肉体強化系能力者の戦闘記
ネイン
邂逅編
第一話 十月と本条
――四月一二日。
時は
少年の名は
風成は、とある少女と会う約束をし、指定された倉庫に向かっている最中である。
(まずいな……どうしよ)
少年は焦っていた。待ち合わせの時間をとうに過ぎていたからだ。学校が終わったらすぐに倉庫街に行く予定だったが彼は放課後、屋上で爆睡してしまっていた。
そして、たった今、待ち合わせの約束をした少女の横を気付いてない振りをして通り過ぎた。
「……は?」
少女は怒気を込めてそうな声を漏らす。そのまま自分の目の前を通り過ぎた人物に冷ややかな目を向けていた。
風成は少し歩いた後に立ち止まり、少女は
(また、おかしな事をやりそう)
と
(ここはもう奇行に走って笑いを取るしかない)
予想斜め上の発想に至り、風成は大きく息を吸って叫ぶ。
「本条ーーーーー‼ 出てこい‼ うおおおおおおお!」
「な、な、何考えてんのよ! 馬鹿‼」
風成は背後から聞こえる声で体を
風成は泡を食って叫ぶ、
「あぶねえよ! 燃えたらどうすんだよ!」
「今! 今、私の目の前を横切ったまま歩いたのよ! ぜっったい気付いてたでしょ! しかも馬鹿みたいに人の名前を叫ばないでよ!」
「だからって火を飛ばすかよ、これだから最近の若い子は」
「あんたも私と同い年でしょうが!」
「とりあえず落ち着けって、それに俺が叫んだ事で合流出来たんだろ、俺は正しい」
「そんなわけないでしょ。疲れるから、もう黙ってて」
少女の名前は
先程、啓子は手のひらから火を出したのは超能力によるもので、彼女は超能力を操る人間――能力者と呼ばれる。啓子の能力は『火炎を生成し火炎を操作』する事だ。
啓子は早速、風成の軽率な行動に頭を悩ませた。何故なら、能力者というのは世間一般には認知されておらず、裏社会で生きる存在である。そんな能力者が集う施設である『
彼女は後ろに風成が付いて来ているのを確認しながら、倉庫のシャッター横の扉を開けた。
「この倉庫の中に入るわよ」
「……」
風成は黙っている、啓子の言い付け通りに。
「ここの地下に能力所があるのよ。昨日も言ったけど、この場所を一般人に知られたらお終いよ。能力者という存在がいる事を世間に知られた日には消される……まではないと思うけど、本部の人間、つまり東京にある能力所の人達から
「……」
「分かった?」
「……」
目はしっかり合っているのに風成は真顔で黙っている。啓子はふざけているのか良く分からない少年の様子を見て、ツッコミたい気持ちを抑えた。なお、ふざけている模様。
倉庫の中には施設の場所をカモフラージュする為に大量のコンテナが積んである。また、入り組んだ迷路になるようにコンテナは配置されている。迷路に入って突き当りのコンテナの前で立ち止まると、啓子はコンテナを鍵で開ける。すると、地下に繋がる階段が現れた。
「昨日、色々と言ったから分かると思うけど、ここを降りると能力者として生きる事になるわよ。覚悟できてる?」
「…………」
「もう喋っていいわよ、ってか喋れ」
啓子は痺れを切らした。
そんな少女を風成は
「どうしたの? もしかして怖くなった?」
心配そうに啓子は風成に歩み寄って、背中の後ろで手を組んで顔を
「大丈夫よ。皆、本当に良い人だから、それにしても、あんたでも怖い事があるのね」
「そんな事より、今めっちゃ、トイレ行きたいんだわ。膀胱が限界。大体、何が怖いんだよ……でも確かに本条は怖いよな! なんてな!」
「は……は、ははっ」
啓子の乾いた笑い声に風成の防衛本能は働く。しかし、時すでに遅し、啓子は風成の右頬に向けて炎で包ませた右拳を振り抜く。
「ふっっざけんっなぁぁぁ!」
「ぐああああああああああ!」
殴られた風成は空中で一回転する。そして地面に突っ
「くっ、なんて凶暴な生き物なんだ。ジャングル育ちかよ」
「なんか言った?」
啓子は笑みを浮かべながら尋ねる。対して風成は、
「ナニモ、イッテマセン」
と
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