第54話 さてと、意外なものが見つかりましたね。



 戦姫の3人が来てから数日後、フロスト領もようやく落ち着きを取り戻していた、といっても、有名人が来た事による騒ぎ程度のものだけど。戦姫の3人も領民達とも問題なく馴染んでおり、いつの間にかゴブリン族達とも戦闘訓練を行っていた。それだけならいいのだけど、いつの間にか部隊まで組んで集団戦闘まで行っている始末、それにウルヴとアインも加わっていた、、、。こちらの知らぬ間に部隊編成まで終えている始末、解せぬ、、、。



 その後、カムドさんとフェラー族長にそれぞれ話を聞くと、フロストの町はまともな防御施設がないため、何かと攻められやすいそうだ。ちなみに、私はわかっていてそうしている。だって、その方がゴミ掃除はかどるじゃん。戦力が充実しているけど、別にこちらから攻めて領土を拡大するつもりは毛頭無いので、戦の勘をつかんだり、忘れないようにするには攻めてもらう必要があるのだ。と、こんな感じで2人に話すと、フェラー族長は呆れたようにため息をつくが、カムドさんに関してはアイスさんらしいと笑っていた。まあ、族長もそのうち慣れてくれるでしょう。



 さらには部隊編成も決まっていたので、それらについては改めて話を聞こうと、2人だけでなくエーリッヒさん、エルヴィンさん、ハインツさん、カムイちゃんのゴブリン族部隊長と、ウルヴ、アイン、ラヒラスの直臣に加えて、ウサギ族からはレオを呼んだ。



「フロスト領の部隊編成についてさっき話を聞いたけど、具体的にどんな感じになっているかな?」



 ラヒラスが最初に答えた。



「部隊編成の話なんだけど、これって、マーシィとの戦闘訓練のおかげで俺らもそうだけど、領民達みんながどんどん強くなっているんだよね。それで、復習がてらいろいろと試したんだよね。組み合わせを変えてね。そうしていくうちに、いつの間にか決まってたんだよね。」



「なるほど、偶然の産物だったと。」



「そういうこと。まあ、俺は部隊戦闘には向いていないから、ここにいる他の人達がそういったことは詳しいからそれぞれ聞いてみた方がいいと思う。」



「それじゃあ、一番詳しそうなエーリッヒさん、説明よろ。」



「アイスさん、一応言って置くが、私らなんかより、カムド様の方がこう言った話は優れているぞ。ムラでも編成などを決めたのはカムド様だったからな。私らは作戦を考えたに過ぎない。」



 おいおい、マジかよ。前世リアルチートだった3人を差し置いてカムドさんの方が凄いとは。カムドさん、外見はゴブリンエンペラーらしいけど、一体何者だ? まあ、今は頼もしい一領民だし心強いことには変わりないけどね。



「なるほど、では、カムドさん、説明よろ。」



「わかりました。こちらで決めたのは、総指揮官と各部隊長程度ですね。今は人が少ないのでこれでも十分だと思います。」



「そうですね。我がフロスト領に来る人達は徐々に増えてきてはいますが、実際領民になっている人数は200人以下ですからねぇ。」



「そういうことなので、とりあえず今のうちから各隊長を養成しておこうという考えもあります。」



「なるほどね、流石です。具体的にはどんな感じなのですか?」



「まずは総指揮官ですが、これはウルヴ殿が務めます。」



「はい? ウルヴですか? ウルヴは騎馬突撃の先駆け要員としての利用法がいいのでは?」



「ええ、私も最初はそう思いましたが、何かわかりませんが、彼が部隊長で戦闘訓練を行うと、勝率が10割まで跳ね上がるのです。」



「なるほど、そういった要因は大事ですね。それならこちらの異存はないです。」



 当のウルヴは多少困惑気味だ。



「えっと、私は指揮は得意ではないのですが、本当に私なんかで?」



「大丈夫。そこまで構える必要は無いからね。実際、作戦などはこちらで決めたりするから。今までもそうだったでしょ? 今まで通りにしていれば大丈夫だから。それにね、ゴブリン族の3人が認めているんだから全く問題は無いよ。あ、それと拒否権はないからね。」



