第45話 フサフサです

橋を上手く切り抜けた?一行は賢者の渓谷の奥深くへと進む。


「あれから特になんにもないね?こんなもんなの?」


「うーん…私たちは鬼ですからウィズダムモンキーにそもそも攻撃されることが無いんです。」


「ん?どういう事?」


「鬼は賢者の渓谷を抜けた空白の大地の住民です。ウィズダムモンキーにとって試す必要も無い身内の様なものという認識なのかも知れません。」


「あ。そういう事ね?じゃあ僕とアイリスが対象って事か……じゃあさ?僕とアイリスがびゅーんっと飛んでいくってダメかな?」


ライネルが無謀な事を口にする。


「だめーーー!私が死んじゃうでしょ!ライネルって乱暴よね!龍鬼様ぁ~。このバカに何か言ってやってくださいよぉ~」


「アイリス殿。ライネル様の意見も一理ありますよ?場所を大まかに教えますからそれで行きますか?」


「……う、嘘でしょ……龍鬼様がライネルの見方を……」


鬼三人娘は可哀想な者を見る目でアイリスを見つめていた。


「じゃ。行こっか☆」


ライネルはアイリスの方をポンっと叩く。ライネルはまるでリストラを告げる課長の様ににこやかであった。


「いやぁぁぁぁぁぁあああああああああ!無理無理無理無理!ね?無理だから歩いて行きましょ?お願いだから……お、お願いします!!!」


「あははははは。冗談だよ。まぁ僕一人なら余裕で行けちゃうと思うけどね。さ。先を急ごっか。」


岩肌がむき出しの賢者の渓谷をひたすら歩く。もうすぐ中腹にさしかかろうという所。この場所には雨はまだ降ってきていない。すると突然あからさまに怪しい老婆が蹲っている。


「……あぁ……そこの方……後生です……お助け………」


スタスタスタスタスタスタ………


「……へっ!?無視!?」


アイリスは驚愕の声をあげるも更に無視するライネル。


「…えぇ?……助け……て……くれないのですか?」


「うん。だって君人間じゃないでしょ?だから助ける義理は無い!」


老婆は目が飛び出そうなほど驚愕した顔でライネルを見つめる。


「……ちぃ……バレたか……バレちゃあしょうがねぇ!フン!我が名はウィズダムモンキー様!気高き賢者と呼ばれる者だ!」


「は?何?毛がないケンちゃん?へー。あだ名はケンちゃんか。よろしくね。ケンちゃん!」


「ち、ち、違うわーーー!毛はフサフサじゃー!ボケー!!」


「あ。確かに(笑)でも体毛がフサフサだからって頭髪は別物でしょ?ほら!そこ禿げて……」


「え!?うそ!まじか!?最近人が来なくて寂しかったからかのぅ……?」


「バカだなぁ。嘘だよ。こいつ本当に賢者か?あはははは!」


「ギギギギギーーーー!くそぉ~!俺様を侮辱しやがって!!!もう怒ったぞ!殺れ。我が忠実なる下僕達よ!」


ウィズダムモンキーが声を上げると渓谷の頂上からワラワラと背中にシルバーの体毛を生やしたゴリラ達が現れた。


「ただのゴリラじゃん。」


「殺れ!殺るのだ!」


シーーーン


「……は?殺れ!殺れよ!」


シーーーーーーーーーーーン


「なんだか可哀想になってきたな。さ。先を急ごっか。」


「待ってよーーー!待ってくれよォ~!寂しいんだよォ~!」


そう言いながらウィズダムモンキーがライネル達の後ろを追いかけてきたのだった。

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