夢旅④
「……本当に身体を大事にしてほしい。もし、蛍に先立たれたら俺は生きていけない気がする」
主人がそんな気持ちを伝えてきた。そんな主人に私は
「……私はあなたに先立たれてもすぐに後を追おうなんて思わないですよ。子ども達が大きくなったからと言ってもまだまだ子どもなんですから、しっかりと見届けてあげないと。それにいつかは孫の顔も見たいですから……二人で長生きしましょう」
そう主人に笑顔を返したら、主人も笑って「そうだな」と答えた。
主人とお風呂の中、裸でこんな話をするなんてちょっと恥ずかしい。恥ずかしいついでに主人に老後どうしたいかも尋ねてみたら
「……老後か。二人で色々と旅行するのも良いけど、俺は定年後は海辺の町に小さなアパートを借りて、日の出から釣竿とバケツを持って朝から釣りをしに行って、昼飯は蛍の作ってくれたお弁当を食べて、日暮れには帰宅して釣れた魚を蛍に料理してもらって晩飯にする。そんな生活も良いなと思うんだ」
「……私はあなたが釣りをしている間、何をしているんですか?」
「蛍はアパートにネット環境があれば困らないだろう?」
「それは、そうですね……」
今は漫画のアシスタントさんも集まって作業なんかしない。それぞれの自宅で作業している。だからインターネットの環境がアパートにあれば事足りてしまう。
「昔な、俺と蛍が出会った頃のような小さなアパートで二人寄り添って暮らすのも悪くないと思うんだ」
「……そうですね。でも、子供達や孫達が遊びに来たときに泊まる部屋がないと困りませんか?」
「うっ、そうだな……それじゃ……」
そんな妄想話を二人でしていたら、露天風呂の扉が開く音がして
「お父さん!お母さん!仲間外れはずるいよ!」
そう言って、飛び込んできた裸の燕が見えた!
「な、何やってるの!嫁入り前の娘が!もう、あなた!見ちゃ駄目!」
私は立ち上がり主人の目を手で覆う。
「ほ、蛍!この体勢はマズイって!」
慌てて立ち上がって主人の目を覆った体勢は、私の上半身が主人の上半身とくっつくような体勢で、ちょっと大変な状況だった。
「あぁー!もう!お母さん!また、お父さんとイチャイチャして!」
そんな感じで燕も大騒ぎだ。本当になんでこんなことに……
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