第137話 さてと、面倒事って続くものなんですね、、、。

前回のあらすじ:ビールの仕込みは無事完了できた。




 酒造りを始めてから数日後、サムタン公国へと使者として赴いていた、カット男爵やアンジェリカさん達から、通信の魔導具でとりあえず終了したと連絡があったので、迎えに行った。待ち合わせ場所は、洞穴族が住んでいた洞窟である。


 ここはこれからもサムタン公国での拠点として使用するつもりなので、少しずつ居住性を高める改造をしている、といっても、元々住居として使用していたこともあり、あまり改造するところはなかった。とりあえず行っておいたのが、休憩所として部屋を広くしたり、簡易的にではあるが、調理場などの施設を作るために部屋を拡張したくらいかな。また、洞穴族のみんなは入浴などの習慣がなかったので、風呂場を設置した。


 ちなみにほとんど触れていないし、これからも触れるつもりはほとんどないけど、トイレの問題であるが、ねぐらはもちろん、フロスト領には1軒につき必ず1つは用意してある。基本的にはトイレ関係は王宮などの巨大な建物でない限りは、公衆施設として共同の場所があるかどうか、といった感じである。ねぐらには客間や戦姫用の部屋にも1つずつ用意されている。


 アンジェリカさん達がここに来るのを待っている間に、これらの作業を進めている。ジェミニが土魔法で掘り進めて、私が水術で固めて、マーブルが火魔法と風魔法で乾燥させるという感じで広げたりしているが、実は一番活躍しているのがライムである。何かしら汚れを見つけては片っ端からキレイにしていく。


 まあ、こんなもんでいいかな、と一応の目処は立ったので、作業を終了する。ぶっちゃけ、サムタン公国へ行く用事なんてこれ以降はほとんどないので、気合を入れて作業する必要はない。トリトン帝国としては今後この国と交流するつもりは毛頭ないようだし、精々この国経由でタンヌ王国以外の隣国へと冒険者として行くときの拠点程度の利用しかないだろう。


 作業を終えてまったりしているところに、アンジェリカさん達が来た。


「アイスさん、お待たせして申し訳ありませんでした。只今戻りましたわ。」


「アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん、お帰りなさい。カット男爵もお役目ご苦労様でした。」


「フロスト公爵、このカット、無事役目を終えて戻ってきましたぞ。」


「それよりも、アイスさん、何やらお酒を作り始めたと伺いましたわ。」


「おお、ついにフロスト領で酒造りが開始されましたか! フロスト領産でしたら、味の方も期待できそうですな!!」


 うわぁ、耳が早いというか何というか、、、。ここでも期待されてしまっている、、、。ってか、私に作らせようとしないで、酒の造れる奴呼んで来いよ、とか領民の誰かに言った気がしたけど、その時の返事が「使用する原料が違うので、ここはフロスト様が自らお作りになった方がいいかと。」といけしゃあしゃあと答ええてたっけ。周りにいた領民達も一緒に頷いていたし。


 とりあえず、みんな無事に戻ってきたし、戦姫の3人もカット男爵もスッキリした顔をしていたから、概ね成功だったのだろう。詳しい話についてはあまり興味がないから、さっさとフロスト領へと戻るとしましょうかね。じゃあ、マーブル、お願いね。


 転送魔法でフロスト領のアマデウス教会内の転送ポイントへと移動し、部屋を出ると、トリトン陛下とリトン公爵が待っていた。


「おう、フロスト侯爵、使者の迎えご苦労さん。アンジェリーナ嬢達もカット男爵も無事に戻ってきてくれたようで何よりだ。で、来てすぐに申し訳ねえが、首尾を聞かせてくれ。あ、フロスト侯爵、お前さんも同席しろ、いいな。」


「ええー、、、。」


「・・・言っておくが、お前さん、思いっきり当事者だろうに、、、。」


「フロスト公爵、本当に貴殿は国政に興味ないんだな、、、。」


 ということで、嫌々出席させられております。ちなみに内容だけど、予想通り、サムタン公国は最初はシラを切っていたそうですが、次々と証拠の品を提示していくことによって、ごまかしが効かなくなり、逆ギレで一部の連中が襲いかかってきたそうですが、ことごとく返り討ちにしたそうです。スッキリした顔をしていたのはそのせいかもしれないね、、、。ってか、こいつら馬鹿なんだろうか? ソロでドラゴン倒せるような凄腕の相手に襲いかかるとか、、、。


