第117話 さてと、面倒くさい案件がやってきましたね。

前回のあらすじ:領土の一部をねだられたので献上した。






 テシテシ、テシテシ、ポンポン、さあて、朝がやって参りました。今日の朝起こしはいつもの3人ですか。私が起きた後、コカトリスさんがやって来ましたが、「コケーッ!」と悔しそうにしておりました。3人はしてやったりの表情ではなく、「えーっ」という表情でした。ということは単純に寝坊したんですね。ってか、定期的に寝坊してくるコカトリスさんがいますが、ひょっとしたら同じコカトリス? とすると、この子はお寝坊さんなコカトリスなんですね。別に寝坊してもペナルティはないですから安心してくださいね。



 3人+コカトリスをモフらせてもらい、コカトリスからいつもの卵を頂いて朝食の準備です。準備をしている最中にさも当然のようにこっちに来ている戦姫の3人。



「おはようございます、アイスさん。マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃんもおはようですわ。」



 戦姫の3人とマーブル達はさも当然のごとく挨拶を交わしている。いや、別にいいんですけどね。



 まあ、戦姫の3人はいいとしよう。でも、なんでこの人が来ているのかさっぱりわからない、、、。



「おう、アイス侯爵、今日も朝食期待しているぜ。」



「いや、何で陛下がこちらにいらしているんですか? ってか、宮殿には戻られたのですか?」



「当たり前だろ? ちなみに、リトン宰相からは許可取ってあるからな。」



 リトン侯爵ぇ、、、。



「はぁ、まあ、いいでしょう。でも、朝食食べたら政務に戻ってくださいね。」



「おう、そうしたいのは山々なんだが、何か今日、こっちに面倒な案件がくるぞ。俺が一緒の方が後々ラクになるから、それが終わるまではここにいることにするぜ。」



「面倒な案件ですか、、、。そういえば監禁室に入れたままの人達がいましたね。その件ですかね。」



「その通りだぜ。まあ、誰が来るのかは、来てからのお楽しみだ。」



「なるほど。では、その準備をしてもらうとしますかね。しかし、陛下、よくわかりましたね。」



「あ? 面倒な案件が今日来ることか? 確かにそうだな。何でわかったんだろうな?」



「本人が気付かなきゃ、私がわかるはずないでしょ、、、。」



「恐らく、多分、あれだ。お前が提供してくれたあの場所があるだろ? あれのおかげで少し力が戻ったみたいだから、多分それだと思うぜ。海だったらさらに力を取り戻せたはずだが、今はあれで十分じゃねえか。」



「力が戻ったからって、暴れ回ったりしないでくださいよ、、、。」



「その辺は安心してくれ。多分、力が戻ってもお前らには勝てねぇから、、、。」



「いや、それはないでしょ、、、。普通の人間が神にかなうはずないんですから。」



「自覚なしってのは怖いよな、、、。」



「ええ、まったくですわ。それについてはトリトン陛下に同意見ですわ。まあ、それこそがアイスさんなのでしょうけどね。」



 トリトン陛下だけでなく、戦姫の3人はもちろん、マーブル達まで頷いている。何故だ、、、。



 こんな会話をしながらも、朝食の準備は進み、いざ朝食です。今日のメニューは焼いたオーク肉の上に目玉焼きを乗せたもの、いわゆるハムエッグというやつかな? 違っていたらゴメン。でも、うちではそう呼んでいるから異論は認めない。それと、根菜類を具にした味噌汁、主食はもちろん押し麦ご飯である。この押し麦も農業班が気合を入れて品種改良しているので、日々味が向上している。しかも、一週間で収穫できるチート植物らしく、一区画だけで、余裕でフロストの町の住民分は賄えるそうだ。



 逆に小麦は通常の成長であるため、徐々にパンから押し麦ご飯へと領民の主食が移行しているそうだ。パンといっても、我が領で作れるのはナン以下程度のものであり、酵母菌の早期発見が望まれる。といっても、酵母菌について知っている住民はいないし、私もそっちは詳しくないので知らない。精々ドライイーストを使ったパンしか作ったことは無い。



