第3話 僕ってやっぱりパートタイム勇者みたい、ヤバいわ

姉ちゃん達が朝食を終えて化粧を始めたので僕は台所へと向かう

本当はステータスウインドウの衝撃が抜け切れていないからまだ呆然としてたいんだ

それでも日常に戻ってしまうのは僕が貧乏性だよね


だってお弁当に詰めるためのおかずを用意しないといけないからね

僕がしっかりしないとみんながお昼ご飯を食べられなくなっちゃうんだ


さあ、お弁当を作ろうか


昨夜、余計に作ってお弁当用に取っておいた夕食のおかず

次は今朝、作った卵焼きとほうれん草のお浸し

最後にお弁当用の冷凍食品を3品ほどレンジで温める


それらをテーブルに並べるておく

それを自分で弁当箱に詰めるんだ

セルフサービスでお願いしますってやつだね


「お弁当のおかず出来てるからね、忘れないでお弁当箱に詰めてね

あと、朝食代が100円でお弁当は200円だからね」


僕は大きな声で姉ちゃん達を促す


「「「ふあ~い」」」


真剣に化粧中の姉ちゃん達は生返事しかしない


「僕は言ったからね、後でお弁当を忘れたって言っても知らないからね」


「「「ふあ~い」」」


後は知らない

自分の支度もしないといけないしね


僕は洗面所に行って、歯を磨き、顔を洗い、髪を整える

うん、準備OK

後は制服に着替えるだけだ


制服は寝室にしている部屋に置いてあるので着替えに行くと、姉ちゃん達も着替え中だ

パンティーに包まれたお尻やブラジャーで隠された胸が目に入ってくる

一瞬、おって思うけど、下着姿で朝食を取っている姉ちゃん達を見ているので今更だよね


それでも、スカートを履きながらチラリと見えるパンティーや、閉じかけのシャツから見えるブラジャーに、下着姿以上にドギマギしてしまうのは不思議だよね

そして、そんな僕の邪神はお姉ちゃんたちには丸見えみたいだ


「もう、ゆう坊ったらエッチなんだから

そんなに見つめないの

不味いな〜、女の子の着替えを見るのにハマっちゃダメだからね

学校で女子更衣室を覗いたら犯罪だよ」


そんなことを気にするなら下着姿で朝ごはんを食べるなよ

僕は本当はそう言いたいけど空気は読めるんだ


「なんだよ、下着姿で歩いてる姉ちゃんたちの着替えなんてなんで見る必要があるんだよ

バカじゃないの」


文句は言うけどね

それに、下着姿の女が何人もいる部屋は女の子の匂いが満ちていてちょっとドキドキしてるのも事実だしね

そこに姉ちゃんたちの化粧の匂いが加わるんだ

しょうないよね

でも、姉ちゃん達に女を感じてるのは内緒だよ


そして、慌ただしく着替えを終えると登校だ


台所のテーブルにはお弁当のおかずは残っていないのでみんなちゃんとお弁当は詰めたみたいだね


みんなで玄関を飛び出しておしゃべりをしながら20分ほど歩けば学校に着く

この距離感が我が家に姉ちゃんの仲間が集まる理由のひとつでもあるんだ


「ゆう坊、お昼は一緒に食べるのよね」


「うん、いつもの所だよね」


中学生の僕と高校生の姉ちゃん達とで一緒にお昼を食べられるのは、僕達が通う市立の学校がコストの観点でグラウンドや特殊教室を中学と高校で共用する設計になっているせいだ


だから、部活も中学校と高校で共同になっていたりもする

中高一貫校みたいに中学生と高校生が一緒の学校にいるみたいなんだ


校門も共用で入ってから左に行けば中学校、右に行けば高校になっている

だから僕は校門をくぐったところで姉ちゃん達と別れて中学の昇降口に向かうことになる


そして、昇降口で上履きに履き替えて1-Cの教室に向かうんだ


「おはよう」


僕は朝、教室に入るとき、しっかり挨拶をすることを習慣にしてる

朝の挨拶は大事だからね

でも、返事をしてくれる人は少ないかな


「おはよう」


そんな中でも幼馴染の亜紀ちゃんは返事を返してくれる

それだけで僕は嬉しくなるね


そんな僕の気分をぶち壊すのが山田だ


「よう、女たらし、今日もハーレム状態で登校って優雅なご身分だよな」


うざいやつ、山田は僕が姉ちゃん達といつも一緒にいるのが気に入らなくて何かと僕に絡んでくる

僕と関係なく山田は相手にされないんだから逆恨みなんだけどね


「ドン」


わざとだろう

山田の肩と僕の肩が当たる

今までも何度もやられてる

山田は僕が尻もちをつくことで俺の方が上だと主張したいんだ

まあ、山田らしいやり口だ


でも今日は違う

山田のショルダーアタックは僕には蚊が刺したほどにも感じられない

いつの間にか山田が尻もちをついている


「あれっ、肩が触れただけで転ぶなんて大げさな奴、少しは身体を鍛えろよ」


いつも山田に言われている言葉を山田に送ってやる


「えっ、なんで、なんで」


途方にくれる山田

よっぽどショックだったようでもう僕に絡む元気はないみたい

だから、山田は席へと戻って行く


「ゆう君凄いよ」


亜紀ちゃんが驚いたまん丸の目で僕を見てるよ

少し気分がいいよね


「チッ」


席に座った山田がした舌打ちが耳に届く

まったく、羨ましいからっていちいち絡まないでほしいよ


そんなイレギュラーなやり取りが終われば授業が始まる


授業は少し苦手だ

特に中学から始まる英語はね


だから英語の授業では先生に当てられないように身を屈めている

でも、先生は許してくれない

僕は当てられて英語の教科書を音読始める


そして不思議な事が起きたんだ

僕の口から英語が自然に出てくるんだ

昨日まではカタカナを読むような英語だったのに今はすらすらと音読が出来てるよ

アメリカ人がが話しているみたいだよ


先生もクラスメートもそんな僕を不思議そうに見ているし


『君は英語圏の学校に通ったことがあるのかい

それだけのネイティブな発音は一朝一夕で身につく物じゃないよ

高校の部活には英語部があって中学生の部員も募集しているから入る事を勧めるよ』


先生が英語で僕に話しかけてくる

なんでだろう

昨日までの僕じゃ絶対に分からない言葉が今は全部分かってしまう


『部活は姉がいるコスプレ部に入ろうと思ってます』


うわっ、英語が日本語みたいに話せてしまう


『それは残念だね、でも掛け持ちも可能だから英語部に入ることも考えておくと良いと思うな』


『分かりました、検討してみます』


僕は先生とそこまで会話をすると席に座った

すると周りの雰囲気が少し違うんだ

ザワザワしていている

耳を澄ますと


「雄二のやつ、あんなに英語が話せるんだ」


「あれって、アメリカ人みたいだよな」


「先生との会話、お前分かったか、俺はよく分からなかったよ」


なんて会話が聞こえてくる


おれ、おかしい

僕は普通に話したつもりなんだけど

僕って英語を話していたの

そんな訳、ないと思うんだけどな

そして僕は気づいてしまう

これってパートタイム勇者になったからだよね

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