「誰と付き合ってるの?」

 お弁当を食べ始める三人。食べている間に詳しい話をするため、麗華は口を開いた。


 男子達が麗華に告白した時、時間帯も場所もバラバラだったらしい。

 最初告白してきた男子に彼女は「考えさせて」と伝え、そのまま教室に戻り、放課後また呼び出されついて行くと、違う男子生徒からの告白だった。

 それで、その場も彼女は「考えさせて」と言って帰ったと、二人に簡単に話す。


「呼び出されたと思ったら、告白だったなんてぇ」

「つーか、どっちも考えさせてで終わるとか。どっちも好みじゃなかったわけ?」


 静空が箸を麗華に指しながら言う。


「人を指ささないでよぉ〜。しょうがないじゃん。私も頭が困惑してたのよぉ〜」


 悪びれなく言う麗華に、今度は麗羅が戸惑いの声を含みながら静かに問いかけた。


「でも、それって期待させちゃってるって事だよ。だったら早くどっちかに決めるか、振るかしないと相手が可哀想じゃん」

「なんでぇ、その選択肢しかないのぉ〜?」

「「えっ?」」


 麗華の疑問に、麗羅達は何度目かになる驚きの声を出す。


「いやいや、どっちかと付き合うか両方振るかの方法しかないと思うんだけど? それとも何、まさか二股するとか言わないでしょうね」

「そのまさかにしようかなぁって思ってぇ」


 二人はまた固まる。

 平然と言い放った麗華は、お弁当箱に入っていた卵焼きを口に含み「おいしぃ」とこぼす。


「今回話したのはぁ、それを二人に知って欲しかったからなんだよねぇ〜」


 二人は彼女の考えがまだ受け入れられていないのか、箸を持ったまま固まっている。その様子を「面白い顔だねぇ」と、笑いながら麗華は言った。


「い、いやいやいや! 何言ってんのさ麗華。そんなの許される訳ないじゃん!!」

「そうだよ麗華! それに、バレちゃったらどうするの!?」


 静空は全否定して、麗羅は今後について問いかけた。


「バレたらバレたで、その時考えればいいんじゃないかなぁ〜。それか、二人にそう話すとか!!」

「「ありえないから!!」」


 二人の言葉が重なり、屋上の青く広い空に困惑の声が響き渡った。


 ☆


 昼休みが終わり、話が中途半端になってしまった三人はとりあえず教室へと戻った。


 いつものように授業を終え、帰ろうとした時──


「あ、私これから彼氏と帰るからぁ〜」

「「えっ?」」


 麗華が鞄に教科書などを入れている時、麗羅と静空が一緒に帰ろうと近寄ったらそのように言われた。

 その事に二人は驚き、素っ頓狂な声を出す。


「当たり前じゃぁん。彼氏が出来たのにぃ〜、わざわざ一緒に帰る必要ないでしょう?」


 麗華は「じゃぁね」と、二人に手を振って教室を出て行ってしまった。


「まさか、本当に二股してないでしょうね……」

「結果は、聞いてないけど……。というか、いつの間に返事したの…………」


 二人は唖然としたまま、とりあえず帰るため教室を後にした。


 ☆


 そんな日から一週間くらい、麗華はほとんどの時間を男子と過ごす事になり、三人でお昼を食べる事はなくなった。


 麗羅は麗華と家で話す事はなく、すぐに彼女が部屋に戻ってしまううため、今どのような状況なのか麗羅は分かっていない。


 そのような日々が数日続いた。前ほど一緒にいる訳ではないが、麗華がどんどん悪い方向へと向かっていると二人は察していた。さすがにこのままほっとく訳にもいかないと思い、勇気を出して屋上に彼女を呼び出した。


「どうしたのぉ〜? 久しぶりじゃん」


 麗華の今の姿は前とあまり変わっていなかったが、成績は前より明らかに落ちており、授業もサボりがち。

 麗羅と静空は、そんな麗華の前に立ち口を開いた。


「麗華、最近どうしたの? 授業もサボってるし、テストだって真剣にやってないじゃん」


 静空は腕を組んでいい放つ。麗羅もそれにつられように口を開いた。


「それに、家では毎日スピーカーで電話してるみたいだし。それは全て男の声。でも、毎回違う人じゃん。部屋が隣だから聞こえるんだけど……。ねぇ、貴方は今、誰と付き合ってるの?」


 麗羅は胸に手を置き、不安げに問いかける。だが、麗華は二人の話を真面目に聞く気はなく、携帯を片手にいじりながらその場に立っていた。


「ちょっと、話聞きなさいよ!」


 静空が携帯を奪おうと手を伸ばすが、運動神経は教室内でかなり上位な麗華。スルッと簡単に避けてしまった。


「貴方達に関係あるぅ? 私がやりたいんだからいいじゃなぁい。それとも嫉妬? 私の彼氏は一人たりとも渡さないわよぉ〜?」

「一人たりともって、あんたまさか?!」

「えっ、どういう事?」


 麗華の言葉の意味を理解した麗羅は、目を見開き驚きの表情を浮かべた。だが、静空はなぜ驚いているのかわからず、不思議そうな表情を麗羅に向ける。


「やっぱりあんた…………。ねぇ、今。何人の人と付き合ってるの?!」

「ん〜、今は三人だったかな。いや、四人かなぁ〜」

「「はぁい!?!?」」


 麗華の言葉に驚き、麗羅と静空の声が響き渡った。

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