだよなぁ。・・・そういう意味では信頼性が高いのか、アマさんの鑑定は。


「確かに、我はボーンキングの中では格下の存在に過ぎん。しかし、お主ら程度で、その格下である我を倒せるかな?」


「・・・だそうですよ。では、今回は立候補制でいきますか。誰かあのホネホネさんと戦いたい人いますか? いなかったら、私が戦いますけど。」


「じゃあ、ワタシが行くです!!」


「おっ、ジェミニがいくのね。じゃあ、任せたよ。」


「ワタシにお任せです!!」


 ジェミニが私の右肩から降りて、ホネホネさんの前に出ると、ホネホネさんはニヤリとして答えた。


「ほう。1体、しかもウサギか、、、。我も舐められたものだな、、、。まぁ、いい。かかってくるがいい!!」


 そうホネホネさんが言って立ち上がり、杖と剣をそれぞれ持って構えた途端にジェミニが動き出した。


「なっ! この速さは、、、。クッ、調子に乗るな、そこだ!!」


 とか言いつつジェミニに仕掛けるホネホネさん。もちろんジェミニには当たるはずもなく空を切るのみである。まぁ、仮に当たったとしても、あの程度では全く効かないんだろうけどね。


 ホネホネさんの攻撃を避けつつ、ジェミニの後ろ足キックがホネホネさんの武器を持っているそれぞれの手に当たると、手の骨が砕け、杖と剣がそれぞれ私達の手元に飛んできた。念のため鑑定したが、結果はやはりいい加減であった。


「ジェミニ、ありがとう。でも、あまり使い途がなさそうだから、倒しちゃってもいいよ。」


「ハーイ!!」


 ジェミニが元気に返事を返すと、先程よりも速く動き出した。


「なっ! クソッ、たかがウサギごときに!!」


 とホネホネさんが、悔し紛れに何か言っていたが、その間にもジェミニの後ろ足キックが炸裂しており、為す術もなくボロボロにされていくホネホネさん。最後は全身がバラバラに砕けた状態でスーッと消えていった。そこには宝箱が置いてあった。


「ジェミニ、お見事、お疲れ様! 宝箱だね。罠は、と、無いようだね。じゃあ、ジェミニ、そのまま開けちゃって。」


「了解です!! ・・・あ、アイスさん、何か箱が入ってますよ?」


「箱? どれどれ、、、。なるほど、その箱の中に何か入っている感じかな。」


 宝箱に入っていた木の箱を取り出すと、宝箱が消えた。大丈夫、木の箱はしっかり残っているから。


 木の箱を開けると、ガラスでできたピッチャーが1つと、小さめのグラスが5つ入っていた。一応鑑定してみると、、、。・・・そのまんまだった。とはいえ、この世界ではここまでクリアなガラスは見たことないので結構な値打ちモノになるかもしれない。もちろん、売らずにこっちで使うけどね。


「ミャア!!」


「アイスさん! それは、飲み物をいれる容器みたいですね! でも、キレイです!!」


「ピカピカだー!」


 マーブル達も喜んでいるね。とはいえ、私達にとっては結構小さめかもしれないけど、マーブル達にはちょっと大きいかな。ライムは問題無く使えそうだけど、やっぱり3人一緒、いや、うちのペット達でも使える分が欲しいよね。・・・となると、私だけが使うわけにもいかないし、別に以前いた世界ではごくありふれたものでしかなかったし、、、。いいや、陛下にお土産として献上しますか!


「面白いモノが見つかったけど、私達が使うには少し使いづらいから、陛下に献上しようと思っているんだけどいいかな? お揃いで使えないから、そっちの方がいいかな、と思ったんだけど、、、。」


 私がそう言うと、マーブル達は賛成してくれたので、献上することで決定。要人用で使うだろうから、毒無効などの付与をライムにお願いしておいた。何か良い素材があったら、今度こそお揃いで作ってもらおうね。


 グラスセットを木の箱にしまって、それを空間収納へと入れた後、部屋を出て少し進むと、地下五階の階段が見つかった。時間を確認すると、結構いい時間になってきたので、今日はここまでということで、ここに転送ポイントを設置してもらってダンジョンを脱出した。


「侯爵、お帰りなさい! ご無事で何よりです!!」


「見張りの役目、ご苦労様です。この辺りで何か異常はありましたか?」


「いえ、特にありませんでした。そういえば、朝の時分では、何か嫌な気を入り口から感じていたのですが、今はほとんど感じられなくなりました。まだ油断してはいけないとは承知しておりますが。」


「おお、そうなんだ。もしそうなら、魔物を倒して回った甲斐があったね、マーブル、ジェミニ、ライム。」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」


「おお! マーブルちゃん達が頑張ってくれましたか!! 流石ですな!!」


 マーブル達は嬉しかったのか、この辺りを走り回っていた。嬉しそうに駆け回るマーブル達を見て、私だけでなく、見張りをしていた兵士達も非常にホッコリしていた。


 しばらくマーブル達を眺めていた後、マーブル達は私の定位置に乗ってきたのでフロストの町へと戻ることにした。兵士達の見送りを受けて、フロスト邸に戻ると、朝に会ったゴブリンと洞穴族の領民達の出迎えを受けてから屋敷に入った。そして今日のダンジョンでの出来事を簡単に話しつつ劣化魔石について聞いてみたけど、この2人は知らないということだったが、ひょっとしたら、ガンドさんが知っているかもしれないとのことだったので、フロストの町へと戻ってからガンドさんに聞いてみよう。


 転送部屋へと戻り、マーブルの転送魔法で部屋に直接戻った。・・・最初に目に入ったのは、何故か私の部屋で陛下とリトン公爵が仕事をしていた光景だった、、、。私達が戻ったのに気付くと、こちらがあからさまに不満げな視線を向けているのも意に介さず陛下が話してきた。


