第5話 勝負の誘い
可愛い心が読める後輩の名前を聞きそびれた俺は、それを後悔しながら一日を過ごした。
「はあ、気晴らしに何をするかなぁ……」
俺はポツリとそんなことを呟きながら、廊下を歩いていた。
「君が菊井真也だね」
突然名前を呼ばれた俺は後ろを振り返った。
「ああ、そうだが。……誰だ、お前?」
後ろに居たのは見知らぬ群青色の髪をしたこの高校の制服を着た男。
男の翡翠の瞳からは何とも言えない風格が漂っている。
「僕は
異能力者……この高校に居過ぎじゃないか?
「僕と君以外にも異能力者は二人いるみたいだけどね」
……ということはその中にあの心を読める子もいるのか?
「そんなことはどうでもいい。あんた、俺に何の用だ?」
「君と勝負がしたい」
……なんだ、こいつ。出会ってすぐのやつに勝負を申し込むとか戦闘狂なのか?
それよりも何でこんな訳の分からん男と勝負なんかしないといけないんだ!
「もちろん、勝負をするんだ。僕に勝てれば君に良いものをあげるよ」
……フン、俺をエサで釣るつもりかよ。俺はそんな勝負をするつもりなんかないのにな。
「……これだ。君が僕に勝てたらこれをあげよう」
「分かった!その勝負、乗ったぜ!」
三原とかいう男の右手が握っていたのはピンク色のパンティーだ。
「本当に君はこういうのが好きなんだね……まあ、情報通りで助かったよ」
「三原……お前!そんなのどこで手に入れたんだ!?」
三原はピンクのそれをくるくると回しながら遊んでいた。
「これは僕が拾ったものだ」
「……嘘だな。そんなパンツが路上に落ちているのを俺が見逃すわけがないだろうが!」
俺がそう言い放つと三原は階段の方を指差した。
「屋上でやろうじゃないか。勝負」
「……分かった。それで気になったんだが、俺が負けた場合はどうなるんだ?」
三原は階段の途中で立ち止まった。
「そうだね……君が負けた場合は僕に従ってもらおうかな」
俺はその時の三原の笑みに不気味なものを感じた。
それに何より、男に従うなんてのは絶対に嫌だ!
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