「はあ、まあ、そこまで仰るなら総指揮官の任はお受けします。」



「よろしい。とはいえ、別に今日明日戦があるわけじゃないからね。では、カムドさん、説明の続きよろ。」



「それでは、続いて各部隊長の説明をしますと、作戦についてはうちのエーリッヒがメインで、状況に応じてエルヴィンやハインツが補佐します。次に歩兵ですが、これはアイン殿が部隊長を務めます。そして、騎兵をハインツに、弓兵をエルヴィンに、斥候部隊を我が娘カムイが率います。」



「うん、適任ですね。こちらも問題ないですね。とはいえ、別に固定ではないんでしょう?」



「ええ、その通りです。状況に応じて部隊長は変えますが、基本はこんな感じとなります。」



「了解です。では、こんな感じで進めておいて下さい。」



「それと言い忘れましたが、我が領のペットであるウサギ達もすっかり強くなっておりまして、ここも部隊を編成しようと思っております。」



「なるほど。確かにここでは癒やしの存在ではあるけど、野ウサギ族なんか世間ではSクラスの魔物だからね。こんなに可愛いのに。」



「・・・それはアイスさんだからですよ。普通は我々でもヴォーパルバニーなんて怖くて近寄れませんからね。」



「じゃあ、ウサギ部隊は遊撃隊として編成しますか。もちろん部隊長はレオね。頼むよ。」



「キュー(主よ、任されたぞ!)!」



 と、こんな感じで決まった。ちなみに、これらの編成については一切もめなかったらしい。



 本格的に部隊として正式に編成されたこともあって、訓練はさらに盛んになったらしい。無理して怪我とかしないようにして欲しいものだ。私はといえば、いつも通り領内視察という名のマーブル達と一緒にお出かけだ。細かいところはフェラー族長とカムドさんがほとんどやってくれているので、逆にやることがほとんどないのだ。フェラー族長曰く、カムドさんが来てから仕事がもの凄く楽になった、とのことだが、当のカムドさんはフェラー族長がいるおかげで楽できているとのこと。自分たちで領土の発展を行えることに喜びを感じているらしい。うんうん、いいことです。



 その後さらに数日が経過して、本格的に斥候部隊が作られたカムイちゃん達が大いに張り切って諜報活動に勤しんでいた。諜報部隊には一部ウサギ族も加わっているらしく、そのおかげでかなりはかどっているそうだ。ちなみに、ゴブリン族はウサギ族と会話できるらしい。私は野ウサギ族としか会話できないのに、、、。



 領主館で報告を受けている中で、カムイちゃんがこちらに来て報告してきた。



「アイスさん、領内で洞窟が見つかったよ。」



「洞窟? その洞窟ってわざわざ報告してくるくらいの規模?」



「うん。大きさはわからないけど、モンスターの存在も確認できたよ。ただ、モンスター達はその洞窟から出ようとはしないんだよね。」



「なるほど。そういった話は冒険者ギルドに持ち込むとしましょうかね。」



 カムイちゃんとマーブル達を連れて冒険者ギルドへと足を運ぶ。



「フロスト様、ようこそいらっしゃいました。すぐにギルド長をお呼びします。」



 受付の子がギルド長を呼びに行った。流石にまだこ規模の町ではほとんど冒険者がいない状態だが、何故か戦姫の3人がいたせいか、冒険者の数もそこそこいた。とはいえ、食堂でくつろいでいる様子。私達が来たのに気付くと3人がこちらにやってきた。



「アイ、いえ、フロスト伯爵、冒険者ギルドに何か話でも?」



「そうなんですよね。ここにいるカムイちゃんがあるものを見つけたので、冒険者ギルドに相談してみようと思いましてね。」



「カムイちゃん、お手柄ですわ。ところで、その話、ワタクシ達もご一緒してよろしいでしょうか?」



「ああ、それについては構いませんよ。恐らく3人にもこの話は届くでしょうしね。」



「ありがとうございます。」



 戦姫の3人と話をしていると、先程対応してくれたギルド員の子が戻ってきた。



「フロスト伯爵、ギルド長がお待ちです。お手数ですが、ギルド長室へとご足労願えますか?」



「ありがとう、早速行くよ。」



 私達はカムイちゃん、マーブル達に加えて、戦姫の3人も一緒にギルド長室へと向かうと、ギルド長は2階に上がった時点で出迎えてくれた。



「フロスト様、ようこそお越しくださいました。お呼びくださればいつでも伺いますものを。」



「いや、どちらかというと、緊急案件かな。それでギルド長の話を聞いてみようと思ってね。」



「なるほど、それでしたら、その話は会議室で致しましょう。」



 ギルド長自らの案内で会議室へと入る。指定された席に座ると、ギルド員の子がお茶を用意してくれた。



「さて、話を伺いましょう。一体どんな話ですか?」



 具体的に説明しておきたかったので、この話はカムイちゃんにしてもらうことにした。カムイちゃんがギルド長に説明をした。



「なるほど、そういうことでしたか。確かにそれは冒険者ギルド案件ですね。カムイさんと言いましたか? ご報告ありがとうございます。ところで、話の内容からすると、それはダンジョンで間違いないと思いますが、アンジェリカさんはどう思いますか?」



