第16話 奏の過去

 その後、政府の役人に侵入者は連れていかれ、俺らも共同生活の場に戻った。今日はもう遅いから、明日集まって話し合いをしようということに。


 とはいえ、すぐに寝られるはずもなく、ベッドの上でぼんやりとしていた。ここに初めて来た時の事を思い出すな。


「俺が狙われてる……か」


 今後もこういうことが増えるのだろうか。そっと吐いたため息は、天井に吸い込まれていく。これじゃ、皆の足手まといじゃないか。駄目だ、悪い方にしか考えが向かない。


「おーい。奏、起きてるか? 」


 ノックの音と共に、焔の声がした。ドアを開けると、焔、彩予、一静、影、瞬がいた。


「皆さんも寝られないんですか? 」

「寝られるわけあるか。ちょっと入るぞ」


 そう言い、ぞろぞろと入ってくる。1つの部屋に6人もいると、結構狭いな。


「なぁ、奏。言えないなら言わなくてもいい、何故狙われてるか、心当たりとか無いか? 」


 5人の真剣な眼差し。狙われる理由……あると言えばあるし、ないと言えばない。でも、もしかしたら俺の過去が関わっているのかもしれない。なら、話しておくべきか。


「俺は今まで、あまり人と関わらないようにしてきました。なので、恨みを買ったことなんてないと思います。でも、心当たりといいますか……繋がりそうなことはあります」


 誰にも言ってないことだ。柄にもなく緊張して、言った。


「俺、孤児なんです。物心ついた頃には、施設にいて。なので、親の顔も知りません。この、香月 奏という名前も、施設の人が付けてくれました」


 理由は言わなくても、分かってくれるだろう。俺が、先天性の能力者だからだ。


「そうだったのか……。言いにくいことを言ってくれて、ありがとな」


 そう言い、焔が俺の頭を優しく撫でる。温かい手。熱いものが込み上げてきて、目からこぼれ落ちた。なんで……。


「悪い、嫌だったか? 」

「いや、ちがっ、その、あまり優しくされると、どうしたらいいか。でも、嬉しい、です」


 涙はぽろぽろとこぼれて、止まることを知らない。そんな俺に、彩予は飛びついてきて、一静と影にも頭を撫でられ、瞬は背中をさすってくれて。5人にもみくちゃにされていた。


「そーちゃんのことは、絶対に僕たちが守るから」

「頼りないと思いますが、僕にも頼ってくださいね」

「何だか、大きな弟ができたみたい」

「6人でいれば、大丈夫っすよ」


 いつの間に、俺はこんなに愛されていたんだろうか。


「俺らは仲間だろ? 副リーダーさん」

「……そうですね。ありがとうございます」

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