 そんなわけで、動かぬ証拠を突きつけられた上に、自慢の精鋭達(笑)が返り討ちに遭ったことも踏まえて多額の賠償金を筆頭に、数々の有利な条件をもって解決したそうです。王国側では、それが原因でサムタン公国が滅びようとも知ったこっちゃないようです。また、王国側では、どうせ条約破りされるだろうから、とりあえず賠償金だけは即座に回収したようです。というより、即座に回収できる賠償金的なもの以外は見るものがなかったそうです。


 カット男爵の方は、トリトン帝国より先に、タンヌ王国とのそういった出来事があったので、かなり強気に出たそうですが、向こうは自慢の精鋭達(笑)が戦姫に倒されてしまったため強気に出られずひたすら低姿勢を取られたようです。ひたすら謙った公王直筆の詫び状を受け取ったそうで、今現在トリトン陛下がそれを読んで腹を抱えて笑っております。タンヌ王国公使館へと戻る道中で何者かに襲われたそうですが、きっちりと仕留めたそうです。


「それにしても、みんなご苦労だったな。あ、そうそう、これを機に我がトリトン帝国と、タンヌ王国は同盟を結ぶことにした。」


「同盟ですか? いきなりですね。」


「確かに、いきなりだけどよ。実は話は以前からあったんだよ。ほら、お前さんからラヒラスが作った魔導具だっけ? 長距離を無線通信するやつ。あれで、たまにタンヌ国王と個人的に連絡を取ってたんだよ。」


「通信の魔導具ですか? あれは、タンヌ国王はお持ちではないと思いますが。」


「ああ、それについてだがな。最初はアンジェリーナ嬢が持っていたものを使ってたんだが、俺がラヒラスに命じてタンヌ国王用に作らせて渡したんだよ。」


「そういえば、ワタクシ、すっかり忘れておりましたわ、、、。しかし、どうやってそれを? お父様は基本ワタクシの部屋には入らないのですが。」


「まあ、細かいことは気にするな。それについてはリトン宰相と王国の外務大臣を通じていろいろ話した結果そうなっただけだからな。」


「そういえば、確かに、通信具のことは話したことがありましたが。とはいえ、それ以上のことは特に話したことはないと思いますが、、、。」


「きっかけは気にしなくてもいいぜ。とにかくだ、トリトン帝国とタンヌ王国は同盟を結ぶということは決定事項な。」


 恐らく、トリトン陛下が神の力か何かを使ったのだろうな、、、。久々に話し相手ができたのも嬉しかったんだろうな。しかも同等の身分だから、何かと話しやすいのかな。まあ、同盟とか国家間の話は私には関係ない話だから別にいいか。


「それについては承知しましたが、私も初めて聞いた話なので、細部を詰めていかないといけませんな。」


「ああ、その必要はない。後日、タンヌ国王がこの国に来ることになってるから、それから細かいことは詰めていくつもりだ。」


「え? お父様がこっちに来られるのですか!?」


「ああ、そうだぜ。会場はここだからな。正確にはアマデウス教会だな。何せフロスト城はまだ完成してないしな。」


「は? 何でここなんですか?」


 おい、オッサン、何しれっと勝手にここを会場にしてるんだよ!


「何言ってんだ? 当たり前だろ? ここ以上に会談をするのに相応しい場所があるか?」


「確かにそうですな。会談をするにはここが一番よさそうですな。」


「言われてみればそうですわね。ここほど安全な場所もそうそうないですしね。」


「しかも、ここのメシはうめえしな、ハッハッハッ!!」


「ですな!」


「ですわね!!」


「いやいや、メシが美味いと言ってくれるのは嬉しいですけど、一番安全って、それはないと思いますけど。しかも、宿泊場所はどうするんですか?」


「フロスト侯爵、お前さん、自覚してねえかもしれんが、ここの領民の部屋一つとっても、下手な宮殿の部屋以上に快適だからな。素材から言って、最高級品揃いなんだぞ!! 宮殿にある俺の部屋だって、あんなに良い素材のもの一つもねえよ、、、。何で、ダークオークが普通に存在してんだよ、、、。」


