引き裂き怪獣 コルグイス
「『コルグイス』と名前が決まった。ラテン語で牙を意味する『コルヌ』と爪を意味する『ウングイス』を合わせた造語だそうだ。評価は後で聞くから無事帰ってこいよ」
正直、瑠璃達にとってはどうでもいいことが諸星から伝えられる。
さっきまでモニターで見ていたコルグイスはしなやかに動き銃弾を避けながら自衛隊を蹴散らし、高い跳躍力をもって低空飛行の戦闘機を爪ではたき落としていた。
今までのモドラーは海に向かって突き進んでいたがコルグイスは非常に好戦的であるようで自衛隊をある程度沈黙させて海に向かって行った。
「るり~♪ 今回は私が1番槍で行くから見ててね」
寧音の通信で色々考えていた瑠璃は操縦席周囲に広がる360度モニター見ると浜辺で手を振るファイターグマが見える。
「ああ、気を付けてな」
「はあ~い」
瑠璃が通信をアネットに繋ぐ。
「アネット、いけそうか?」
「……うん、大丈夫デス。これ結構難しいデスネ。よくこれで狙いつけて撃ててマシタネ」
「そのクマと仕様が違うからな。まあ頑張れよ。期待してる」
「うん♪ 頑張りマス!」
通信が割り込んで来る。
「なんかさーー私の時と違うくない?」
「ふふ~ん♪」
「あーーなんか腹立つーー」
〈コルグイス接近です。海中を進むスピードも速いみたいで予定より早く到着します〉
翠の通信で3人の操縦桿を持つ手に力が入る。
***
(これは本当に難しいデスネ。狙撃も少しは自信がありマシタが前回の傷口に連続で弾丸を撃ち込むとか神業デス。
流石ルリ。格好いいデス♪)
アネットはスコープで海岸を覗きながらにやける。
ファンキーグマの左腕には鉄で作った腕を曲げた大きさの柵の様な物が取り付けられ狙撃の体勢を取れるようにしてある。
ただの支えであり戦闘は勿論、曲げ伸ばしも出来ない。
海面に黒い影が現れると海上にその影は飛び出し砂塵をあげて上陸する。
コルグイスは四足歩行になると素早く動き始め、近くにいたファイターグマに詰め寄ると蹴って吹き飛ばす。
そしてそのまま内陸へと進んでいく。
「最悪! カッコ悪すぎだって私!」
「速い! これは狙うのが難しいデス」
焦る寧音とアネット。
銃声と共に地面の土と石が舞い上がるとコルグイスにかかる。
鬱陶しそうに避けるコルグイスの右足から緑色の血が吹き出し転がるがすぐに起き上がると走り出す。
次々と響く銃声から逃げるようにコルグイスは走り続け勢いをつけると大きな爪を振りかぶり銃声の主であるスナイパーグマに襲いかかる。
「単純だな!」
両手に持っているMOFU KUMA用拳銃で連続で発砲する。
銃弾が腹部に連続で当たったコルグイスは地面に落ちると緑色の血を流しながら逃げていく。
「寧音、お前の方がダメージ与えられると思う。俺が動きを制限するから攻撃メインで頼む。
アネットは見える範囲で敵の座標を教えてくれ。こいつさっきから物陰に隠れて捉えにくいんだ」
「は、はい! 私頑張る!」
「任せて下さいデス!」
スナイパーグマが建物の影を移動するコルグイスを牽制しつつファイターグマの方へ誘導する。
「きたきた! 格闘得意って性能を全然生かせてない私がいきますよ!」
コルグイスの爪を受け流し腹部に腰の入ったパンチを繰り出す。
バチィーーンと肉を叩いた音がしてコルグイスが口から唾液のような物を吹き出す。
「効いてる効いてる!」
連続で腹部と頭部にパンチを撃ち込む。苦しそうなコルグイスが爪を振るが後ろに下がって避け一歩踏み込む強烈なストレートを顔面に叩き込む。
一瞬のけ反るコルグイスだが背中の筋肉をバネのように使い状態を起こすとファイターグマの右腕に噛みつく。
待機していたスナイパーグマがコルグイスの足を数発撃ち痛みで顎が緩んだところをファイターグマが左手で横から殴り地面に倒すがコルグイスはすぐに四つ足で走り影に隠れる。
「攻撃は通るがタフだな。寧音、右腕は動くか?」
「表面に穴が空いたけどなんとか大丈夫。でも気をつけて、歯が鋭くて装甲すぐに破られるから」
「ああ、あいつをとっとと倒そうぜ!」
2体のクマがコルグイスを追いかけながら攻防を広げる。
スナイパーグマが放つマシンガンを避け壁を蹴り鋭い爪で襲ってくる。かわすがマシンガンが引っ掛けられ手から剥ぎ取られる。
姿勢を低くし飛びかかる姿勢になるコルグイスを横から飛び込んできたファイターグマがサッカーボールを蹴るようにコルグイスの頭を蹴り地面にひっくり返す。
ダメージが大きかったようで起き上がろうとするがフラフラしている。
コルグイスの肩から緑色の血が吹き出し転がる。
「やっと当たったデス!」
アネットの嬉しそうな声が聞こえてくる。
その間にも左足、腹部に銃弾をヒットさせコルグイスにダメージを与える。
その隙にスナイパーグマとファイターグマがマシンガンでコルグイスに銃弾を浴びせていく。
辺りが緑色に染まり動かなくなるコルグイス。
「殺ったのかな?」
近付こうとするファイアーグマを制止してスナイパーグマが前に出る。
コルグイス跳ね起きると緑色の血を振り撒きながら右の爪を振るうとスナイパーグマの胸部に突き立てられる。
左手の爪を刺そうとするのを右手で受け止め。更に噛みついてこようとするのを左手で顔を抑え制止する。
胸部に刺さる爪がゆっくりと傷口を広げていく。
「良いもの持ってるじゃんかよ。寧音こいつの左腕落とせるか」
「わ、分かった。ま、待ってて」
ファイターグマがチェーンソーを持ってくるのを確認するとスナイパーグマがコルグイスの背中に左手を回し抱き寄せる。抑えがなくなったことで右肩を噛まれるが構わずきつく抱き締め押さえつける。
コルグイスの無防備になった左肩を背中からチェーンソーの刃が入れられる。暴れるがスナイパーグマががっちり抑え込む。
回転に合わせ派手に吹き上がる緑色の血を浴びながらファイターグマが刃を進めると骨に当たり止まる。
「脇からもう一度切れ!」
瑠璃に言われ脇から刃を入れ骨に当たるまで刃を進める。
「上出来だ! そのまま回してろ!」
スナイパーグマがコルグイスの左腕を引っ張り引き千切ろうとするのに合わせ脇からチェーンソーの刃が進む。
やがてクマ2体と大地を緑色に染めながら左手が千切られる。
スナイパーグマが千切った腕の肩側を持つと地面に転がり苦しむコルグイスの頭にゴルフのスイングをするように振り抜く。
コルグイスの鋭い爪が頭蓋骨を砕き突き刺さる。
グッタリと動かなくなるコルグイス。
〈生体反応消失。コルグイス討伐です〉
港の声が瑠璃たちの勝利を知らせてくれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます