第31話
そんな話を俺は他人事の様に聞いていた。
……以前も同じように御劔が話して……そのとき俺は俺を見る奴等の目に嫌気がさして
『……そうだな、もう俺とつるむ必要はなくなったな、これからはこいつらが助けてくれるってさ』
……そう言って、黙ってこちらを見つめる蛍の前から立ち去った。その後、廊下などですれ違う際にも何か言いたそうな蛍を無視して俺は学校を卒業した。
……そして少ししてから鳴海蛍が自殺した話を聞いた。結局、蛍へのいじめが再開して……蛍は玩具にされ……飛び降り自殺をしたと聞いた時は後悔した……あの時俺が手を離さなければ……
だから今回は俺は手を離さないと決めた。
「……御劔、俺は蛍を脅したりしていない。好きで一緒にいるだけだ……問題はないから構わないでくれないか」
「……いや、鳴海さんはこの話を知らずに君に付き合っていたのだろう?この話を聞いて鳴海さんは今までの様に君と行動を共にするかは……鳴海さんが決めることだ」
……その通りだ、俺が蛍を守りたいと思っても蛍が俺が怖いから離れたいと思ったなら……引き留めることはできない……そう思っていたら
「……私も、好きで先輩と一緒にいるんです、問題はありません!」
そうハッキリと蛍は言った。その言葉を聞いて彼らは蛍を説得しようと更に言葉をかけたが……
「……先輩は優しい人です、そんな風に言わないでください!」
蛍が彼らを拒絶した頃に、何処からともなく山吹先生が現れた。
「ほっほっ、好きあっている二人を引き裂こうとするのは見ていてあまり面白い光景とは言えませんね」
「誰と誰が好きあってるって?勘違いするな!」
ほら、蛍も否定しろよと顔をみたら黙って顔を赤くしていた。なんとか言えよ!
「ふふ、まぁそういうことにしておこうかの……まぁ御劔会長、ここは一旦は様子見ということにしておいてはどうかね?」
そう山吹先生が御劔に言ったら御劔も「……わかりました」と引き下がった。
その様子を見て蛍が「……先輩、もう帰りましょう」と俺の手を強く引いてその場から逃げるように歩き始めた。その場に残された彼らは何も言わず去っていく二人を見送ることしかできなかった。
彼らの姿が見えなくなったので
「……蛍、手を繋ぎっぱなしだぞ?そろそろ離してくれ」
そう俺が言ったのに蛍は更にぎゅっと握りしめてきた、そういえば初めて蛍の身体に触れてるな……小さな手だなと思いつつ話しかける。
「……蛍、俺はお前が思うような優しい人間じゃないんだ。さっきの話を聞いて引いたろ?俺は敵には手加減なんかできない……どこかおかしい奴なんだ……」
それでも蛍は手を離さない。
「……蛍、いじめを避ける為に俺の名前を勝手に使って良いから……もう俺に直接は関わらない方が良いと思う……」
「……先輩、嫌です。そんなこと言わないでください!」
「……」
「……先輩、私は先輩の味方ですから……また一緒にご飯食べて、勉強して、ゲームしましょう」
「………………あぁ」
蛍は帰り道の別れる所まで決して手を離してくれなかった。
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