「ですな、魔樹を使った家具や食器類を当たり前に使っておりますからな、ここは。フロスト公爵、私達でも貴殿から頂かなければ、所有すらできないのですぞ!」


「あとな、お前さん、少し勘違いしてるかもしれねえけど、ここを会談の場所にして欲しいと言ってきたの

向こうからだからな。」


「はい? 向こうから?」


「おう、向こうからだ。向こうとしては、アンジェリーナ嬢達の様子も気になるだろうしな。」


「そういえば、ワタクシ達はここの住人になると、お父様にお伝えしましたわね。」


 なるほど。確かに、親としては可愛い娘の動向は気になるわけで、それでここに白羽の矢が立った訳か。


「あとは、酒が目的だろうな、、、。」


「はゐ?」


 おい、今なんて言った? 酒?


「それならわかりますわ! 先日、王宮に戻った際に、お土産として、ここの食材を料理長に渡して調理してもらった夕食を絶賛されていましたから。それ以降、お父様はフロスト領産の食材を特に好まれておりますわ。恐らく、アイスさんのお作りになられる料理も非常に楽しみにされていると思いますわ。ましてやお酒なんかお作りになると聞いたら、余計にここに来たくなるものでしょう。」


「ということで、フロスト侯爵、ここでタンヌ国王と同盟の会談をするから、そっちの準備もよろしくな!」


 うわあ、面倒くさいことになったな、と多少憂鬱に思いながら領主館へと戻り、自分の部屋に入ると、そこにあったのは沢山の網と数多くの壺、そして、おびただしい量の麻袋だった、、、。


 カムドさんに話を聞くと、狩り採集班の数人が、薬草などの採集に恵みのダンジョンへと行くと、ハニービーの集団と、シルクスパイダーの集団が待ち構えていたらしい。領民達なので、彼らが襲ってこないことはわかっていたけど、流石にビックリしたようだ。彼らが採集班の数人の姿を確認すると、それぞれここにある網と壺を置いて去って行ったらしい。そこにいた採集班のメンバーはすぐに町に戻って回収要員を募ってここへと運んできたらしい。また、これらを見た他の領民達がこぞって、追加の大麦をここにおいていったようだ、、、。


 流石にこの量は、今まで通りのやり方では厳しい、ということで、我らが最終兵器ラヒラスを呼び出して、具体的に指示をして魔導具の生産を命じた。


「作るのは構わないけど、流石にこの量だと一人では無理だから、領民達からも何人か手伝ってもらうけど、それでもいい?」


「構わん。これは領民達からの催促だから、思う存分こき使ってくれ。人選はまかせる。あ、マーブル達はダメだからね。」


「それはわかってるから大丈夫。ん? マーブル君達以外ならいい、ってことは、ウサギ達やコカトリス達も作業員の対象にしていいってこと?」


「マーブル、ジェミニ、ライム以外なら構わないけど、ウサギ族やコカトリス達が必要なことってあるの?」


「必須じゃないけど、いたら凄く助かるね。」


「なるほど。それなら彼らも含めて構わない。恐らく喜んで手伝ってくれると思うから。」


「了解。この魔導具だと3日くらいかかるけどいい?」


「3日でできるんかい! まあ、そこは任せるからよろしく。」


 最終兵器の投入が決まり、これで作業はかなり捗るだろう。とにかく今日は精神的に疲れ果ててしまったなあ、、、。そんな私を見て、マーブル達が飛びついてくる。


 ああ、このモフモフ感、、、。よほど疲れていたのだろうか。この時の私はこのモフモフであっさりと眠りに就いてしまったのだった。


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シロップ「お酒お酒、、、。」

ハニービー達「(女王が嬉しそうだ。よし、我らもミツ集め頑張るぞ!!)」

ヴィエネッタ「お酒、お酒!」

シルクスパイダー達「(お嬢が張り切って何か作っておられる、よし、我らも負けてられんぞ!!)」

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