第12話 残すは一人
「夙川さん、別にどうということはありません。 今まであなたたちがやったことをネットでブチまけるだけですよ」
俺がそういうと、夙川の動きが止まった。
1分くらい経過しただろうか、夙川は完全に焦っているようだった。
「さ、佐藤さん、そんな・・私には家族があるのです。 そんなことされたら・・それに、今後は決してこのようなことは致しません。 警察からの事情聴取も受けてすべて話しました」
夙川がそこまで言うと、俺が言葉を被せる。
「夙川さん、証拠がないということで無事帰って来られたわけですよね? 全員ゴムを使用していたとか・・」
夙川は目を大きくして驚いていた。
夙川は何か言おうとして口を開いたようだが、何も言わずに口を閉じる。
「夙川さん、少し外へ出ませんか?」
俺がそう言うと、少し考えていたようだが、俺に庁舎の前で待っていてくださいと言う。
俺は了承し、ゆっくりと歩いて庁舎の外へ移動した。
俺の考えはこうだ。
夙川に残りの2人を呼び出してもらう。
そして一気に始末するつもりだ。
面倒がなくていい。
そう思っていた。
夙川が出てきた。
「お待たせしました、佐藤さん」
夙川は早退届を出して来たという。
後10分くらいの時間あったようだが、きっちりしてるな。
そう思いつつ、俺は夙川に言ってみた。
「夙川さん、田中さんと岡本さんも呼び出してもらえますか?」
夙川は目を大きくして俺を見る。
少しして答えが返ってきた。
「わかりました」
俺たちは歩きながら、川の土手の方へ向かって行く。
歩いて20分もすれば到着できるだろう。
歩きながら夙川は電話したり、メールしたりしていた。
少しずつ落ち着いて来たのか、余計な無駄話もしてくれた。
俺は黙って聞いているだけだ。
「佐藤さん、私も昔の仲間連中とのつながりで、なかなか縁が切れないのですよ・・でも、女の子を傷つけたことは事実ですね・・」
・・・・
・・
こいつ、軽いな。
言葉が軽い。
俺は聞きながらそう思っていた。
俺たちは川の土手の上をゆっくりと歩いている。
すると向こうから男が手を振りながら近づいて来る。
岡本は医者だ。
何でも夜勤のようで出てこれないという。
そして、村井とは連絡が取れないみたいだった。
村井は生きていないからな。
それにしても、この夙川というやつ。
俺は田中と岡本を呼び出せといったはずだ。
それをわざわざ村井まで呼ぼうとしたのは、どうせ全員で俺をどうにかしようと思ったのかもしれない。
夙川も田中の姿が見えてから、少し余裕が出てきた感じがする。
田中が夙川のところへ来て、俺の方を見た。
「佐藤さん、こちらが田中です」
「田中です」
田中はそういうと俺に軽く頭を下げた。
「田中さんですか・・あの女子高生を強姦した一員ですね」
俺はど直球で言った。
夙川と田中は顔を見わせると、少し動揺している感じがあった。
「夙川さん、田中さん、あの土手の斜面で座りながら少しお話を聞かせてもらえますか?」
俺はそういって、少し先の土手斜面を指さした。
田中と夙川は小声で何やら話していた。
はっきりと聞こえないが、村井はどうしたとか、岡本は・・とかの言葉が聞こえてくる。
やはりあの悪玉を使ってどうにか自分たちの都合の良いようにしようと考えているのか? と俺は思いつつゆっくり歩いていく。
目的の場所へ到着すると、俺が言葉を出す。
「夙川さん、田中さん。 村井には連絡取れませんよ。 もうこの世界にいませんから」
俺はそういうと、そのまま集中をする。
「「え?」」
二人はそう言葉を発したようだ。
俺は即座に集中した。
俺は二人の心臓付近に掌打を繰り出す。
ドン! ドン!
二人共の心臓がこれで破裂したはずだ。
そのまま二人を土手に座らせる。
俺は集中力を解いていく。
「「ゴ・・ブボ・・」」
二人の口から血が溢れてくる。
そのまま二人は土手で座ったままの状態で動かない。
俺はゆっくりと立ち上がり、そのまま二人を後にした。
俺は思っていた。
あの女の子に関連した犯人が同じ死因で亡くなる。
当然疑うだろう。
だが、それこそ証拠も何もない。
デス・ソードによるリスクは今のところ大きくしたくはない。
それだけの理由だったが、当分はこれでしのげるだろう。
もしダメならその時はどこかへ行くさ。
そんなことを考えながら、岡本の病院を目指していた。
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