大学編 第44話
「……」
「……渡貫さん、本当は話せるんだから話した方が早くないすか?」
「……」
この間は案の定、渡貫さんは酒を飲んで牛丼屋で脱衣し始めたので絞め落として担いで帰った。穂積さんも宇佐川さんも飲ますだけ飲まして何もしてくれないんだからなぁ。でも俺が渡貫さんを絞め落としたときは二人ともひきつった表情をしていたのはなんでだ?一瞬で終わらしたから引くようなことはないと思うんだけどな。
「……」
「これに懲りたら気をつけてくださいね」
「……」
俺の必死の説得にさすがの渡貫さんもわかってもらえたような気がした。何故か俺のことを見る目が危険人物を見るような目に変わったのは気のせいだろう。危険人物なのは渡貫さん本人なのだから。
「そういえば渡貫さんは何かバイトやってるんですか?」
「……」
「えっ?探偵!?……の助手?」
なるほど、渡貫さんが調べものが得意だというのはそういうバイトをしてるからなのか。
「……」
「俺にもバイト紹介しようかって?うーん、昼間の仕事と夜間の学校で手一杯かなぁ。お金は欲しいんですけどね」
確かに探偵業なんて面白そうな気はするが
「でも、やっぱり迷子の猫探しとか浮気調査とかがメインなんでしょ?」
殺人事件を探偵が調査するなんて物語だけの話だろう。そんな事件は警察がきちんと調査するはずだ。
「えっ?一度、殺人事件の調査をしたことがある?というか殺人事件を解決した時の手伝いをしたことが?」
「……」
そんな推理小説のようなことが本当にあるなんて。
「それは一体、どんな事件だったんですか?えっ、密室だった?」
おおっ、ますます推理小説みたいだな。
「それはどんな事件ですか?……何々、犯人は秘密の抜け穴を通って侵入してきた謎の外国人で、殺害方法は未知の毒薬を使用して被害者を殺害して逃亡。それを渡貫さんの雇い主の探偵さんが……超能力で解決したと……」
……なんだろう、嘘っぽいな。
「渡貫さん、ありがとうございました。面白かったですよ」
俺はお礼を言って渡貫さんの部屋から退出した。扉を閉めた向こう側から
「ふふふ、やっぱり信じられないよな、超能力なんて」
という渡貫さんの声が聞こえた気がしたけど気のせいに違いない。
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