クラスアップ(上級職編)③

「ヒロのクラスが決まったから次はヒナタのクラスについて話し合うか」

「よろしくお願いします!」


 俺は先程と同様に僧侶からクラスアップ可能な上級職の特徴をメモに書き出す。


 上級神官 STR○ VIT◎ AGI○ RES◎

 得意武器 杖、棍棒、槍

 その他  中級、上級魔法一部解放 回復特化


 巫女   STR○ VIT△ AGI○ RES☆

 得意武器 杖、弓、薙刀

 その他  中級魔法一部解放 支援特化


 司祭   STR▲ VIT◎ AGI○ RES☆

 得意武器 杖、短剣

 その他  中級魔法一部解放 バランス型


 モンク  STR◎ VIT◎ AGI○ RES○

 得意武器 ナックルガード、棍棒

 その他  中級魔法一部解放 肉体強化習得 裸強化


「わぁ! ヒナもモンクになれるのね!」

「ならないですけどね」


 モンクのメモのみは先程書いたメモを流用した。


「何か質問はあるか?」


 俺は当事者であるヒナタに問いかける。


「えっと……バランス型と言うのは?」

「司祭か。ここは何て書くか悩んだのだが……司祭はこの4つのクラスの中では一番多くの種類の魔法が習得出来る」

「一番多くの種類の魔法ですか?」

「そうだ。回復魔法、支援魔法……そして、攻撃魔法を習得することが出来る」

「でも、万能職と言うか器用貧乏よりも特化型の方がいいんですよね?」

「一般的にはそう言われてるな。上級神官と巫女と比べると一番の違いは魔法で攻撃にも積極的に参加出来ることかな」

「なるほど……でも、攻撃の手は足りてますよね?」

「俺とメイがアタッカーになるから、役割的には足りているな」


 俺の言葉を受けてヒナタは司祭とモンクの特徴が書かれていたメモを裏返す。


「さっきのヒロの話じゃないけど、最高峰のヒーラーを目指すなら上級神官がいいんじゃないの?」


 メイが残った2つのクラスを見比べ、上級神官をヒナタに推す。


「そうですね。私に求めれている役割はヒーラーなので上級神官も良いと思うのですが……」


 ヒナタは上級神官の特徴が書かれたメモを手に取り、思い悩む。


「その言い方だと……ヒナタは巫女を選択したいのか?」

「あ、いえ……そういう訳ではないのですが……」

「ヒナタ、さっきも言ったがクラスと言うのは……その後の人生を大きく左右させる重大な要素だ。自分の考えがあるならはっきりと口に出した方がいいぞ」


 俺は自分の意見を押し殺す癖があるヒナタの言葉を引き出すことを試みる。


「は、はい! えっと……リクさんとメイは回復をあまり必要としていないように感じます」

「んー……ヒーラーがいなかったら、それはそれで怖いけどな」

「うんうん! ヒナがいるから安心して戦えてるよ!」

「それはわかっています。でも、二人を回復する機会が少ないのも事実です」


 メイは鎖鎌と投擲武器で間合いを取って戦闘するし、回避能力も高い。俺に関しては、紙装甲なのでプレイスタイルは回避主体にせざる得ない。


「むむ……私はヒナタ殿の回復に救われていますぞ!」


 ヒナタの恩恵を一番受けているヒロアキは声を大にして主張する。


「はい。ヒロさんのダメージを癒やすのは私の大切な役割の一つです。そこで質問なのですが……巫女でもヒーラーとしての役割を全うすることは出来ますか?」

「このパーティーのみに限って言えば、上級神官よりも巫女の方がヒーラーとして上手く立ち回れる可能性はあるな」


 上級神官の最大の目玉は範囲回復だ。巫女や司祭でも範囲回復を習得するが、上級神官は範囲回復の回復量が段違いに高かった。


「どういうことでしょうか?」

「巫女は《結界》って言う特殊な魔法を習得出来るんだよ」

「《結界》ですか?」

「《結界》にはいくつか種類があって……例えば、《結界・快》だとその結界内にいる仲間の傷を絶えず回復させる効果がある。使いこなすには、先読みとか連携などの要素が必要となるが……《結界・快》を上手く使えばヒーラーとして十分に活躍出来る」


 上級神官が習得する《リジェネ》も継続的に対象者の体力を回復される効果があるが、回復量は《結界・快》の方が高かった。但し、回復効果があるのは結界内のみなので、どこに結界を展開させるべきか……など、プレイヤースキルを試されるスキルでもあった。


「なるほどです……。えっと、私はこのパーティーの中でもっと皆さんのお役に立てるようになるにはどうすればいいのかを考えていました。一番大切な役割は皆さんのダメージを癒やす回復ですが……支援魔法を覚えたらもっとお役立ち出来るかな、と思いまして……」


 ヒナタは一生懸命に自分の考えを言葉にして俺たちに伝えてくれる。


「なるほど……素晴しい考えだと思うぞ」

「ほ、本当ですか!」

「ヒナタが自分で悩み、導き出した答えなら間違いはないさ」

「ありがとうございます! 決めました! 私は巫女になります! 巫女になって、ヒロさんを癒して、リクさんとメイの支援も頑張ります!」


 ヒナタは自信に満ち溢れた表情で自分の決めたクラスを宣言する。


「トリックスターに忍者。守護騎士に巫女。鍛冶職人もいるからバランスとしては悪くないな」


 トリックスターと忍者は物理攻撃のみならず魔法を扱うことも出来る。守護騎士がいるから安定感は増し、巫女の支援はこのパーティーの弱点である火力不足を補ってくれるだろう。


 結果的に様々な敵に対応出来るパーティー構成となった。


「今日はゆっくり休んで、明日は朝一で神殿へ行って各自クラスアップだな」

「うん! 楽しみだね!」

「はい!」

「承知しました!」

「了解にゃ!」


 話し合いを終えた俺たちは解散し、各自の部屋で休息するのであった。

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