新しい ツレヅレグサ
オレンジ
第1話 穴の底
深い穴の底のことは、ずっと前から知っている。
知っているがゆえに、またあの底に降りなければならないのかと、わたしは今おののいている。
前は、初めて降りた。
今度は、二回目か。
行く必要はない。それはわかっている。
回避は可能なのだ。それもわかっている。
ただ、ひとつわたしをおびやかす、小さなケーキの欠片があるのだ。
そんなの本当に小さなケーキの欠片だと、食べてしまえと言ってくれる、別の作用に身を委ねる。
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