「ワタクシもそれはダンジョンだと思いますわ。魔物が存在しているにも関わらず、穴から出ようとはしていないんですよね? それでしたらほぼダンジョンで間違いないと思いますわ。ところでカムイさん、魔物の種類はご存じですの?」



「軽く入った程度だから、深くはわからないけど、少なくとも暗いところに住んでいる種類の魔物じゃなかったと思う。」



「そうしますと、やはりダンジョンで間違いないかな。」



「ワタクシもそう思いますわ。」



 ほう、ダンジョンか。暇つ、いや、調査に赴く必要がありそうだな。領民達は自分の仕事で忙しそうだし、何より領民達に危険な目は遭わせられないからな。



「なるほど、ギルド長やアンジェリカさんの2人がダンジョンと判断したのならほぼ間違いないな。よし、早速調査に赴きますかね。」



「フロスト伯爵達だけで調査ですの? それはどうかと思いますわ。」



「私も同意見です。何もわかっていない危険な場所にご領主自ら行こうなんて正気の沙汰ではありません!」



「ワタクシ達を連れて行かないなんて、水くさいですわ!!」



「そっちかい、、、。」



「ギルド長がそう思うのも致し方ないけど、危険かどうかわからないからこそ、私が行かないと。」



「確かに、そうかも知れませんが、事情を知った上でご領主に行かせたとあっては、冒険者ギルドの名が、、、。」



「なるほど、じゃあ、領主命令ってことで無理矢理納得させられたということで。」



「わかりました。不本意ではありますが、フロスト領で発見されたダンジョンの調査をお願いします。条件として、戦姫の3人と一緒にダンジョンに行ってもらいます。よろしいですね?」



「うん、それでいいよ。少し内容を詰めるから、決まってからまた報告するから。」



「はい、報告お待ちしております。」



 ギルド長に話してから冒険者ギルドを出た。うん、ダンジョンか久しぶりだな。これは楽しみになってきたぞ。そんなことを考えながらマーブル達を見ると、案の定、マーブル達は嬉しそうにしていた。



 領主館に戻って、フェラー族長とカムドさんに、カムイちゃんがダンジョンを見つけたことを話し、私達と戦姫の3人でそのダンジョンへ行くことを伝えた。カムドさんは私達がダンジョンに行くこと自体は反対しなかったが、カムイちゃんも一緒に連れて行くようにということだった。カムイちゃんはそれに大賛成らしく、一緒に行ってスカウト技能を鍛えたいそうだ。戦姫の3人も賛成したのでメンバーはこれで決定した。後は、日数がかかるなら移動手段はどうするのかなど、細かい内容を詰めていく。一応予定としては、本格的に潜る前に、マーブルの転送魔法が使えるかどうかを試して、日帰りできるかどうかの確認をしてからということになった。



 カムイちゃんの案内で、その穴へと向かう。場所はそれほど遠くではなく、農業班が畑を拡張しているときに、邪魔な岩などを取り除く作業をしているときに偶然見つけたらしい。たまたまそこにいたカムイちゃんが確認したようだ。入り口はそれほど大きなものではなく、1人ずつ入っていく感じの大きさだったので、私を先頭に突入してみた。構造などについては後述するが、とりあえずマーブルの転送魔法は使えそうなので、切りのいいところで戻ることは可能のようだ。



 今回はこれだけにして試しに転送魔法で戻り、今回はギルド長を呼んでこちらに来てもらって報告を済ませた。というのも、本来は領主自らが冒険者ギルドへと赴かないそうで、ギルド側がこちらに来るといって譲らなかったからだ。まあ、それはおいといて、これより2日後にダンジョンに突入することになった。というのも、戦姫の3人の準備ができておらず、1日欲しいそうだ。



 2日後ということだが、私達は特にこれといった準備は必要ではないので、いつも通り見回りながらまったりと過ごしていた。

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