第64話 さてと、ここのダンジョン攻略です。



 マーシィさん本体(?)をあっさりと倒した後、1振りの大剣が残っていた。何やら尋常で無いオーラが漂っていたので、とりあえず鑑定してみるとする。アマさん大丈夫だよね?



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『グラム』・・・お主、ワシを誰じゃと思っておるのか、、、。まあ、それはいい。この大剣は『グラム』という名の魔剣じゃ。ただし、お主の知っているであろう魔剣グラムとは少し異なっていてのう、一応グラムという名前は付いておるが、名前の由来は重さの「グラム」じゃ。これだけの大きさで何と重さは999gという驚異的な軽さなのじゃ。といっても、重量軽減を持っているお主にはわからんかも知れんがな。一応これもいずこの神が作ったものじゃから、不壊の特性があるぞい。ちなみに切れ味はほとんど無く叩きつける感じの使い方じゃな。もしお主がよければ剣の練習として持っておくのも良いかも知れんのう。


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 ほう、魔剣グラムか、って、そっちのグラムかい! しかもちゃっかり不壊付いてるみたいだし。私は剣よりも弓を使いたいのだが、、、。とこんな感じで心でツッコミを入れてから落ち着いて周りを見ると、みんな驚いていた。こういったときは、やはりアンジェリカさんが先陣を切ってこちらに聞いてくる。



「ア、アイスさん、、、。な、何であんなにアッサリと倒せるのですか、、、?」



「え? 先日戦った霊体のマーシィさんより手応えなかったんですけど、どうしました?」



「え? どう見ても先日アイスさんが戦ったマーシィさんよりも数段強い状態だったはずですが、、、。」



「いや、そんなことありませんでしたよ。大剣という余計なものがあったから、ぶっちゃけ楽勝でしたね。」



「そ、そうですか、、、。とんでもないですね、アイスさんは、、、。」



 アンジェリカさんの発言に、他の女性陣はもとより、マーブル達も頷いていた。何故だ、、、。



「あと、気になりましたのは、その大剣ですわ。オーラがあるので魔剣であることは間違いなさそうですが、一体何という名前なのですか? あ、まさか、ワタクシ達専用となった名前はおかしいけどヤバイ武器?」



「うーん、何と言ったらいいのでしょうかね、確かに魔剣ではありますし、名前はおかしいといえばおかしいのですがね。」



「そう言われると気になりますわ。一体どんな名前ですの?」



「この大剣の名前は『グラム』という名前だそうです。一応不壊も付いております。」



「ええっ? 『グラム』という名の魔剣については人伝ではありますが、聞いたことがありますわ。そんな凄い魔剣がこの大剣なのですか?」



「いいえ、グラムはグラムでも、重さの『グラム』だそうです、、、。ちなみに重量は999gだそうで。」



「はい? 重さのグラムですの? しかもその大きさで999gですの?」



「そうです、今重量軽減解除して持ってますが、これメチャクチャ軽いです。持ってみます?」



 そう言って、グラムをアンジェリカさんに渡す。



「何ですの、この軽さは? 軽いからといっても、この素材はかなり硬そうなのですが、、、。」



 他のメンバーも興味を持ったのか、グラムを持っては、その軽さに驚いていた。マーブル達も興味を持ったようで、グラムを咥えて持ち上げたりして遊んでいた。いつもなら、マーブル→ジェミニ→ライム→オニキスといった順番で渡っていくが、今回は何故かジェミニが最後に咥えてみたようだ。ジェミニが咥えたとき、ジェミニの様子が変わった。



「ア、アイスさん、この剣はアイスさんが持つです!!」



「ん? ジェミニ、いきなりどうしたの?」



「この大剣は、古代の魔神と呼ばれるマイルフィックの骨で出来ているです!」



「古代の魔神? ジェミニ、そんなことまで知っているんだ凄いね。流石は我が子だ。」



 そう言うと、マーブルとライムもその通りだとばかりに頷いたりした。ちなみにライムが肯定するときは体が伸びて上の部分が頷くような仕草をする。これもかなり可愛いのです。



「えへへー、褒めてもらえて嬉しいです、、、って、今はそういうことではないです!」



「何か理由がありそうだね、何で私が持つ必要があるのかな?」



「マイルフィックは魔力に反応して対象者を操ったりできるです。恐らくその剣も使えば使うほどマイルフィックに操られてどうにもならなくなる可能性があるです。」



「なるほど、ということは、私の場合は魔力がないから、いくら使っても問題ないということだね?」



「そういうことです! もし、アイスさんが使いたくなければ、しまったままでも構わないので、他の人には渡らないようにして欲しいです!」



「ジェミニがそこまで言うのであれば、私が持っておくよ。」



「そうしてもらえるとありがたいです!」



「それにしても、ジェミニ、何でそんなこと知っているの?」



「ワタシ達野ウサギ族はこう見えてもかなり長生きです。ムラ長のレオさまは2000歳を超えているですよ。ワタシも500年は軽く生きているです。」



「まじか、、、。まあ、ジェミニが私よりも長く生きているからといっても、我が子の扱いだけどね。」



「当然です! アイスさんは私の親も同然です!!」



「話は置いておくとして、400年前くらいに、マイルフィックとマイルフィックに操られた様々な生き物たちがワタシ達のムラを襲ってきたです。ワタシ達総出で何とか倒すことができましたが、その代わりに野ウサギ族の数が一気に減ったです、、、。もう、あんな戦いはしたくないです、、、。」



「なるほどね。つらい話になったかも知れないけど、ゴメンね、ジェミニ。」



 ジェミニとこんな会話をしていたが、もちろんアンジェリカさん達はウサギ語はわからないので、会話の遣り取りについてはわからないだろう、って、カムイちゃんがいた。カムイちゃんがジェミニの話したことをアンジェリカさん達に伝えており、いろいろな意味でびっくりしていたようだ。



 ってか、おい、ジジイ、今ジェミニが話してくれた内容の方が重要じゃねぇか!! 重さや名前なんかどうでもいいんだよ! って、被害も出ていないし問題ないか。とりあえず、魔剣グラム(g)は私が所有することになった。とはいえ、しばらくは使う予定ないんだろうね。



 アッサリと地下6階を攻略してしまったので、まだ昼食前の時間だった。どうしようか話し合いをしているときに、マーシィさんが再び現れた。



「お、マーシィさん、調子は大丈夫?」



「おお、お前ら、まだ残ってくれていたのか。見ての通り大丈夫だぜ、って言っても既に俺は死んでいるからわからないか、ガハハハッ。」



 先程と同じ調子で話していたので、恐らく大丈夫だろう。



「ところで、これからどうするつもりですか?」



「どうするつもりって、そりゃ、お前、これから自由に動けるんだから、お前らと一緒に戻って霊体と合流するに決まっているだろ。んで、合流したら、引き続き教官として指導してやるつもりだ。霊体だと手紙で伝えるのが精一杯だったからな。これからは直接指導できるからよ、さらに訓練がはかどると思うぜ。」



「それはありがたい申し出だけど、それでいいの?」



「いいに決まっているだろ。元々俺はあまり目立ちたくないんだ。けど、一人ぼっちというのも寂しい、と言うわけで、お前らのところでお世話になるのが丁度いいってもんだ。霊体を通じてはコミュニケーションを少しは取れていたが、実体の方では一人ぼっちの状態だったからな。」



「じゃあ、改めて、ポーラ・マーシィ、あなたを我がフロスト領の教官として迎え入れることにする。」



「おう! 改めてその任、承った!! これからもよろしくな!」



 これで、更に訓練がはかどるな。いや、今までも十分すぎるくらいだったけど、それ以上になるのは非常に楽しみである。領民達が強くなってくれれば、フロスト領の治安や守りもさらに向上する。そうすれば、私は安心してマーブル達とフロスト領を離れて、いろいろな所に行けるってもんだ。



 そんなことを思っていると、いきなり洞窟内から声がした。



「おめでとうございます。貴方達は、ここのダンジョンマスターを攻略したことにより、この先に進む権利を得ました。どうぞ、こちらへとお越しくださいませ。」



 何か微妙に無機質な声が聞こえてきた、とはいえ、聞きづらくはない、そう、例えると「ゆっ○りれ○む」みたいな感じの声だった。



 声は広間から聞こえてきたので、その方向に進んでいくと、壁が開いて何かの入り口みたいになっていた。念のため気配探知をした状態で入り口に入っていくと、部屋になっていて、部屋には七色に輝く大きな水晶が真ん中に鎮座というか浮いている感じで存在していた。



