第15話


 「……なぁ、蛍……やっぱり悪いから明日からお弁当作ってこなくてもよいぞ?」


 「……本当は先輩のお口に合わなかったのですか?」


 蛍が悲しそうに言うのでそんなことはない、本当に凄く美味しいと思ってるし感謝していると伝える。


 「……それなら作ってきて良いじゃないですか?」


 「……でもなぁ」


 蛍は材料費をどうしても受け取ってくれない。案外、頑固な所がある。


 「……お弁当を一つも二つも作るのは一緒ですから……」


 「……でもお金は蛍のご両親が出してるんだろ?やっぱり悪いよ……大丈夫、俺もこれからは蛍を見習って頑張ってお弁当作ってくるからさ」


 「……はい」


 そんな会話があった次の日の昼休み。蛍を連れ出し空き教室でお弁当の蓋を取る。


 「……先輩、それは何ですか?」


 「……お弁当だが?」


 炊いたご飯の上におかかのふりかけを掛けた……立派なお弁当だ、厳密に言えばそれだけなんだが俺は満足している精一杯頑張ったからだ。蛍は無言で俺のお弁当に自分の玉子焼きとミートボールをのせてきた。


 三日目にご飯に焼肉のたれ(のみ)を掛けたお弁当を持ってきたときに


 「……先輩、お願いですから私に作らせてくださいぃ……」


 蛍が本当に泣きそうな顔で懇願してきたので「……お願いします」としか言えなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る