Dice-1#:勝ハ@は/C§「に


【159:555411】

【068:855300】


 そんな詮無い思考は置き去りにされ、いよいよ試合は淡々と始まりそうであり。


ボウルの乗った腰のくらいの高さの台の上に、「僕用」と思しき青色のサイコロが無造作に置かれていた。摘まみ上げてみると、2cm角くらいの、材質はやや透明度のあるアクリル製だろうか。軽いし何かこれに命運を託すには心許ないが。


 とは言え、目覚めてからの全てにおいて現実感が希薄であるからして、まあ感情の動きは自分でも驚くほど無い。これを振り入れる。ただそれだけしか無いようであれば、やるしかないのか。


 目の前でずっとこちらを睥睨してくる茶髪ショートの眼鏡長身女性……灰色のパンツスーツがこの上なく決まってはいて、ひと目、賢そう……先ほど僕に向けて放たれた謎の言葉は何なのかは結局分からずじまいだったが、何となくの「強敵」感はある。いやあくまで僕の中では。


<そそそれでは、Bグループの皆さんッ!! 『投擲』を始めてくださいねッ!!>


 主催者の声はまたしても上ずり気味だが。言われるがままに僕を含めた対局者一同は、気合いを入れて、というほどでも無く、まあ勢いよく投げ入れようにもその先は直径5cmくらいの「筒」であるがゆえ、極めてソフトに、そこに転がし入れていくのであった。


 彼我の出目は……ッ!?


 相手【4】……に対し僕は【0】……ぐっ、初っ端から叩かれたか……痛いがまあしょうがないとしか言えない。


「……」


 この上なく事務作業的に対局は続いていく。次の2投目、しかしここは上回っておきたい……みたいな、自分の中でやる気のようなものが喚起させられているのが逆に驚きだが。


 しかし。


 相手【5】……自分【0】……嘘だろ? ここまでの偏り……確率的に無いとは全然言えないものの……


 これで早くも【10】対【1】。追い込まれるところまで追い込まれた格好だ。ぐうう……もし次も相手に上回られたら。あっさりそこで試合終了。僕に「1000万」の負債がのしかかってくる寸法になる。いや1000万って……いや、1000万ってあらためて考えてみると相当な額だぞ……とてもじゃないが、とてもじゃないが……僕の、僕のこの身……この身では……払えそうも無い。って言うか「僕の身」って具体的には何だ? 記憶……記憶が急に定まらなく……なんだ? 僕は働いているのか? それとも学生か? なんだ? はっきりしない。なんだこのかんかく……


 視界が急に左右から狭まってくるように思えた。相手女史の肩口辺りを曖昧に凝視したまま、僕は眩暈に似た覚束ない感覚にさくりと囚われていくようにいしきがぶんさんしていきそのま


…………


木々を揺らし一陣の風が急に身体の右方向から吹き付けて来るように感じられた。

星々はあくまで天上から冷たい光を伴って僕のつむじでも覗き下ろしているように。

さらりと頬ヲ撫デル風、密に熱を帯びタかのように僕に青イ葉の香りを運

んデ来る……運ブ、運ブ、運ブは運ブは何の音? 春雷ニ

にたごうおんガ

気配を消しテモ消しテモ光

をまぶたに切り刻ム……刻む、

つきのひかりを反射シテ。刻む時……明

けガタマデニハ、帰れるサ……帰ろ、帰ろ、暗いに気つけてさあ帰




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