第200話 ジョバンニ騎士爵
――翌日。
グンマー連合王国が発足した。
当然ながら、仕事が怒濤の勢いで、襲いかかってくる。
午前中は内政の中でも、財務よりの会議だ。
財務――わかりにくい言葉だけれど、ざっくり言うと、『お金に関わること』だ。
出席メンバーは、俺、じい、ジョバンニ、アリーさん、エルハムさん。
俺は従兄弟のジョバンニに、騎士爵を授けた。
本当は男爵でも、子爵でも良いのだが……。
平民から貴族に引き上げると、周囲からやっかみが凄いらしい。
そこで、まずは騎士爵からと判断した。
それにジョバンニは、武勲がない。
『貴族である以上、戦いに出るのは当然!』
そういった風潮が、貴族たちにはあるのだ。
今後、戦いがあればジョバンニには、兵を率いて戦いに出てもらうだろう。
がんばれ! ジョバンニ!
会議は、そのジョバンニ騎士爵の報告から始まった。
「新たな四ヶ国建国に伴いアンジェロ領にあるミスリル鉱山の権利は、全てアンジェロ様の手元に戻りました。また、フリージア王家の資産は、アルドギスル様とアンジェロ様で折半しました」
四つの国――アルドギスル・フリージア王国、アンジェロ・フリージア王国、北メロビクス王国、南メロビクス王国が建国された。
問題になったのは、フリージア王家の資産を、どのように分割するかだ。
俺とアルドギスル兄上で話し合った結果――
『恨みっこなし、半分こで良いんじゃなーい?』
『それが、一番ですね』
――と、半分こすることになった。
金貨などの現金は、半分こするのは楽だったが、宝石、指輪などの宝飾品、魔道具などは、ジョバンニたち商人が評価額を決めて半分こ。
王家に差し出したミスリル鉱山の権利は、父上の隠居料という名目で俺に戻してもらった。
ジョバンニが報告を続ける。
「また、旧メロビクス王大国王家の資産も没収いたしましたので、アンジェロ様の総資産は計算不能なほど膨れ上がっています」
ジョバンニの手が少し震えている。
旧メロビクス王大国王家は、歴史もあり、また大国の王家であった宝物庫に積まれた金銀財宝だけでも、とんでもない額だろう。
それに加えて、宝飾品、絵画、調度品、魔道具など、しこたま貯め込んでいた。
メロビクスの宝物庫丸ごと全部、俺のアイテムボックスに収納し、キャランフィールドに持ち帰ってきたのだ。
エルハムさんも、アリーも目を見張っている。
たぶん、大陸北西部で一番の資産家は俺だ。
だが、資産を寝かした所で意味はない。
ドンドン活用しないと。
俺はジョバンニに指示を出す。
「宝飾品は、儀式で使う物以外は少しずつ売り払って現金化してくれ。魔道具は、エルフ族に見てもらい売却するか、利用するか、保存するかを判断しよう」
「かしこまりました。調度品は、今後使い道が多いと思われます。保管しておいてよろしいでしょうか?」
「使い道? あるかな?」
「……これからアンジェロ様の宮殿や後宮を建てねばなりませんし、先王レッドボット三世陛下の隠居所も建てねばなりません。他にも各国の大使館であるとか、調度品はいくらあっても足りません」
「宮殿とか必要?」
俺としては、今の執務室や会議室で十分なのだが。
後宮は……ムフフ……必要だね……。
俺が、まだ見ぬ後宮でのハーレムライフを想像していると、みんなから呆れた視線が飛んできた。
「アンジェロ様……。宮殿は国と国王の威厳を内外に示す物です。要不要の問題ではなく、あって当然です」
「えっ!? そうかな!? でも、予算がかかるよね?」
「予算がかかるではなく、予算をかけるのです! 四カ国を総べる総長ですよ? 立派な宮殿でなければ、各国の大使にあなどられます」
「ああ、それは、まずいね……。わかった。宮殿建設は、ホレックのおっちゃんたち、ドワーフと相談するよ」
また、一つ仕事が増えてしまった……。
資産の話が一段落したので、今度は収入の話をジョバンニが始めた。
「今の所、毎月の収支は大きく黒字です。しかし、南部の開発が始まると一気に赤字に転落します」
「青狼族と赤獅子族の居住地域の開発だね」
「そうです。それに、北部縦貫道路が開通すれば、人の流れも加速いたしますので、都市の維持コストが増大します」
「今までのやり方では無理か……」
難しいな。
都市運営ゲームなんかでも、都市の人口が増えるとコストが増えてバランスを取るのが難しくなる。
アリーさんが挙手したので、アリーさんの発言を許可した。
「陛下。港の方も手狭になって参りましょう。拡張工事が必要です」
「わかりました。それは、俺が魔法でやります」
旧フリージア王国と旧メロビクス王大国が一つになったことで、ここキャランフィールドと旧メロビクス王大国との海上交易が盛んになるだろう。
それに、拿捕というか冷凍してアイテムボックスに収納した敵艦隊がある。
港の拡張は必須だ。
「それから、キャランフィールドでは、食事や寝泊まりが無料ですが、そろそろ料金を取らないと……。北部縦貫道路が開通すれば、他領、他国から人が増えますわ。彼らの分も無料にするわけには……」
「それは、有料ですね。冒険者ギルド側とも相談してみます」
どこの世界でも、コストとの戦いは厳しいのだ。
コストの話が出たら、収入だ。
「エルハムさん。クイック生産は、どうですか?」
「はっ! 順調です! 第二工場も稼働しております。現在、第三工場を建設しています」
「いつ頃、いけますか?」
「春には完成の予定です」
よし!
これでクイックの生産能力が、飛躍的に上がる!
だが、ジョバンニは満足していなかった。
「エルハム様。第四工場、第五工場と、工場は増やしていただきたい。現在、クイックの取り引き希望者が殺到していますが、物がないので断っている状態です」
「ジョバンニ殿。そうおっしゃるが、人手不足だ」
「工員なら、こちらで確保します」
「そうか……それなら……」
エルハムさんが、俺をチラリと見た。
「エルハムさん。お金は出しますから、工場を増やしてください。ジョバンニ。資産は切り崩して構わないから、積極的な投資をして」
「「かしこまりました」」
他にも細かな確認行って、会議は終了した。
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