大学編 第54話


 「そういえば蛍ちゃん、約束通りに例のお揃いのやつ、身に付けてきた?」


 「………………はい」


 「何の事だ?」


 話を水無瀬さんに聞いてみたら、どうやら蛍と水無瀬さんは遊園地に行くにあたり、お揃いの装いを身に付けてくる約束をしていたとのことだが……


 「……全然揃ってないぞ?」


 水無瀬さんはちょっと格好良い感じだし、蛍は動きやすくて可愛らしい感じの装いで女性のファッションに疎い俺でも全然違うことくらいはわかる。


 「ふふふ、睦月君、気になるー?実はねー」


 「つ、つばめちゃん!?だ、駄目ですっ、こんなところで脱いじゃ!」


 「……蛍ちゃん、さすがの私もこんな人目のあるところで脱がないよ!?」


 「……もしかして」


 「そう!お揃いの下着だよ!」


 「……うぅ、つばめちゃんがどうしてもって言って……」


 両手を腰に当てて堂々とする水無瀬さんに対して、蛍は赤い顔で小さくなって恥ずかしがっている。


 「ちなみにお揃いなのはデザインだけで色違いなんだよ!ふふふ、睦月君、気になるかなぁ?」


 「………………全然気にならないぞ」


 なんだその二人の疑いの眼差しは。少しだけ妄想しただけだ!


 「……そうね、睦月君は後でこっそりと蛍ちゃんに見せてもらえば良いもんね?」


 「……先輩、せめてお家に帰ってからにしてくださいね?」


 「それじゃ帰ろうか」


 「睦月君!今来たところだよ!」


 「先輩のエッチ!」


 ちょっとした冗談なのに怒られてしまった。


 「本当にもう!睦月君は!……そうそう、因みに私のは紫色だからね!」


 「つばめちゃん!そんなこと言わなくて良いです!」


 そうか水無瀬さんは紫色なのかと思っただけなのに、蛍が俺の太ももをズボンの上からつねってくる。あの細い手のどこにこんな力があるのか不思議だ。


 「ふふ、ちなみにサイズは勿論、違うからね?何処がとは言わないけど」


 「……つばめちゃんはお尻が大きすぎです」


 「む、睦月君!そんなことないからね!?」


 この前おんぶしているから水無瀬さんのお尻のことは触り心地もわかるけど、そんな発言をしたら俺は遊園地でヒモ無しバンジーさせられそうなのでその件に関しては黙秘するだけだ。


 「本当に二人とも仲良しだなぁ」


 俺が言えることはそれだけだ。


 きっと蛍と水無瀬さんはキャッキャウフフとお揃いの下着を選んでいたのだろう、楽しそうで何よりだ。

 もし、俺と神宮寺が二人でトランクスをキャッキャウフフと選んでいたら殴りたくなるもんな。


 そんな二人の下着姿は自宅に帰ってから一人でこっそりと妄想することにしよう。


 「それにしても睦月君は……いつもの格好ね。ギリギリ七十点かな!」


 「それは我ながら微妙な点数だなぁ」


 あまり服に金をかけられないし、俺が似合う服ねぇ……なんだろう、格好を誉められた記憶が昔の厳つい時代の記憶しかない、そんな格好は遊園地デートには向かないだろうな。


 「蛍ちゃんはどう思う?睦月君の服装、何が似合うかな?」


 「先輩が一番格好良い姿はお風呂上がりに上半身だけ裸で髪をタオルで拭いているときです。厚い胸板と割れた腹筋がとてもセクシーです!」


 「なるほど、睦月君!上半身脱いでよ!さぁ、早く!」


 「何を言っているんだ!?」


 上半身裸で遊園地を歩いていたら変態扱いされるわ!


 


 

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