第15話 精霊を助けたら愛しくて愛らしい彼女たちをお嫁さんにすると誓って(後編)
前書き
ポイントいきますように!
新キャラ登場しまくりやぁ・・・。
誤字脱字を修正しました。
第15話 精霊を助けたら愛しくて愛らしい彼女たちをお嫁さんにすると誓って(後編)
「全方位に張らなくても良いんだよ・・・」
声を聞く限り女性の様だ。フードの人物が手を掲げて目の前の塊を受け止める。恐らく前面にだけ聖域を張ったのだろう。しかし轟音の末に破れた様で再び塊が襲い掛かってくる。
「間に合った!」
再び塊が止まるがじりじり後退していく。防ぎきれないか・・・!?
「ミドリちゃん頑張って!」
「あたし達が支えるから!」
ソリアとサオリがミドリの背中を支える。僕も一緒になってミドリを支える。
「ボクがみんなを・・・守るんだから~~~~!!!!!」
轟音でほとんどミドリの声がかき消される中、音がゆっくりと静まっていく。
「また来る・・・!?」
すでに2発目が頭上で僕達を見降ろしている。
「そこのボクっこ!私の言う通りにして!」
よろよろと起き上がりミドリに何かを告げる。全員で協力してこの状況を打破しないと・・・!
投擲を続けるが時間を稼げる様子は無い。みるみる焔が巨きくなり体を仰け反らせて放とうとしている。
「お兄ちゃん、キノコさんの足元が少し破けてるみたい!投げれば届くよ!」
僕は思い切り振りかぶって、しかしコントロールにも気を使い足元に投擲した。よろめいている・・・!
「いっけーーーー!!!!」
ミドリが魔法を放つようだ。情けないが僕だけでは何もできない。少しでも役立つように立ち回らないと!
敵は塊を放つが見えない何かが反射してすごい勢いで下に向かって轟音を立てて落ちていく。・・・外から塊ごと聖域で閉じ込めたのか!!
塊の外周には風が轟き雷鳴が迸る。恐らく無傷では済まないだろう。
「ぐっ・・・あああああああぁぁぁ!!」
両手を上に向け必死に塊を受けているが、体は時々ビクリと震えていて雷鳴が効いている様だ。
追い打ちをかけるようだが、こちらも命がかかっている・・・。僕は足元に投擲を続ける。
「今のうちに・・・!」
ソリアがフードの女性を横に寝かせる。サオリが水筒に布を濡らして火傷部分に当てている。
「あの黒いのは・・・まさか・・・」
ミドリは聖域の維持に努めつつ、白いキノコの亡骸から出ている白く輝く粒子を見ている。黒い霧に触れると触れた部分が相殺して消えた・・・!
「あの魔法だ・・・真樹、時間を稼げる?」
「任せて、まだまだ包丁はあるからさ!」
敵に聖域を張る余裕は無いらしい。大きくは効かないだろうが攻撃を続ける。
ミドリを見ると陽気に歌い始めている。しかし瞳を見ると真剣そのもので、突っ込む場合でも無い。僕は自分の役割を継続する。
「がっ・・・あああああああ!!!!」
雷鳴は止み天井を塊が焦がしドロドロと樹々を溶かしていく。やばい足止めがもうできない!
「風よ・・・!」
僕の足に渦が巻く。今気付いたが付与魔法のおかげで脚力も頼もしい状態だ。
「あの白いキノコを黒い霧に向かって投げつけて!」
僕は地面を蹴り、人間とは思えない勢いで対象の元へ辿り着く。
その瞬間赤いキノコの怒号と黒い霧がよりどす黒く染まり広がっていくのを見たが構わず抱え込む。僕に向かって走り出し、僕も相手の元へ走り出す。
「負けないで!」
「真樹さん、がんばって!」
看病をしている二人に見守られながら言葉をしっかり聞く。そのまま突っ込む中、ミドリは歌い続ける。神々しい光がミドリを包み込み、ミドリの元を離れたと思うと僕と赤いキノコがぶつかる地点にその光が閃光のように強く射しこんでいく。
「ボクの浄歌で・・・元に戻って~~!!」
視界がすごい勢いで白く染まっていく・・・。
目をゆっくりと開くと相手は地面に倒れ込んでいて、僕の抱えていた亡骸から溢れ出る粒子が赤いキノコを包み込んでいく。しばらくして赤いキノコが起き上がりぼんやりと輝く粒子を眺めていたのだが、粒子は深海にマリンスノウが沈んでいくようにゆっくりと部屋全体に散り消えていく。黒い霧はもうどこにも無い。
「終わった・・・の?」
「真樹さん、やりましたね!」
サオリがミドリを見る。ミドリは優しく微笑んで頷く。僕はやったねとソリアに答える。赤いキノコには先程までのどす黒い感情は何も感じられない。
「記憶は薄くだけど残っていた・・・死んだ仲間達と殺し合った者達の情念に流されるまま残っている魔物達を殺戮していった・・・。」
「やっぱり取り込まれていたんだね・・・でも治って良かった。」
「弟がわたしを呼び覚ましてくれたんだ・・・そこに横たわっている元凶を絶つ為に!」
