第95話 さてと、今日も探索探索。

前回のあらすじ:暇なので、自領のダンジョンへ潜ってみた。



 さてと、今日もダンジョン探索。今現在私達は地下1階の下り階段にいる。久しぶりに死の恐怖と戦いながらも、転送魔法で昨日つけておいたポイントに転送してみると、おお! 何と、成功してしまったぞ! というわけで無事地下2階へと進もうとしていた。


 ちなみに今日はアウグストは連れてきていない、というのも、砦でも騎乗訓練みたいのが今日あるみたいで、アウグストはそっちに参加したいらしい。でも、誰も乗せないんだよね、、、。まあ、馬同士で楽しんできてもらいたい。ということで、私、マーブル、ジェミニ、ライムという、いつものメンバーで探索していきます。


 地下2階へと足を踏み入れると、やはり地下1階と同じような構成だった。ちなみに、今日の構成は石で構成されている定番といえば定番の地形である。こんな地形なのに鉱石採掘ポイントがあったりとか、いろいろと解せないダンジョンではあるが、この世界のダンジョンとはこういうものなのだろう。深く考えたら負けな気がする。


 地形も同じなら、通路自体も地下1階と同じような感じである。これ、ひょっとしたら、毎回構成は変わっても、通路とか全く同じでは? とか思ってしまうくらい似た感じではあった。まあ、今日は地下1階探索してないから何とも言えないけど、、、。やはり、この案件は冒険者ギルドへと持っていくのがいいだろう。


 通路を進んでいくと、魔物の気配を探知した、しかも数は多めである。にしても、近くに気配はあるけれども、目視では確認できない、、、ということは、地中とか壁とかそういった場所からということか? にしても、ここって石壁だよね? まあ、いいか。ここはダンジョンだからね。そういうことにしておこう。


 となれば、やることは1つ、マーブル達に指示を出して、定位置についてもらう。ここでいう定位置というのは、私に乗っかる際の定位置である。恐らく魔物は壁や地面から襲いかかってくる可能性が高い。となれば、一面を凍らせていけばいいだけの話なのである。一応出てこられるように、突破できる程度の強度にはしておいてある。魔物が頑張って氷の薄壁を破って出てきたときに、マーブルとジェミニの魔法で仕留める、といった感じで進む予定である。


 そういえば、最近ジェミニも魔法を使うようになってきたが、聞いてみると、ちょこちょこジェミニとライムはマーブルに魔法の指導をしてもらっており、徐々に魔法力が上がっていると興奮気味に話してくれたことを思い出した。


 ちなみに、ジェミニ達、野ウサギ族は魔法に関しては素人同然であり、せいぜい身体強化が使える程度が関の山だそうだ。とはいえ、身体強化の魔法はほとんど使っていないそうだ、って使っていないんかい! だから、土魔法だけでも使えているジェミニがもの凄いんだそうだ、レオがそう言っていた。マーブル曰く(ジェミニやライムの通訳アリ)、ジェミニもライムも日に日に魔法力が強くなっており、ラヒラスの5分の1程度の魔力程に成長しているそうだ、って、ラヒラスと比べてもわかんねえよ!!


 そのラヒラスはというと、マーブルの10分の1程度の魔力を持っているそうだって、そっちもわかんねえ、、、。そういうと、ラヒラスほどの魔力は魔族のトップクラスと比肩するくらいらしい。ってか、魔族ってパスタさんくらいしか知らないんだけど、、、。そういえば、パスタさん、元気にしているかな。(あ、パスタさんを知らないという方は別に知らなくても今後に影響しないので問題ありません。どうしても知りたい方は、前作「とある中年男性の転生冒険記」第70話をご参照ください。)


 そのことはおいといて、氷の薄壁を一面に張ると、魔物達が動き出したのを感じ取った。でも、大半はそれ以上動けずに凍死したものもいるようだ。どうにかして脱出できたものは、ことごとくマーブル達の射的の的になっていった。魔物の気配が消えたところで、氷の壁を消すと、辺り一面に大量の魔石が落ちていた。凍死してしまった魔物達の魔石は小さかったが、脱出して的になってしまった魔物はそれなりの大きさだった。どれも何か使い途があるかもしれない、ということで全て回収、次に進んだ。


 通路を進んだ先には、広い空間が見えた。探知をかけると、やはり多くの魔物の気配を感じたが、目に見える存在と言えば、数体しかいない。ということは、先程通路で倒した魔物とほぼ同じということなのだろう。で、見えている数体については、どう見てもホネホネだったので、スケルトン以外の何物でも無いことは明白である。ということは、ここでは合体攻撃による範囲攻撃がいいかな、と思っていたら、珍しくライムが自分から言ってきた。


