28 聖女さん達、コンビネーションアタック

 攻撃の速度とかはさっきのニット帽の男とかと変わらない。

 違うのは手数。

 同等程度の連中を大勢この場に動員してきた!


「ベルナール!」


「分かってる!」


 私は瞬時に通路を塞ぐように結界を張る。

 ルカも結界は張れるけど……流石にこういうのは私が専門だ。

 相談の一つもなく、役割分担は出来ている。


 予め不意打ちとかに備えて、高強度の結界を一回分、いつでも張れるようにスタンバってた。

 そういうそう簡単には破られない奴を。


 次の瞬間、双方の結界にあらゆる魔術攻撃が連続で着弾し続ける。

 轟音が鳴り響く。

 ……だけど届いてくるのはそういう音だけ。


 ……そもそも、私の結界に単騎で当たり前のようにヒビを入れてきたルカが化物染みているだけなんだ。

 本来私の結界は……ドラゴンの放つ無数の攻撃でも耐えきれるだけの強度はあるんだから。


 そして次の瞬間、ルカは私の結界に手を触れる。

 その時点でやりたい事は分かった。

 そしてルカの方も、多分私が分かる前提で動いているんだろう。


 何を言う訳でもなく、勝手に術式を展開する。


 今、言ってしまえば私の結界で敵の射線だけでなくルカの射線も遮ってる。

 これではルカがやれる事も大きく制限が掛かってしまう訳だけど……それを解決する手段が一つ。


 私の結界を術式を発動させる媒体にする。


 だがそれは自分以外の結界で行うのは至難の業だ。

 結界にはそういうのを防ぐ為の効力も付与されているから。

 そうじゃなきゃ相手が張った結界に触れて術式を付与して、実質結界を貫通して攻撃とかも出来ちゃう訳だからね。

 ……ある程度。大なり小なり他者の術式の侵食を阻むセキュリティが結界には組み込まれているんだ。


 そのセキュリティを、ルカの術式に限定して解除する。


 結果。


「ぶっ放しちゃって!」


「了解」


 私の結界に紫色の魔法陣が展開。

 そしてあの山で接近してきた私に放ってきたように、黒い弾丸を雨の様に射出する。

 それで……片側からの攻撃は止んだ。

 一網打尽にした。


「……一応言っておくが殺すような攻撃はしてないぞ。気絶させただけだ」


「配慮どうも!」


 言いながら私も遅れて自分の結界に手を触れる。

 発動させるのは風属性の魔術。


 発動させるのは単純な突風。

 それで十分だ。


 ……今の攻撃の雨で、一人一人の戦闘能力が決して高くない事は分かったし。

 そもそも、強風は何もしなくても暴力だ。


 ある一定の風速を超えれば、並みの魔術師では身動きが取れなくなる。

 ある一定の風速を超えれば、並みの魔術師では吹き飛ばされる。

 ある一定の風速を超えれば、並みの魔術師を蹂躙できる。


 そういう風速を人工的に作り出し、逃げ場の無い通路にぶっ放す。


 これをやれば、相手の実力が並みならば……終わった後は嵐が去った後の様に静かになる。


 結果。


「止んだね、向こうの攻撃」


 この通路には私達を除くと、並みの魔術師しかいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る