第18話
ゲーム内時間で翌日、マーレは別件があるとのことだったので私とフッカだけでガチャを引くことになった。
指定された時間よりも大分はやく待ち合わせ場所の斡旋所内の喫茶スペースについた。
喫茶と名はついているけれどもナニかのステーキを食べていたり、昼間からお酒を飲んで騒いでいるプレイヤーもいるからどちらかというと酒場といった方がよさそうである。
「「ゔぅ~…。」
私の左右に立っていた双子が同時にうめき声をあげた。
昨日から双子をそのまま出していたが人の多い場所が嫌いなのかな、顔色などは変化ないが二人とも少し不機嫌そうである。
双子のために果物ジュースと軽くつまめる何品かを適当に注文すると私たちは喫茶スペースで空いている席に座って待つことにした。
「ゔー、…ごぽごぽ。」
こら、ストローでブクブクしないの(ファンタジー世界にストローとはこれ以下に)。
アンをたしなめると私は暇つぶしがてら動画サイトを立ち上げる。
見るのは、『TWO』内でテイマーのプレイ動画だ。
この動画チャンネルに出てくる従魔の一匹であるネコ型のモンスターがお毛毛をふわふわさせながら戦う様がとっても愛くるしいのだ。
先程上がった動画はこのネコちゃんのために、ご主人様がおもちゃをこしらえたがネコちゃんは無関心で勝手にモンスターに襲い掛かっていっていた。
ああ、ネコはいい。
気まぐれでモフモフしてて、肉球が付いていてモフモフで、吸うとさぞかし飛んでしまうのだろうなぁ…………
「もしもーし、お姉ちゃん聞こえてる?」
……ハっ、
いけない。私としたことが猫吸いを想像してトリップしていた。
「ハー、やっと気が付いた。
も~、集合時間になっても連絡くれないし見つけたら見つけたでなんか話しずらいし。」
時計を確認すると。まずい集合時間から30分も遅れている。
アンとウンはすでに注文したものをすべて平らげて手持ち無沙汰そうにこちらを見ている。
よくよく見ると周りに座ったプレイヤーと住人は私から少し離れて座るようにしているし、こちらの動きを確認するようにチラチラと盗み見られていたようだ。
途端に私は恥ずかしさのあまり顔が熱くなり背中から嫌な汗が出るのを感じた。
ええい。こんなところまで再現しなくてよいのだ『TWO』の制作陣め。
この場所から一刻も早く消えたい。
「…行こう。」
手早くお金を支払うと私たちは足早に喫茶スペースを抜けるのであった。
双子と私たちは斡旋所内の階段を下りて地下に向かう。
地下とは言ってもアンとウンを見つけたあの屋敷の隠し地下室とは打って変わって明るく掃除の行き届いた場所だ。
一つ文句があるとすれば下る階段や廊下のあちらこちらでプレイヤー力なく座り込んでいることだけだろう。
「私たちガチャガチャをやりに来たんだよね?
…この先には、何があるの?」
生唾をごくりと飲み込みながら私はフッカに尋ねた
「ガチャガチャだよ。当り前じゃない。
ここにはそれ以外になにもないし、どうしてそんなことを聞くの?」
私は無言で座り込んでいるプレイヤーを指さした。
「ああ、アレね。
う~ん、まあ一言でいえばガチャで敗北しちゃった人たちっていうのが一番妥当な表現かな」
ガチャで敗北とは、
まさかこのゲームで言うガチャガチャとは怪物の名前なのか。
「いやいや。ガチャガチャはガチャガチャだよ。
そうだね~。ガチャガチャって自分が欲しいものが必ず出るわけではないじゃん?
だけど人によっては欲しいものが出るまでクエストを周回したりしてガチャガチャを回し続ける人もいるの。」
う~ん、雨が降るまで雨ごいをするって感じ?
「その例えは微妙だけど自分なりに分かってくれればいい。
でもここのガチャガチャは青天井、なんどやっても当たりが出ないこともあるの。
そうやって爆死した成れの果てがアレってわけ。」
死屍累々とプレイヤーが通路と階段に転がっている理由が分かったところでようやくお目当ての場所についたらしい。
目の前には全体がほぼ金色で覆われたスロットとガチャガチャを足したよう機械が鎮座していた。
いや悪趣味だな。
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