19 聖女さん、ファンガール
「ほう、後世にそういう風に伝わっておったか。悪くない気分じゃのう」
そう言って胸を張ってご満悦にドヤ顔を浮かべるレリアさん。
うん、この人はそうやってドヤれるだけのお方だ。
「現代魔術の基礎、ね。そりゃすげえな」
「勿論それだけじゃないよ。なんでも当時レリアさんが使っていた魔術の多くは他の人に説明しても理解してもらえない程に難解な物が多かったらしくてね、レリアさんが残した術式理論は未だに形にできていない……というか理論が正しい事を証明できていないんだ。でもそういう魔術を使っていた事自体は間違いがない訳だから、通称オルフィル理論を証明する事は私達研究者の一つの課題となっている位で──」
「お、おう、分かった分かったすげえんだな、うん」
いや、なんか話遮られたけど、もっと言いたい事が……と、というか!
「そ、そうだ。ねえ誰か色紙とサインペンとか持ってない!? 折角だからサイン! サイン貰わないと!」
「すげえ、大好物目にした子供みてえに目ぇキラキラさせてやがる……俺はねえけど……二人は……持ってなさそうだな。というか持ってこねえよそんなもん」
「だ、だよねぇ……くそぅ! 依頼先でとんでもない人と出くわすケースを考えてちゃんと持ってくれば良かった! 私の馬鹿ァッ!」
「いやそんなもん想定してこんな所に持ち込む方が馬鹿だろ……」
どこか呆れたように溜息を吐くステラ。
「いやーそういう事なら私馬鹿でもいいかな」
「……シルヴィもそうだけど段々各々変な所見えてくるよなぁ。まあいいけどさ」
そう呟いたステラは一拍空けてからレリアさんに言う。
「ま、とにかく自己紹介も終わった事だしそろそろ話始めようぜ」
「そ、そうだ! 未解明のままこの時代に残ってる術式の話とか聞きたい事が山程──」
「いやそうじゃねえだろ……ああこれアレだ。俺がしっかりしないといけない奴だ」
「お主も大変じゃの」
「いや、状況変われば立場変わるかもしんねえからな。今度俺がおかしい時とかは助けてもらう」
「成程いいチームワークじゃの」
「そりゃどうも」
そしてステラは一拍空けてから言う。
「で、アンタは確か世界のバランスがおかしくなってるみてえな事を言ってたな。その事について現時点で分かっている事を全部教えてくれ。こっちも持ってる情報は全部出す。情報の擦り合わせだ」
「成程……じゃがまあワシはあくまで直感でそう感じ取って魔術でなんか便宜上バランスとしか言えないような何かがおかしくなってね? ってのが分かってるだけじゃからの そう、なんかおかしくなってね? っていうふわふわした言葉でしか伝えられん情報しか持っとらん。寧ろ事の解決の過程でその詳細を掴んでいく必要があった訳じゃ」
「……つまり何も言えるような事は殆どねえと」
「まあそうなるの、申し訳ないが……じゃが」
「じゃが?」
「これでもそこのワシのファンが言った通り、ワシはそこそこ名が知れた魔術師での、お主らの抱えている問題に対しては何かしらのアドバイスを送れるかもしれん……もしかすればそこからワシが感じたバランスの話にも繋がるかもしれんしの。一回話してみい」
「……そうするか」
「ちょっと待って。レリアさん全然そこそこなんてレベルじゃないよ!?」
だからテンション上がってるんだよね!
多分ステラも後ろで控えてる二人もどの位ヤバい人かってのを正確には分かっていないと思うんだよね。
私の知り合いで誰か分かる人居るかな?
……そうだ、ルカだ。
よし今度会った時、私レリアさんの幽霊と会って話したんだよって自慢しよ。
マウント取っちゃお。
いえーい!
「アンナちょっと静かに」
「むぐぐ!」
ステラに口を塞がれる。
酷い!
「で、どこから話すか」
そしてステラは一拍空けてからこれまでの事をレリアさんに話し始めたのだった。
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