22 聖女さん達、一般人ではないポンコツと邂逅する

 目を覚ましたのは私が蹴り飛ばしたニット帽を被った私達と同年代程の男。

 一応警戒する私達に対し、目を覚ました私が蹴りを入れたニット帽の男は体を起こして言う。


「いやー良い蹴りだ。一撃で意識ぶっとんでたわ……マジで助かった」


 そう言って男は心底安堵するように深い息を吐く。

 ……攻撃されて。意識を飛ばされて。それで助かった。

 ……つまり。


「てことはやっぱり操られていた感じで正解みたいね」


「早急な答え合わせが出来て助かる」


「え、何? 結構釈明大変かなって思ったんだけど既に察してた感じか……まあ、此処に飛び込んでくるような奴らならその位出来てもおかしくないか」


 どこか納得したように男はそう言ってから、ゆっくりと立ち上がる。

 無茶苦茶フラフラだけど。


「……で、なんか聞きたい事あったりするか?」


「え?」


「え、じゃねえよ。多分だけどお前らは別に偶然此処に迷い込みましたって感じじゃねえだろ。明確に目的があって此処に来ていて、そして多分此処の連中の敵だ。だったら情報を持っているかもしれない俺に何か聞く事とかあるんじゃねえかなって思って」


「……えらくこの状況に順応しているな。お前、おそらくだがただの一般人ではないだろう」


「……確かに。普通の人ならもうちょっと違う反応しそう。ちょっと混乱気味だったりとか」


 にも関わらず、目の前の男は落ち着いて冷静にこの状況で最も適切だと思われる行動をしている。

 ……まず間違いなく一般人じゃない。

 まあ……昔の時点のしーちゃんも同じことができたから、なんかしーちゃんも普通じゃないって言ってるみたいで嫌だけど。

 ……いや、しーちゃん普通カテゴリに分類するのはなんか違う気がするよ。

 失礼なの承知で言うけど。


 ……ま、まさかとは思うけど、この一件にも巻き込まれたりしてないよね?


 ま、してないとは思うけど、うん。

 そういう事にしておこう。


 ……そんな事より、今の事に意識を向けよう。


 そして私達の言葉を受けて男は言う。


「いや、俺は一般人に毛が生えた程度だし……だからこうして操られる羽目になった訳で」


「でも一応一般人じゃないって感じだよね」


「あーまあそうなんだけど。確かにそうか……じゃあ俺は一般人じゃないって事で」


 そう言って少しドヤ顔を浮かべる男。

 なんだコイツ。


「で、まあ一般人じゃない俺はボスから良く言われてる訳だ。報告相談連絡、ホウレンソウはしっかりやれと。まずはそこからで良いからしっかりやっていこうと」


「急に一般人感出て来たね」


「一般企業の新入社員感が凄いな。しかも結構ポンコツな感じな」


「誰がポンコツじゃい! ……って言いたいけどまあ実際その通りだからこうして捕操られてた訳なんだよな。他の先輩方やボスだったらこんな事にはなってねえ。そんな訳でポンコツでーす。クソ雑魚でーす」


 なんか妙に高いテンションで自虐しだしたよ!


 それを目にして私は小声でルカに聞く。


「ねぇこれフォローした方が良いと思う?」


「知らん俺に聞くな」


 と、そんなやり取りをしている内に男は自然と立ち直ったようで、少し真面目な表情で言う。


「それでも。こんな無能な俺でもこの目で見てきた事を誰かに報告して連絡して相談する位ならできる。そんでお前らは味方だと俺は思うんだ。だから伝え相談するんだよ……目的は同じだろ多分俺達は」


 そして、男は目的を言う。


「お前らも誘拐された子供を助けようと思って行動している。違うか?」


 私達と同じ目的を。

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