「あるじー、ここはボクにまかせてー!」


 普段は戦闘よりも警護要員として頼りにさせてもらったが、日々上昇している魔法力を試したいというのもあったのだろう。マーブルとジェミニも頷いていたので、ここは任せるのもいいだろう。


「おー、ライムやる気だね。よし、ここはライムに任せるよ。」


「わーい! ボク、がんばるよー!!」


 私が許可を取ると、ライムは勇んで部屋の中央まで進んだと思ったら、すぐにライムの頭上から光が放たれた。


「えーい!!」


 ライムが気合をいれた声を出すと、部屋にいた魔物は溶けていくような感じで次々と消えていった。残ったのは大量の魔石だけだった。


「ライム、お見事!!」


「ミャー!」


「ライム、よくやったです!!」


 そういって、マーブルとジェミニはライムの所へと向かって行き、ライムを放り上げると2人でパスし出した。ボールにされているライムも嬉しそうだ。うんうん、眼福である。しかも、好き勝手にパスをしているかと思えば、そうではなく、魔石のところに投げたと思ったら、ボールとなっているライムが魔石を回収していた。何か、ある意味コロコロみたいで笑えた。


 いつも通り、階層をすべて踏破するべく移動していたが、出会った魔物は似たようなものだったので、ほとんどライムが倒して、マーブルとジェミニはライムをボールにして魔石を回収する流れができてしまっていた。


 と、こんな感じで探索は進んでいたが、肝心の鉱石はというと、こちらは採掘ポイントはいくつか見つかったけど、地下1階と同様に銅鉱石や鉄鉱石がメインだった。あとは、たまに宝石類が見つかった感じだけど、鑑定にかけても「ジェム」としか出てこなかった。ちなみにジェムというのは、あくまでこの世界での話だけど、いろいろな宝石類が交じっている状態のものを指すようだ。そのジェムが大きければ、いくつかに分けることによってそれなりの価値のものは手に入るかもしれないけど、ほぼビー玉程度の大きさではあまり意味がないのである。以前いた世界にあったダイヤモンドもそうだけど、粒が大きくないと価値は低い。よく通販番組で合計1カラットとか銘打っている紹介があるが、あれだけ安くなるのは、1カラットの大きさの粒ではないからだ。


 こんな感じの探索だったので、少し飽きてきたので、先を急ぐことにした。どうにか地下2階の下り階段にたどり着いたので、ここでも転送ポイントを設置してもらって地下3階へと降りることにした。


 地下3階はというと、上2階と同様に石壁だった。通路を進んでいくと、何か引っかかるものを感じたので、地図を確認してみると、先程冗談で思っていたことが現実だったことに驚いた。というのも、ダンジョンの構成が地下2階と同じだったのだ。とはいえ、もう少し進んでみないことにはわからないので、ここでも地図を作成しながら進むことにした。


 進んでも地図の内容は変わっておらず、変わっているのは魔物の構成だ。地下2階はアンデッドで構成されていたが、ここでは、は虫類系が多いようだ。とはいっても、流石に地下3階となると、強めの魔物が多いようだ。強めが多い、ということは、その分、体のサイズが大きいということで、それは、的が大きくなるということでもある。しかも、敵が大きいということは、数は少なめということでもあるのだ。ここは個人戦でいくしかないでしょう。


 通路でも出現したが、マーブルとジェミニが交代で狩っている状況だった。ライムを褒めたとはいえ、やはり消化不良だったのね。私もそうだけどね。


 広い場所に移動すると、5~9体の集団で現れたので、1人につき最低1体で、あとは早い者勝ちという感じで討伐されていく。


 最初の方こそ、私も1体しか倒せなかったが、ある程度慣れてくると先んじて倒せるようになっていた。いやあ、近距離の弓矢最高だね。使い方違うかもしれないけど、私はこれでいいのだ。ちなみに、1人につき1体というのは、ライムも含まれている。ライムは酸弾を駆使したり、頭を包み込んで酸欠、あるいは頭部を溶かしたりして仕留めていた。ライムの体は基本透明なので、溶けていく様が見えたりするのは結構きついものがあるね。ある意味一番えげつないかも。


 とはいえ、ここはダンジョンなので、魔物も倒したら全てが素材となるわけでもなく、皮や牙などを残して消えていくのがほとんどだった。たまに魔石や鉱石を落とすものもいたりした。落とした鉱石は、というと、ほとんど、というかほぼ全てが鉄鉱石だったのは少しがっかりだったかな。たまには良いもの落としてくれてもいいのにと思った。その中で、1つだけ「黒鉱石」というものが手に入ったので鑑定してみる。


