54 聖女さん達、四人パーティー

 さて、色々きな臭い話になってきたものの、一応あの場での憶測に憶測を重ねる話は一旦終いとなって。

 依頼品の納品と報酬の受け取りという本来の流れも終えていた私達はギルドを後にする事にした。


「えーっと、なんか流れでそのまま一緒に出て来たけど、シズクは残ってなくて良かったの?」


 シズクとは元々納品が終わった後で話す手筈になっていたから一緒に違和感なく出て来たけど……冷静に考えるとちょっと待てって感じになる。


「ほら、その……言いにくいけど謹慎とかクビとかってのは確定してないんだよね? なら今日って普通に仕事じゃないの?」


「ああ、ボク実は今日午前上がりだったんすよ」


「でももう思いっきり午後ですよね? どうしてギルドに居たんですか?」


「あーそれなんすけどね……個人的に皆さんと少し話したいなーって思って。まあ半分位はもう話しちゃった気がするっすけど」


「まあお互い元聖女ってのがはっきりしたからな。俺らの場合話して置きたい事っていうか確認しておきたい事ってなると、その話になるだろうし」


「まあそういう事っす。いやービビったっすよ。もしかしたらって思ったらマジだったんすから」


 いやもう、本当にね。

 まあもう聖女だった事にというより、聖女追放され過ぎっていう方にビビってる感じあるんだけども。


「それで、半分位は話したって事は、残り半分はまだって事だよね?」


「そうっすね……じゃあ、えーっと、色々と回りくどい話するのも面倒なんで単刀直入に」


 そしてシズクは一拍空けてから私達に言う。


「あの、もし謹慎とかクビになったらその間冒険者やろうと思ってるんで。その、もし良かったらって感じなんすけど、ボクをパーティーに入れてくれないっすか!?」


「あ、いいよ」


「あ、ありがとうっす……って、そ、即答!? え、えーっと、頼んでるボクが言うのも何なんすけど、もうちょっと悩んでも良いんじゃないっすか? 一緒に仕事していく仲間増やす訳っすから」


 その言葉にステラとシルヴィが答える。


「まあ最初からもし何かあったら声かけようって話してたからな」


「そうですね。なので大歓迎です」


「そ、そうだったんすか……や、優しいっすね……」


「いや、自分達の所為で立場危ういかもしれないって考えてて、私達しーらねってスタンス取り出したらヤバい奴でしょ」


「い、いや、三人はちゃんと依頼を受けるときにボクの事心配してくれたじゃないっすか。それでもボクが話を通した。それはもう普通にボクの責任なんで。別に放り出してもヤバくはないっすよ」


 シズクはそう言った後、少々慌てて言う。


「あ、でも、今はちょっと放り出さないでくれると助かるっすよ!」


「大丈夫大丈夫。そんな事しないから」


「そもそもシズクさんが凄い力を持ってるのは分かりますから。居てくれたら心強いですからね」


「冒険者って聞いた話じゃ大体三人か四人位でパーティー組むんだろ? シズクが居たら考えられる限り最強のパーティー結成って感じになるからな」


 そう、二人の言う通りだ。

 確かに声を掛ける切っ掛けは責任とかそういう事もない訳じゃない気がするけど、そもそもシズクの力は凄くて。

 もしもう一人誰かをパーティーに入れるならまず間違いなくシズクだって言える。

 実力的にも、境遇的にもね。


「そんな訳で、これからよろしく」


「あ、ありがとうございます! これからよろしくっす! ……まあクビとか謹慎になったらって話っすけど」


「いや、良くて謹慎って話だろ?」


「世の中諦めが肝心って事もありますよ」


「……現実逃避って奴っす。や、やめたくねー!」


「結構今の仕事愛着持ってるんだね」


「まあそれなりにっすけど」


 ……そういえば。


「それでちょっと聞いてみたかったんだけど、なんでシズクは受付嬢やってたの?」


「あ、確かにちょっと気になりますね」


「確かに。俺は副業みてえな感じだけど、アンナやシルヴィはいきなり本業冒険者だからな」


「あ、ステラさんは違うんすか?」


「ああ、俺近くの店でウェイトレスやっててよ。で、色々あって副業で冒険者始めたって訳だ」


「あーそうなんすか。ウェイトレスってなんか意外っすね」


「あ、そっか……意外か……まあそうだよな」


 ステラが落ち込んでる……マズい!

 私とシルヴィは瞬時にアイコンタクトを取って動き出す。


「あ、ほら! 私達みたいな力を持ってる人がウェイトレスやってるって意外って事ですよ。私達も最初はそう思いましたから」


「そ、そういう事か……」


 そうシルヴィがフォローをしている隙に、私はシズクの手を引いて引き寄せて、耳元で言う。


「……そういうのステラの地雷だから気を付けて」


「……あ、そ、そうっすね……なんとなく把握したっす」


 どうやら意図は伝わったらしく、シズクもシルヴィのフォローに乗っかる。


「そ、そういう事っす。ボクも最初冒険者やろうって思ってたんで」


「え? じゃあなんで受付嬢やる事にしたの?」


「そうっすね……最初は冒険者になろうって思って冒険者ギルドに行ったんすよ。そしたらなんか和気藹々と良い感じな雰囲気してて、なんか良いなーって思って。理由なんてそんなもんっすよ」


「なんか思った以上に普通の理由だった」


「就職動機に意外性求められても困るっすよ」


 ……確かに。


「いや、でもマジでパーティーに入れてくれてありがとうっす。実は今月の給料趣味とかに結構ぶっこんじゃってて貯金とかなかったし、職失うのは死活問題っすからね……」


 ……凄く現実的な悩み抱えてるよ。

 そしてその悩みを暴露した後、シズクは軽く咳払いしてから言う。


「まあそんな訳なんで、精一杯頑張るんで、これからよろしくっす!」


「よろしく」


「よろしくおねがいします」


「おう、よろしくな!」


 こうして、多分シズクは謹慎かクビになるので私達のパーティーに入る事になった。


 ……あの、ほんと謹慎程度で終わってくれるといいね。

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