「おう! 侯爵、戻ったか。報告を聞きたいが、面倒だからかいつまんで説明してくれ。」


 ダンジョンの地下五階まで進んだこと、地下五階でボスに遭遇したこと、まだその先があること、出会った魔物は骨と幽霊の魔物だということ、それらの魔物から劣化の魔石が手に入ったこと、その劣化魔石はまとめると魔石になるけど、私ではできないけど、洞穴族のガンドなら何か知っているかもしれないということなどを話した。


「ほう、一つにまとめると魔石になる、劣化魔石というものが存在していること、ですか。それは興味深いですな。カムド殿、申し訳ありませんが、ガンド殿をここに。あと、ラヒラス殿もこちらに呼んできてもらえないでしょうか?」


「宰相様、ガンド殿とラヒラス殿ですな? 承知致しました。」


 カムドさんは部屋を出た。しばらくして、ガンドさんとラヒラスが部屋に入ってきた。


「おう、リトン宰相、俺に用事か?」


「宰相様、私に何か用件とか?」


「ああ、2人とも済まないな。たった今、フロスト侯爵が戻ってきたんだが、詳しい話はフロスト侯爵から聞いてくれ。」


「2人とも済まないね。実は、劣化魔石というものを手に入れたんだけど、劣化魔石についてはガンドさん、何か知ってるかな? あ、ラヒラスは私じゃなく、リトン公爵がお呼びしたんだよ。」


 そう言って、劣化魔石をいくつか空間収納から取りだした。ガンドさんは一つずつ手にとって確認した。


「ふむ。確かにこりゃ劣化魔石だな。残念だが、俺は合わせ方は知っているけど、劣化魔石を合わせるにゃ、それ用の道具が必要なんだ。生憎その道具が無くてな、済まねぇが、すぐにはできねぇ。」


「なるほど、そのためにラヒラスをここに呼んだんですね、リトン公爵。」


「そういうことだ。ラヒラスよ、話は聞いていたな? 用意できるか?」


「宰相様、私が作れるのは魔導具類であって、加工道具ではないのですが。」


「ラヒラスさんよ、合わせるのに必要な道具に魔導具も入っているんだ。それは作れるか?」


「種類にもよるけど、魔導具なら何とかなると思う。」


「それならば話は早い。もし劣化魔石から魔石を作り出せるようになれば、我が国でも重要な産業になる。2人が中心となって最優先で事を進めて欲しい、頼むぞ。」


「承知したぜ、宰相様!」「お任せを!」


「あ、2人ともここを出る前に劣化魔石受け取って。マーブル、袋を作ってくれないかな? 容量だけ大きいやつを。」


「ミャア!!」


 マーブルが「いいよ!!」と言ってくれたので、空間収納から袋を2つ取りだしてマーブルに渡すと、マーブルはすぐに袋に容量増大の付与をかけたので、その1つに劣化魔石を入れていった。入れるときに確認してみると、劣化小が808個、やや小が646個、中が503個といった感じだった。


「はい、今日取ってきた分だけど持ってって。」


「・・・ご領主、どれだけ倒してきたんだよ、、、。」


「これだけあれば、練習し放題だよね。」


「正直、これの10分の1でも練習し放題の量なんだけどなぁ、、、。」


「とりあえず、今日の釣果だから、明日以降も取ってくるには取ってくるけど、あまり期待はしないで。」


「いや、これだけでも使い切れねぇ量あるぞ、これ、、、。」


 ガンドさんがブツブツ言いながらラヒラスと2人で退出した。


「あ、そういえば、陛下にお土産をお持ちしました。」


「あぁ? 侯爵が俺に土産だと!? ・・・嫌な予感しかしねぇなぁ、、、。」


「私を一体何だと思っているんですか、、、。まぁいいです。こちらになりますので、どうぞご覧ください。」


 さっき倒したホネホネさんの宝箱にあったピッチャーとコップのセットである。


「・・・侯爵、これは一体どこで手にいれた?」


「これですか? 帝都のダンジョンの地下五階で倒したボスモンスターの宝箱に入ってたやつですが、何か? あ、保険としてライムに毒浄化の付与かけておきましたので。」


「いや、そんなそこらにあるもんと同じような扱いをしねぇでくれるか? こんな透明な器どうやって作るんだよ、、、。こんなに透き通ったやつ初めて見るぞ、、、。」


「ですな、私も初めて見ますな。しかし、侯爵、これを本当に陛下に献上してもよろしいと?」


「もちろんですよ。ご覧の通り、マーブル達が使うには深すぎますのでね。」


「あぁ、なるほど。つまり、侯爵は、マーブル殿達とお揃いで使えないから、いらない、ということでよろしいか?」


「その通りです! 流石はリトン公爵ですね、分かっていらっしゃる!!」


「・・・いや、わからいでか、、、。」


 リトン公爵は聞こえないくらい小さな声でつぶやいたのでアイス達には聞こえなかった。


 また、アイスが使わない理由としては、マーブル達とお揃いで使うことができないというのも大きな理由であったが、それとは別に、以前いた世界では当たり前のように使っていたものと同じなので、別段欲しいと思わなかったのも理由の1つなのであった。


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トリトン陛下「ほう、ビールってやつは、こういう色をしていたんだな。」

リトン宰相「ええ、実に綺麗な色をしておりますな。」

トリトン陛下「味も見た目もこれで楽しめるってもんだ!!」

リトン宰相「ええ、まさに。」

マリー夫人「・・・お2人とも、こんな早くにこっそりと何をなさっておいでですの、、、?」

2人「「あ、これは、えっと、、、。」」


マリー夫人にドナドナされる2人であった。

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