第18話 手紙

 今回も、閉館時間1時間前から仕事だ。配置も前回とあまり変わってないが、管理室に俺と一静に加えて彩予がいる。もし俺を狙ってきた時、彩予が守ってくれるらしい。


 いつもは騒がしい彩予だが、護身術を習っていたこともあるらしく、運動神経も抜群なんだとか。能力も上手く使えば戦いに有利だ。


「にしても、本当ボロボロだよね。ここも新しくしたらいいのに」


 どこから持ってきたのか、分からない椅子に腰を掛けた彩予が言った。


「確かにそうですね」


 機材は新しいものの、部屋がかなり古い。簡単に壊れそうだ。まぁ、それは置いておいて。防犯カメラの映像を見てみるが、特に不審人物や不審物は見当たらない。


「そうだ、今回はいつ犯人が来るのか分からないんですか? 」

「言ってなかったね。今回は19時だよ、今のところは」

「分かりました」


 俺が繋いだ3本の糸を通して言う。


『犯人が来るのは19時のようです』


 毎度、閉館後にしか現れないのか。当たり前だけど。


「今回も奏さんを狙ってくるんですかね」

「俺なんかを捕まえて何をしたいんですかね……」


 そんなことを一静と言っていると、彩予が何かを床の隅から拾って、俺らに言った。


「これ、そーちゃん宛ての手紙みたいだよ」


 白い封筒には、確かに「香月 奏様へ」と書かれている。封筒は少し濡れているようだ。


「一静、これ誰が書いたのか分かりますか? 」

「ちょっと待ってください。これは、昨日書かれたものみたいです。書いた人は……え? 」

「どうかしましたか? 」

「これ、あのアクアキネシストが書いたものですよ」


 つまり、今回の事件の犯人が書いたってことだよな。何のために?


「中を読んでも大丈夫ですかね? 」

「変な仕掛けは無いようなので、大丈夫だと思います」


 一静にそう言ってもらえたから安心して、手紙を開ける。中の手紙は濡れてなくて、文字も滲んでない。手書きの手紙は意外と短かった。


『突然の手紙で驚かれたかと思います。わたくし上月かみづき せいと申します。どうしても、貴方と会って話さないといけない事があります。10日 木曜日の19時、美術館の中庭で待っています。勿論、1人でなくても大丈夫です。私は貴方に危害を加える気はありません』


 2人にも読み聞かせた。10日というのは、勿論今日だ。


「これって、罠かな? 」

「どうでしょう。取り敢えず、他の3人にも伝えますね。どうするかはその後、考えましょう」

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