「改めておめでとうございます。貴方達によりダンジョンマスターは倒されましたので、どなたか代表で新たにダンジョンマスターになっていただけますか?」



「いくつか聞いて良いかな?」



「お答えできることであれば、いくつ質問されても構いません。」



「では、遠慮なく、ダンジョンマスターになると、この場所から出られなくなるの?」



「それについてですが、前のダンジョンマスターから話は聞いていると思います。今までこの地は何も存在しませんでしたので、このダンジョンを保つためにはダンジョンマスターに居てもらう必要がありましたが、現在はこのダンジョンを保てるだけの規模の町がございますので、自由に出入りできるようになりました。」



「なるほど。それで、このダンジョンを保つのに、ダンジョンマスターは何をすればいいのかな?」



「別段何もなさらなくても問題ありません。強いて挙げますと、このダンジョンの近くにあります町を守って頂ければ十分です。」



「なるほど。それで、ダンジョンマスターになると、何かできるようになるのかな?」



「お答えできる範囲でお答えしますと、このダンジョンにおける、魔物の配置やそれぞれの階層について変更できます。とはいえ、それほど細かく変更できるわけではありませんので、そこはご了承ください。その他には、このダンジョンにおける入場制限の有無を設定出来るほか、ダンジョンマスターはこのダンジョン内においては、どの階層のどの場所にも転移できます。」



「それは、ダンジョンマスター一人だけ?」



「いえ、ダンジョンマスターと一緒にいるパーティメンバーも一緒に転移できます。」



「なるほど。とりあえず、ダンジョンマスターになっても、普通にここを出られるということでいいんだね?」



「はい、ご自由に出入りできます。」



「なるほど、よくわかったよ。」



「おわかり頂けたということで、新たにダンジョンマスターを設定致します。ちなみに、前ダンジョンマスターは設定出来ないのでご了承ください。」



「しまった、ばれてたか、、、。」



「おい! また、俺をダンジョンマスターにする気だったのか!! 勘弁してくれよ、、、。」



「いや、選択肢としては存在していたけど、、、。仕方ない、このメンバーだと私かな、、、。」



「当然ですわ! マーシィさんを倒したのはアイスさんです。貴方がなさらないのでしたら、どなたがなさるのです?」



 確かに、マーブルやジェミニ達に任せるのは彼らがかわいそうだ。彼らが犠牲になるくらいなら私が犠牲になったほうがいいか、ということで腹をくくります。



「決まったようですね。では、これから設定致しますので、この浮かんでいる物体に手を触れてください。」



「魔力0だけど、大丈夫?」



「はい、それについては問題ありませんので、遠慮なく触れてください。」



 七色に輝いてる水晶に触れると、水晶はさらに輝きを増した。



「では、設定完了しました。新たなダンジョンマスターはアイス・フロスト様でございます。早速ですが、何か変更することはございますか?」



「早速だけど、入場制限をしておきたい。どうやって条件をつけるかな?」



 水晶から説明を受けた。このダンジョンには領民と私が許可を出した一部の冒険者限定にしようと考えていたので、そのやり方を聞いて設定しておいた。階層や魔物については特に変更しなかった。だって、このままがいいしね。ちなみに入場制限は設けておいたが、対象外の人達も入ることは可能である。ただし、強力なSクラスの魔物が門番をしているらしく、仮に倒してもすぐに復活するそうだ。入れないようにすることも可能らしいが、侵入者に対しては慈悲はないし、死体ってダンジョンの栄養になるそうだから、そういう方面で私達の役に立ってもらうとしましょうかね。



 いろいろと話を聞いたりしているうちに気がついたら昼食の時間はもとより、夕食の時間までかかってしまったので、結局探索より説明会といった感じが強いなと思ったのは仕方ないことだと思う。とりあえず、ダンジョンについての報告は明日にしますかね。

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