46 聖女さん、四人揃ったら無敵+a 上

 部屋の中が黒く染まったのとほぼ同時に、その上から更に薄い結界が張られたのが分かった。

 ……他の三人が何かしたわけでも無さそうなので、多分シズクだ。


 ……なるほど、これなら音で初動を掴みやすい。

 そして今の機動力なら。


「……行ける」


 影そのものも、そこから放たれる魔術も。

 ある程度余裕を持って躱せる。


 他の三人もルカから向こうの戦い方を聞いていたのか、軽く攻撃を躱せている。

 軽く躱せるだけの力が今の私達にはある!


 唯一シズクだけが自分の強化魔術一本だけで出力で劣る形になるから心配ではあったけど……僅かに視線をシズクの方にも向けるけど、普通に防ぐか躱すかしている。


 そもそも今は五人だ。

 相変わらず私への攻撃は少ないけれど、それを考慮しても一人当たりに飛んでくる攻撃は随分と薄くなる。


「なるほど、聞いてた通り厄介な攻撃だな! だけどこの程度なら!」


 ステラが最低限の動きで距離を離して攻撃を躱した直後、再び距離を詰めて蹴りで男の腕を圧し折った。

 そしてその隙を突くように、一拍遅れてミカも再び距離を詰めて男に拳を叩き込む。

 そこから再び二対一の殴り合いに持ち込んでいた。


 ……行ける!

 此処に私も加勢すればもっと……ってちょっと待って!


「……うわ」


 思わず変な声が出た。

 ステラに折られて垂れ下がっていた男の片腕が、まるで骨が短期間で繋がったかのように動き始める。

 ……え、ちょっと待って。なにあれ。マジでどうなってんの!?


 ……だけどそれに動揺しているのは私だけみたいで。

 すれ違ったシルヴィも特に反応を見せず、前衛の二人も、初めからあの男が再生するのを知っているように攻撃の手を緩めない。


 ……ああそうか、ルカが向こうにそういう力がある事を掴んで皆に伝えたんだ。


 って、ちょっと待った。

 それならこんな奴どうやって倒せば……ッ。


 と、そこで先程のミカの言葉が脳裏を過る。


『分かってます。私が今回の作戦の要ですから』


 そうだ、ステラ達から聞いた話だとミカはエナジードレインが使える。

 例え相手に物理的なダメージを与えられなくても、内側から戦闘不能に追い込むことができるんだ!

 しかも可能なら取りたくない手段とは違う形で倒す事が出来る。


 ……より一層気は楽になった。


 楽になって、思考がよりクリアになって、やるべき事がはっきり見えてくる。


「反撃開始だ!」


 言いながら全速力で男の背後に周り込んで、脇腹にフックを叩き込んだ。


 やる事は至ってシンプル。


 私とステラとミカの三人で袋叩きにする。

 傷は治されても動きは止められるし、ミカが攻撃を叩き込めばそれだけ実質的にダメージが入る。

 そのサポートをシルヴィとシズクにやって貰う。


 そうやって……力と数の暴力でボコボコにする!

 今ならそれができる!



 ……そうすれば、私達は勝てる。

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