第2話 愛想がない子
預ける人がいなかったからでしょうか。
母は男性とホテルで過ごす時に私を連れて行っていました。
ひどいと、当時飼っていたマルチーズの犬まで。
子連れだったからか、いかにものラブホというところではなく旅館のような感じのところやビジネスホテルのようなところでした。
そういったところに何度も行った記憶があるものの、そこで行われていたかもしれない行為については全く記憶がありません。
さすがに母も私を眠らせていたか、外で遊ばせていたのでしょうか。
人の顔、特に母と一緒にいる男性の顔は見ないようにしていたので顔の無い記憶しかありませんでしたが一人だけ、かすかに印象が残っている人がいます。
その人は確か、パチンコ店の店員でどこかの屋上で私を抱っこしていた、私にはその記憶だけが今も尚ずっと残っているのです。
抱っこされた嫌な感触とともに。
嫌がるどころか、不快な顔をするのも怒られると分かっていたので無表情で過ごした私。
けれどこの無表情も、大きくなるにつれて母から注意される私の態度の一つになりました。
母は愛想のいい子が大好きで、常日頃から私にもそうなるように言っていました。
はきはき喋り、笑い、ちょっとだけ頼るように甘える。
このちょっとだけ頼るように甘えるというのがポイントで、ガッツリ甘えられるとウザいけれど、程よく甘えられると良いようでした。
それが子どもとして可愛げのある態度だと母は思っていました。
分からないでもないです。
今の私だったら、そういう子が傍にきたらきっと可愛いと思うことでしょう。
けれど私は三歳、四歳の頃からすでに母親には甘えられないようになっていました。
甘えたいとも思いませんでした。
だから程よくだろうと、甘えた方が可愛げがあると言われても母になんて甘えたくないし甘え方も分からなかったのです。
「愛想よく」
というのも何だろうと思ました。
とても恥ずかしい事のようにも思いました。
時代劇で見かけるような、手もみをしながら少し腰を下げながらヘラヘラと相手におべっかを言う。
そういう事を求められているのだろうか?
小学生になっても「愛想よく」が良く分からなかった私はそんな事を考えていました。
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