怒声と共に赤い炎が放たれるが、先程の威力には到底及ばず僕が包丁で払っただけで火は消えてしまう。
「憎む気持ちは理解るよ・・・でも殺しちゃだめ・・・。」
「ごめんね・・・」
気が付くとソリアやサオリが慰めるように赤いキノコの元へ寄り添い謝罪している。怒りの矛先を失ったように地団駄を踏む怒声の主。
「そいつはわたし達を良い様に操って、苦しみもがく皆を見て笑ってたんだぞ!絶対許さない・・・。」
少し具合が良くなったのか、当の本人が起き上がり怒るキノコの前に立つ。
「すまなかった・・・どうしても金が必要だったんだ・・・!でももうこのままじゃ・・・」
うっすらと瞳から雫が伝わり床に落ちていく。金の為にここまでしたフードの主に良い感情は持てないが何か理由があるようだ・・・僕は黙ったまま成り行きを見守る。
「なにさ・・・泣きたいのはこっちだって!」
おっしゃる通りだが狼狽えているキノコに人間らしさを感じて少し笑いそうになる。場が少し和んでソリアもサオリもホッとした表情になる。
「明日が山場で・・・万能薬を買って妹に飲ませないと・・・もう・・・」
泣き出してしまい、喋れない状態になってしまった。その場にいるみんながしばらく黙り込むが・・・
「どこの万能薬を買うの?」
「このふもとの街・・・」
それだけ精一杯話してから、暗い顔で沈んでしまった。
「お兄ちゃん・・・あたしのもらった絵を街で売ろう!」
「え・・・良いの?気に入ってたのに・・・。」
「モノなんかより命のほうが大切だよ!」
「サオリ・・・!良い子に育ったね!」
ソリアがサオリを抱きしめて頭を撫でている。姉妹愛もすごく良いなぁ・・・。
「そうと決まったらさっそく街に売りに行って薬を買おう!」
「ボクが帰り道もしっかりサポートするから安心してね!」
「妹を助けた後に、しっかり殺してやるから!」
話がまとまり、入ってきた所まで戻っていく。赤いキノコが手をかざすと扉は開いていく。
「そういえば、精霊を助けて無いような・・・」
「あっ!そうだった!」
みんな気付いたように慌てだす。
「精霊?上層で操られていた氏神様が逃げ出せないように結界を張ってたけど・・・もう保護なり解放なりしていると思うよ、優しいからね。何なら今から迎えに行くか?」
手には淡く緑色に輝く宝石を持っている。
「何かの魔力が込められているね」
「氏神様が作ってくれた転移魔法さ、こうやって手に力を込めるとね・・・」
周りの景色が一変する。そしてそこには・・・!
「サオリちゃん!!」
「精霊さん・・・!!!」
サオリが精霊さんに抱きついて感動の再開を果たす。精霊の人形のように小さな妖精のイメージだったが普通に人間大のサイズだ。見た目はソリアと同じか少し年上と言った感じだ。名前はリノア。
「ありがとね、気配が変わったから隠れてた空間から出て様子を見に来たの・・・!」
「よかった・・・。」
ホロリと嬉し泣きしそうになり他の皆を見る。皆良い笑顔を浮かべている。無事助けられて良かった。
「先程、紅から話を聞いた・・・お主らは客人としてもてなす。しかし今はその時ではない・・・その女の妹を救ってからまた来るが良い。」
神社にある大木を何千年も成長させたような巨大な樹が氏神様だ。声は聞こえるが姿は全部見る事が叶わない。少し話を聞くと、この万年樹の一部(幹)だったそうで次第に意思を持つようになり自立したとの事。赤いキノコの名前は紅と呼ぶそうだ。ミドリと違って根っからのキノコの種族である。
「妹が治る所を見届けたいが・・・わたしは地下での惨禍を氏神様に報告しなければならない。助けに行ってきな。」
先程と同じ宝石がフードの女性に手渡される。改めて見ると背は思ったより低く意外と幼いのかもしれない。
「ありがとう・・・助けたらまた会いに行くから。」
「許したわけじゃないけど・・・また来な。」
妹を救うヒーローの姉は、少し屈んで手をグーにして拳と小さい拳を合わせる。そして氏神様や紅、様々な色の傘のキノコ達に見送られつつ彼女は手に持つ宝石に力を込めていく。
視界が淡く宝石の色に輝いたかと思うと・・・樹の入口の前に全員無事に戻っていた。
後書き
こんな展開になるように考えながら書きました。
※左の広間で蟲毒の魔物(死んだ魔物の念が黒い霧となり蟲毒の魔物を覆う)と戦う中で魔物の制御が外れて、その魔物に攻撃される謎の人物、その後兄弟の魔物が出す浄化の粉に依り正気を取り戻す。(黒い霧が消える)。
蟲毒の魔物の案内で、謎の人物の支配(操られて侵入者の排除、殺せない場合は拘束している)から解放された樹の氏神(万年樹のボスキャラ)の元へ辿り着き精霊を開放してもらう。
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