第24話 アイリス成人の日

北の塔へ転移で飛んだ4人はすぐさま外に脱出し旋風に乗って……いやライネルが旋風で上空に吹き飛ばして着地と同時に旋風でエアクッションを作るという強硬策で無事城の外へ逃げ出すことに成功した。メシウスのオッパイの揺れ方が凄かったのは言うまでもない。


旋風に慣れていないバルムス王とメシウスは半泣きだったがそんな事は無視して、そのまま森を駆け抜ける。背後から何者かの視線や気配があったものの実際に攻撃してくる者はいなかった。それにしても…スプライトは強い。轟雷はライネルが使える雷撃の中でも2番目の強さを誇る。それを物理攻撃1発で霧散させてしまうとは正真正銘の化け物である。ライネルは咄嗟にこの状況では勝てないと判断し逃げ出したのだ。


「あっぶなかったぁ~!あのスプライトって奴バケモンじゃん!強すぎだよ?」


「ライネルも大概人外よ?」


「え?ライネル様って《人》だったんですか?初耳です。」


「ぬははは!確かにな。一国の王を躊躇いもせず吹き飛ばすんじゃからの?ライネル殿には恐れ入ったわ!ぬははは」


かなり元気になったこのおっさん。狼の獣人で娘のヒール1発でかなり回復した。頑丈過ぎる。しかも今も尚、出血の呪いは完全に解けてない様子でダラダラと血液が流れている。はっはっは。完全にスプラッターですやん。


「バルムス王は大丈夫なの?血がいっぱい出でるけど…」


「ライネル様!バルムス様はこれでも一国の王ですよ!そのような無礼な話し方許されませんよ!」


「ぬははは!大丈夫!大丈夫!ワシ頑丈じゃもん!ぬはははは!メシウスよ。固いことを言うでない!ライネル殿は命の恩人ぞ?」


血がダラダラ出てるのに大丈夫って……この人こそ人外だ。まぁ獣人だから人外なんだけどさ?


ん?えっと…?誰?後ろにいる…裸の女性は誰!?見事な乳とファッサファッサした茶色い犬耳……犬耳!?


「え……アイリス?」


「うん。アイリスだよ?」


「そ、その格好は?」


「ん?…………は?きゃーーーーーーーーーー!」


大きく実った胸と下半身を抑えながら地面に座り込む。あ。知らなかったのね。ごめんごめん。良いものを拝ませてもらいやした!


「ぬははは!我が子も遂に成人か…感慨深いのぉ。」


「アイリスもとうとう大人の体に……でも……まだ私の方が大きいですね。ふっふっふっ」


「そんな事言ってないで助けてくださいよぉ~」


腰に手を当てドヤ顔で胸を突き出すメシウスとうっすら目尻に涙を浮かべた王様。僕はそんな偉そうにしているメシウスの乳に指を突き刺す。


「い、痛っ!?な…な…何をするんですか!?」


「え?なんかムカついたから!」


「どういう事ですか!」


「だってドヤ顔で乳自慢したじゃん!何かムカついたの!」


「そんな理由で乙女のオッパイ突き刺すんじゃなーーーい!」


ライネルはスプライトと対峙した以上の殺気をメシウスから感じ、次の瞬間には意識が吹っ飛んでいた。僕が気づいた時には着ていた外套を奪われホクホク顔でアイリスが着ていた。裸コートである。露出魔じゃん。てか!誰が貸すって言ったよ!この泥棒猫め!あ。泥棒犬か。


ちなみに獣人族と言うのはある日突然成人の日を迎え、その日は千差万別であるとの事。突然の成長を起こし服が破れたりするため、成人の日を予言者に予言してもらい数日間ゆったりとした大人の服を来て生活するらしいのだ。しかしアイリスはメイクード王国から逃げ出して来た身。服も着の身着のままで、僕とメイクード王国奪還作戦を敢行した為に失念していたのだ。


「ご、ごめんなさい…ライネル。私がひと言言っておけば良かったのだけど…完全に忘れてたの…」


「姫様は悪くありませんよ!このドスケベがいけないのです!」


メシウスはまだ御立腹の様子。もー1回つんつんしてやろうかな?


「ぬははは!まぁ良いでは無いか!我も無事助かったことだ。ライネル殿には感謝を申す。しかし…そうか…街の様子がおかしかったのか……いやはやどういうことか……」


「お父様も知らなかったのですね。」


「うむ。我はあの日からあのまま拷問を受け続けておったのじゃ。故に何も知らないに等しいのぉ。しかしギルデバートが生きておるとはの……我の目の前で首を切られたはずじゃのに……」


「へっ……!?ギルデバート様が……首を?ではあれは死人?う、嘘だ!嘘だぁぁぁ!ギルデバート様が死ぬわけないんだ!うわぁあああああああ!」


大声を上げガクガクと震えながら膝を折り地面についた。


「メシウス!しっかりせい!まずは自分の命があった事を喜ぶのだ。メシウスはここで止まっていて良いのか?我らにはまだせねばならないことがあるであろう?」


バルムス国王はメシウスの肩を摩ると少し落ち着いたのか「ううっ……」とくぐもった声を漏らしつつも涙を静かに流していた。


「まずすべき事は隣国への協力要請ですね。あと…ついでにその呪い治してもらいませんか?ちょっとグロいので…」


「ぬ?そうか?別にこのままでもいいんじゃがな?ぬはははは!」


「しかし…まぁそうじゃな。まずは隣国への協力要請か。それ無くして我が城は取り返せぬじゃろうな。」


僕達は王様をパーティに迎え南の隣国ジュピタンの国境を目指す事になったのだった。

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