Dice-11:対局は/漫然に
「いや、ちょっと落ち着いてくれって相棒。うやむやながら多角的に考えてみないとな、とかうっすら思っただけで俺もナニがあるのかは
僕のただならない様子に、アオナギがささくれ立ったうすら長い指を曲げ伸ばしつつ、どうどうと宥めに入るが。そんな気遣いめいたことをされるとは……よっぽど僕の様子が尋常では無かったのだろうか。
確かに、「人生」とか悟り考えたりする場には似つかわしくは無いか。何でか分からないけど、ちょっと思わぬ高さでうなり起こった波濤は鎮めて、僕は一度、胸式→腹式と大袈裟なほどに呼吸を入れ込んで落ち着こうとしてみる。
そんな中。
<んそれではぁぁぁッ!! 七時になりましたので、『第一局』を始めちゃったいと思いますゆえ!! 174名の『対局者』の皆さんなので、『87試合』を行うわけなのですが、『29組かける3回』のグループに分けてですね、ま、さくりとやっちゃおうと思います>
主催者の顔が前方スクリーンに大写しになるや、そのような、やはり流暢に過ぎる説明が為されて来た。その瓶底眼鏡の奥に歪んで見える小さな目も、何と言うか極限まで歪めているんじゃないか、くらいの愉悦だか何らかの薄ら気持ち悪い様相を呈して来ている。そのテンションの高さが若干イラつくが。
「
アオナギが長顎をしゃくりつつそう言ってきた通り、スクリーンには「3つ」のグループ……「A」「B」「C」と冠されている……に分割されたまたも数字の羅列……番号がいやがらせのように見づらく密に配置されていた。対局者の向かって左側が「赤字」、右側が「青字」になっていて分かりやすく配慮したようだが、かえって目がちかちかする配色だ。それすらこちらをざわつかせるため? いやいや、深読みしたところで詮無い。集中しよう。
A→B→Cの順でそれぞれ29組の「試合」は同時に行われるようだ。先ほど登場した「シューター・ダイスボウル」なる直径30cmほどの「透明ドーム」の半球部分のその中央に、「一」から「二十九」の札がご丁寧に突き刺さっている。「ボウル」の並びはホールの縦……長辺に沿って10-9-10の三列となっていて、それらの間隔は結構取られているので、例えばそばまで行って「観戦」することは出来そう。見てどうなるか、はまた別の話だが。
<ご自分の!! 『ボウル』の所まで御移動願います!! 既にそこに『
だんだんと主催者の興奮は増していってるが、対局者たる我々のテンションはいまだ低いというか、得体が知れなさ過ぎてどう振る舞っていいかそれすら分からない。各々言われるがままに指定された「ボウル」の傍らまで向かうと、そこに「設置」というよりはただ置かれていただけに思えるサイコロを掌に乗せて漫然と眺めたりしている。
アオナギと連れ立って、スクリーンからはいちばん離れたホールの最うしろにて、列最後尾の3つのボウルを遠巻きに眺めるような場所へと移動した。
始まる……のか。いよいよ。いよいよと言いつつ成り行きの上の惰性流され感の方が強いので何とも妙な気分だ。
とりあえずは、「見」……本当に見るだけのことになってしまうかもだけれど。
僕らが着目している「試合」は、赤【070:855111】VS青【138:664311】。
赤は大砲【8】が一門、対して青はやや威力は劣るものの【6】の二連を有している。赤の防御が【1】3つとやや薄いように感じるが、それがどこまで影響するかは分からないし、ランダムと言ってしまえばそれまで。
どうなる……ッ!! とかちょっと身を入れて観ていたら、
【070:8-5-8】(10)
【138:1-3-3】(×)
うわ、三投であっさり決着……しかも完封。【8】が二回出てそれが相手の薄いところに刺さるという、正に「運」……青は【6】を出してても押し切られていただろう。
うーん、やっぱり【8】【9】持ちが何だかんだここ一発の「勝率」は高いんじゃあないだろうか……ちらと自分の「札」……【855300】を下目づかいで確認しながら、そんな根拠の無さげなことを考えて落ち着こうとしている僕がいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます