第15話 母の恰好、私の恰好
私は母が好きではなかったけれど、母が授業参観にくるのは好きでした。
というのも母はよそのお母さんよりおしゃれで美人めだったから。
そしてよその子に対しての対応のいい母は、同級生にもウケがいいので、囁きあう声で母のいい話が聞こえてくるのが少し優越感を感じていられたから。
私より先に、母が教室に入ってきたのを確認した同級生が
「ピューレラちゃんのお母さんきたよ。いいなぁ美人だし綺麗な恰好している」
などと教えてくれる。母を好きじゃないくせに、そうやって言われる事は、まんざらでもない。
母は周りの友達のお母さんたちより、五歳くらい年上だった。
それなのに一番あか抜けていて、年齢が上なのを感じさせない母は、人に見られて恥ずかしくない母だった。
流行りの物にはすぐに手を出す母。
昭和のおばさんなのに、ピアス穴もあけて髪も茶髪。
と言ってもヤンキーっぽい感じではなく、主婦感の強い他のお母さんたちの間で嫌でも目立っていた。
これは私の勝手な見立てだが、他の子とお母さんたちも見比べていると、子どもがあまり構われてない身なりのあか抜けていない子のお母さんは綺麗であか抜けているのだ。
うちもそのタイプだったと思う。
私はあか抜けていない、だっさい子ども。
だけど母は人から注目されるあか抜けさ。
私の好みや着たい服を着れるわけもなく、母が選んだ母の好みの服を着せられるままになっていた私。
あか抜けた母の見立てなら、私もあか抜けるはずなのに、そうはならない。
母は私に小学生時代ずっと、オオカミカットをさせたように、自分はやらないくせに私には変ちくりんな恰好をさせた。
学校で同級生によく言われた私の恰好は
「パジャマみたい」
という評。
私が太っていた事もあるが、子ども服ではなく大人用の服を着せられる事が多かったのでブカブカだったのだ。
私がしたい恰好をすると、もちろんけなしまくる母。
もしかしたらこれも、毒親の特徴の一つだったのかもしれない。
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