27 聖女さん達、傍観
私達が新人受付嬢の今後を心配している最中、目の前では正統派ハーレムパーティーの皆さんの戦いが始まっていた。
「先手を取る。行くぞ!」
男の掛け声で各々が接近してくる飛竜に対して各々動き出す。
僧侶の女性が自分を含め四人に何かしらの魔術……多分強化とかそういう類いの魔術を掛ける。
それから戦士の男は剣から飛ぶ斬撃を。
狩人の女はおそらく魔術で威力と射程を底上げした矢を。
そして魔法使いの女は巨大な氷の礫を。
そんなそこそこ強力っぽい一撃を各々放つ。
それなりの速度で放たれたそれらの攻撃はドラゴンに着弾。
最もその程度の攻撃じゃ一撃で倒しきるような事は出来なくて、今度はドラゴンの反撃が放たれる。
大きく開けた口から放たれたのは巨大な炎の塊だ。
「エレーナ!」
戦士の男がそう叫ぶと、エレーナと呼ばれた僧侶の女性が手を正面に突き出す。
そして背後の私達に言った。
「大丈夫です。私が守りますからそこから動かないでください」
「あ、はい」
一応私も結界を張れる準備をしながら、とりあえずそう答えるしかなかった。
なんだろう……こう、どうすればいいんだろう。
一応シルヴィとステラに視線を向けると、二人共微妙な表情をしていた。
……いや、分かる。
そんな表情にもなっちゃうよ。
次の瞬間、目の前に張られた大きな結界がドラゴンの放った炎の塊を相殺する。
そして炎の塊を放った隙を突くように他の三人が再び遠距離攻撃を加え、そして今度は地上まで下りてきて爪などで直接攻撃を仕掛けてきたドラゴンに対し、攻撃を躱しながら的確にカウンターを入れていく。
そんな様を……私達三人は黙って見ていた。
いや、だってさぁ……動き辛くないこの状況。
見た感じドラゴン一体相手なら問題なく戦える実力があるのは間違いなくて、私達が手を出さなくても討伐できるんだろうから緊急性もなくて。
だとしたら……何もしないのが一番いい気がするんだ。
だってもし私達がこの人達の力を大きく上回る一撃でドラゴンをぶっ飛ばしたりしたらさ、態々助けに来てる人達に失礼と言うか……この人達にもプライドとかあるだろうし……。
うん、だから……私達が動いたらドラゴン一体位速攻で片付くけど、ここはこの人達の立場も考えて傍観してるべきかなーって思う。
……ってちょっと待って。
「……マジか」
「……ステラさんも気付きました? って事は多分アンナさんも……」
「うん、気付いてる」
こっちに近付いて来る大きな気配が複数あった。
複数……群。20頭程。
……目の前で正統派ハーレムパーティーの皆さんと激闘を繰り広げているレッドドラゴンと同じ気配のドラゴンが20頭。
そんなこの山のドラゴンの総力とも言えるような大群が、猛スピードでこちらへと向かってきていた。
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