第2話
身体を失ってから、食事も排泄も睡眠も必要なくなった。
時間もない。
地縛霊の様にこの世界に取り残されてただ漂うように現れたい時に行きたいところに現れる。
生活している人々や目に見える死者との関係などは相変わらず続いている。
しかし、私を確認できる人はいない。
存在していた事実すら消えてしまった様に、何も変わらずに過ぎ去る世界を外から眺めるだけの存在になってしまった。
移動をするための手段として時間は用いることもできた。
空気中を海の中の様に泳ぐかの様に移動する。
ある高さまで行くとそこから上は海面の様に途切れている。
そこから先がかつてあったあの世。
飛び出そうとしてもたどり着けない。
海と陸の境目の様に、
空気は何もない場ではなく、見えない層で覆われたエネルギーの塊だったと初めて知った。
その空気中を移動する際に消費されるエネルギーの塊が時間となって表れていた。
しかし、私の身体はなくなり、老いることもない、死ぬこともできない。
こうなれば時間の価値はあってない様なもの。
生きることと死ぬことの狭間で生き物でも化け物ともつかないただの観察者としての自分の意思と思考だけが自分を感じることができる唯一の方法となった。
いっそ消えて無くなりたいと願うほど無力感に打ちひしがれる。
誰かに見つけてもらいたい。
そんな思いだけが残っていた。
思えば、これは私が私を無視し続けてきた結果なのだと思い始めた。
消えてなくなりたい、死んでしまいたい、生まれてこなければよかった。
そんな思いが結実してしまったのか。
こんなことになるなら望まなければよかった。
それでも、元には戻らない。
ただ宙に漂う空気の様に誰にも見つからずに、触れ合うことも許されず、私は世界からいなくなってしまった。
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