「しっかし、昨日も食べたけどよ、この町のメシはうめぇな。いつも俺が宮殿で食っていたメシよりこの町のメシの方が数段美味ぇってどういうことだよ!?」



「そうですわね。タンヌ王国内でも、ここより美味しい食事を頂ける場所はありませんわね。でも、フロストの町中でも、アイスさんのお作りになる食事より美味しいものはありませんわ。」



 アンジェリカさん達も一緒に頷きながら答える。



「おっ、アンジェリーナ嬢達もそう思うか?」



「ええ、素材もそうですが、味付けが絶妙ですわね。」



「是非とも、味を盗んで帝都に取り入れてぇな、というわけで、アイス侯爵、簡単に作れて且つ美味ぇ料理を土産に持ち帰りたいから、いくつか用意してくれ。できれば、帝都で手に入りそうな素材でな。」



「ムチャクチャな注文ですね、、、。多分それムリですよ。朝食で用意している素材もダンジョン産だったり、コカトリス達からもらったものばかりですからね。それ以前に、料理の基礎がわかっていない人達が大戸思いますので、まずはそこからじゃないですかね?」



「そうなのか? まあ、その辺はリトン宰相と話を詰めていくしかないな。」



「まあ、頑張ってくださいね。」



「おう! いずれは「流石は帝都」と言われるようにしたいぜ!!」



「そうですね、そうなってくれると私も嬉しいですね。」



「お前は料理で負けるのは悔しくないのか?」



「いえ、全く。むしろ美味しいものを食べられる場所が増えてくれた方が嬉しいですからね。正直、今の状態の方が悔しい思いをしているくらいですから。」



 とまあ、こんな会話をしながら朝食は終了。片付けが終わったので、先程出てきた面倒な案件を片付けるべく、フェラー族長に会議場の設定を頼んでおく。今回は私だけでなくトリトン陛下も一緒である。向こうはまさか皇帝自らがここにいるとは思いもしていないだろうけど。



 会議場はもちろん、アマデウス教会にある会議場だ。だって、フロスト城全然完成する気配ないし。いや、日々造成班のメンバーが少しずつ手入れをしているのは知っているけど、実際に何をどう作っているかもわからない。以前聞いてみたけど、どのメンバーも「完成をお楽しみに」としか言わないので、それ以降聞く気もなくなったのだけど。



 少しして、フェラー族長から準備が整ったと報告があった。とはいえ、まだ使者は到着していないので、マーブル達にブラッシングをしながらモフモフタイムを満喫していた。途中でクレオ君とパトラちゃんが乱入してきたので、ついでにモフモフしてやる。ちなみに、トリトン陛下はアンジェリカさん達と訓練所へと行っていた。出番が来たら呼ぶようにとだけ私達に伝えて。



 一通りブラッシングが完了して、出来映えをライムに確認して貰い、合格点をもらい満足していたときに、フェラー族長が望まぬ使者の来訪を伝えてきた。



「ご主人、ハングラー教会の者が来ましたぞ。主となるものは2名ほど、あとは数人の従者を連れてきておりますな。」



「ありがとう。教会の会議室へと案内よろ。それと陛下に来たことを伝えて。」



「すでに陛下にはカムド殿が伝えに行っております。案内は人族の者に頼んであります。」



「流石は族長だね。ありがとう。じゃあ、私達も着替えていくとしますかね。」



 一応使者なので、最近作ってもらった貴族用の服を用意する。アラクネ特別種のヴィエネッタが気合を入れて用意した糸のみを使用しているという非常に贅沢な布で、それを我が領自慢のゴブリン職人達がこれまた気合を入れて作り上げた逸品らしい。先日皇帝陛下に拝謁したやつとは別のものらしい。陛下に拝謁したときに着た奴でいいじゃんと言ったけど、フロスト領がどれだけ格が違うかを見せつけるために必要だと力説された。住民達が舐められないようにして欲しいとまで言われてしまってはこちらも断れなかった。



 内容は何となく理解できているので、面倒だなとは思いながらもアマデウス教会へと足を運ぶ。会議室へと足を運ぶと、担当の領民が私が来たことを告げると、一瞬、もの凄い物音がしたかと思ったら、すぐに治まったようだった。恐らく建物の豪華さにビックリしていたのだろう。我が領自慢の職人達の手で作られたガワに加えてアマさんがわざわざ不壊と自分の加護をつけたほどの建物である。存在するかどうかも怪しいものを崇めて偉そうにしている連中が築いたものとは訳が違うのだ。



 本来なら通常口から入るのだけど、よそ者が先客として来ているから、彼らの後ろを通って入ることになってしまうため、これだと謁見のようにはならないので、面倒だけど、司祭室から入ることになった。司祭室は一応入り口が2つあり、1つは会議室に、もう1つは廊下につながっている。フロスト城が完成する前にこういう場があるかもしれないから、という理由で作られていたのが活きたわけだ。というか、それならさっさとフロスト城を完成させてほしいものだけど、これだけは命令でも聞けないと言われてしまっているので、やりたいようにやらせている。



 司祭室から会議室へと入っていったが、会議室は小さいながらも謁見の部屋としても十分利用できるような見栄えになっていた。部屋に入ると、前後にそれぞれ控えており、前に2人、後ろに4人の計6人おり、前にいる2人が身分の高い者、後ろの4人が従者といった構成だろうか。どこの馬の骨かわからないので、とりあえず全員に鑑定をかけてみたところ、予想通り前2人は司祭と聖女、後ろ4人は従者だった。従者の4人は見たところDクラスの冒険者程度の腕前はあるようだ。結果だけど、まずは司祭だけどこんな感じ。



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『名前』 ギレム・アレクセイ  年齢 47



『性別』 ♂



『職業』 神(?)学者



『スキル』 速 読  5


      交渉術  8


      光魔術  1 



『称号』 ハングラー教会司祭


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 ・・・おいおい、神のところに(?)が付いているけど、これは? 何となく予想はつくけど。交渉術8ってどう考えても口八丁でこちらをやり込める気満々じゃん、、、。ひょっとして、こういった宗教の司祭ってどれもこういった類いの連中だったりするのか? じゃあ、聖女の方はどうかな?



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『名前』 レイラ  年齢 18



『性別』 ♀



『職業』 治療士



『スキル』 光魔術  3



『称号』 ハングラー教聖女(笑)



『状態』 洗脳


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 ありゃ、領民から選ばれた感じかな、名前しか存在しないや。職業は治療士、ね。それはいいとして、何で称号の後ろに(笑)があるんですかね? っておいおい、マジかよ、洗脳状態だって、、、。これ、かなり面倒な案件だな、、、。特にあの(笑)が非常に気になるのですが、アマさんよろしいでしょうか。



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「(?)と(笑)について」・・・久しぶりの出番じゃな、おじいちゃん、張り切っちゃうぞい。さて、こやつらに変なものが付いていたと思うが、これは簡単な話じゃな。そもそもハングラーなんて者は神界には存在しておらんからの。聖女(笑)にしても、こやつらの集団が勝手に任命したものに過ぎんからのう。今後こういったことがあるかも知れんから、お主には教えておくが、我々より選ばれし者には、男には『神子』、女には『神女』という称号が付くのじゃ。例えば、お主のよく知るアンジェリーナ嬢達戦姫の3人じゃが、トリトンがえらく気に入ったようで、最近3人に『神女』という称号を密かに与えておる。本人達に直接話して鑑定してみるといいじゃろう。というわけで、聖女という称号なんぞは実際には、神から与えられておらず、集団内の都合で勝手に付けたものじゃ。仮に神女という称号を付けても、神に認められていない者に対しては(笑)なり、(?)なりがおまけとして付くからの。


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 なるほど、そういう理由でしたか。って、だったら別に(笑)とかにしないで、別のものだったよかったんじゃないのか? 正直吹き出してしまうところだったよ、、、。



 って、陛下、アンジェリカさん達に称号付けちゃったんですね、、、。恐らく加護を付けられるほどの力は戻ってないから代わりに付けたんだろうけど、、、。



 まあ、いいや、今はそれよりも、目の前にいる面倒な人達をどうにかしないとね。とりあえず話を聞こうじゃないの。



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