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『黒鉱石』・・・鉱石としては柔らかい部類じゃの。武器としてはあまり利用価値はなさそうじゃが、柔らかい分壊れにくい性質をもっておるから、槌やメイスなどに使うと効果的じゃな。柔らかい性質を利用できれば他にも使い途はあるかもしれんのう。

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 なるほど、柔らかいのか。金とどちらが柔らかいんだろうか。ん? 柔らかい? もしや、これはかなり使える金属なのでは? しかも、ここにいる魔物が落としたということは、これが採掘できるポイントがあるかもしれない、ということか!


 望んでいた鉱石ではないけど、これなら妥協できるかもしれない。というわけで、この黒鉱石を最優先に探しながら探索を続けた。採掘ポイントでは残念ながらほとんどが鉄鉱石や銅鉱石だったが、魔物を鑑定しつつ倒していくと、アイアンリザードからは鉄鉱石、ブラックリザードからは黒鉱石が手に入ることがわかった。


 とはいえ、正直に言うと、アイアンリザードとブラックリザードの区別がつきません、、、。実際に鑑定して初めて気がつくレベルです、ハイ。どれくらいわからないかというと、ドロップした皮は、いずれもアイアンリザードの皮としか出ないのです。しかも、こいつらは必ず鉱石を落とすわけではなく、忘れた頃に残していく、という物欲センサー満載の魔物なんだよね、、、。


 結局の所どうなったかというと、黒鉱石のドロップは3つ。時間が押していたけど、予想通りというか運良くというか、地下2階と同じ構造だったため、急ぎ目で下り階段に向かう途中で、黒鉱石を採掘できるポイントが見つかったので、4人で採掘してある程度の量を確保することができた。これで目的のものがつくれそうだとウキウキしながら、地下3階の下り階段にたどり着いて転送ポイントを設置してもらって砦へと戻ることにした。


 今回は残念ながら肉類などの食べられるものは手に入らなかったけど、ここのダンジョンは入る度に魔物の種類が変わるので、それに期待するとしましょうかね。


 夕食が終わってマッタリしているときに、ジェミニが聞いてきた、というか、ジェミニが代表して聞いてきた感じかな。


「アイスさん、後半ですが、黒い鉱石を探し回っていましたが、アレはどういった目的です?」


「ああ、あれね。あれは、黒鉱石というものらしく、これで金属を作ると、柔らかめの金属ができるみたいなんだ。」


「柔らかい金属ですか? それって何の役に立つのですか?」


「まあ、普通はそう考えるよね? 硬い金属の方が良い武器が作れたりするしね。だけど、今回はこれで武器を作るわけじゃないんだよね。あ、だからといっても、防具でもないからね。もちろん装飾品というのもなしの方向で。」


「むー。先に封じられたです。では、一体何を作るですか?」


「まあ、作るといっても、私が作るわけじゃないけどね。生憎、私には作れないからね。ゴブリンの職人に作ってもらうつもりなんだけどね。」


「それで、何を作ってもらうつもりです?」


「うん、作ってもらうのはね、櫛だよ。」


「クシですか? これで作ったクシでお肉を刺すと美味しさが上がるですか?」


 今のジェミニの発言に、マーブルとライムが顔を上げる。いや、ライムは上に伸びた感じになっただけだけどね、、、。


「そっちの串は、魔樹で十分、というか、魔樹の方が美味しく焼けるんだよ。で、私が言う櫛というのは、君たちの毛繕いをする道具のことだよ。」


「ワタシ達の毛繕いをする道具、ですか? それって必要です?」


「私が以前いた世界でも、こういう道具はあったんだけど、個人差はあれど、どの子達もやみつきになっていたんだよ。」


「ほえー、それは楽しみなような、少し怖いような、、、。」


「まあ、完成を楽しみに待っててね。といっても、フロスト領に戻ってからだけどね。」


「それで、その道具はそこまでの量が必要なのですか?」


「いや、1つ1つはそれほど必要ではないよ。でもさ、領内にいる他のウサギたちやコカトリス達にも使おうかと思ってね。できればみんなにそれぞれ合ったものを使って欲しいからね。」


「なるほど!! 流石はアイスさんです!!」


「ニャア!!」


「さすが、あるじー!!」


 3人が一斉に飛びかかってきた。この3人の襲撃には流石の私も耐えられなかった。私の現在は、この至福の時間のために生きている、といっても過言ではない。


 こうしてマッタリと夜は更けていった。

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