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「あっそう! じゃあいい! もういいわ! 私だって暇じゃないのよ。アンタにかまってばかりいられないのよ」
「構って、なんて一度も言ってない。主観的客観的一元的多元的相対的絶対的に見て、貴女の方が『かまってちゃん』だから」
「はぁ? 主観的一元的絶対的に考えたら、誰だってかまってちゃんが成立しちゃうじゃない。言葉選びが不適切! それでも作家なわけ? ゴロだけ合わせりゃいいってものじゃないのよ!」
「……うざ」
いつもの様に聖をやり込み、美紀は腹を立てて帰っていく。
これだけ見ても、美紀は強い人間だった。
勇次は美紀の後を追い、肩に手をかけた。
「待って、美紀」
「何よ!」
振り返った顔には怒りも満ちているが、その奥の瞳に力が無い。
美紀は部室棟の玄関を出ると立ち止り、二歩三歩下がって勇次の前に来た。
「演劇部……あいつ、毎日来て……」
美紀を抱きしめ、耳元で囁いた。
「うちに、おいで。俺が守るから」
いくら気丈であっても、中身は十代のか弱い女子。
美紀を守る事が、松樹勇次の支えにもなった。
ずっと不遇だと思っていた。
父は駄目で、母の過度なストレスは自分に向けられ、やりたい事も目指せない人生になっていた。
劉生の父は、今年から捜査一課長に任命されたらしい。最年少の捜査一課長であり、数々の表彰も受けている警察界のトップスター。
息子の有能さも、奥様会では有名なところらしい。
故に、母は勇次を警察から遠ざけた。
昔は違っていたのだが、結果的に、そうなった。
ただ、勇次は思うのだ。
何も、全国民を守れなくてもいい。そう息巻いてみても、結局は机上の空論であり、人は目に映る人間しか守れない。
美紀を抱いて、そう確信できた。
目の前にいる、彼女を守れれば、それでいい。
まずは、そこから始めるべきだと決心した。
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