10:インパクト重視のお客様

「いらっしゃいませ。……あ」

「いらっしゃいませ――あっ」


 りりん。軽やかに鳴ったドアベルに、店内にいたミオとクロスは反射的に決まり文句を述べようとする。

 だが、入店した人物に目を向けた二人はどちらも決まり文句である「お好きなお席へどうぞ」と続けられず、各々驚きの声を上げた。


「リンデールさん!」

「一週間ぶりじゃの、マスター、ミオ」


 ぱさり。目深に被っていた老竹色のフードを下ろし、リンデールは幼い顔に満面の笑みを浮かべる。


 小妖精エルフの一種、リンデール・ギリオン。身長一メートル前後で、ひょんなことからクロスを『謎を見透かす名探偵』と勘違いし謎解き依頼を持ち込んだ彼は、実年齢不明の村長である。


「リンデールさんにとっては一週間ぶりなんですね。異世界交差地点ここでは丁度一か月でした」

「おお、そうか。時の流れが随分と違うんじゃのう」


 うんうんと頷きながら、リンデールはカウンター席の真ん中に腰掛けた。髪色と同じ瑞々しいグリーンの瞳をクロスに向けた彼は「今日は改めて礼を言いに来たのじゃ」と告げる。


「退魔師を名乗っておったあの男、やはり詐欺師でのう。マスターが推理した通り、いんじけーたーのみのしりかげるを瘟鬼おんき検知器と偽って様々な国や世界で売り捌いておったようじゃ。奴さん、『この世界にはしりかげるがないのになんでバレたんだ』と首を傾げておったわ」

「そうでしたか……。冤罪を生み出さなくて良かったです」


 リンデールの話を聞いたクロスは息を吐く動作をした。瘟鬼おんき検知器に使用されていたのが指示薬インジケーター機能を持つシリカゲルであることはほぼ確定していたものの、退魔師を名乗る男が詐欺師かどうかまでは分からなかったのだ。この一か月の間、クロスは「もし僕の間違った見立てのせいで冤罪を生んでたらどうしよう」と心配し続けていた。


「――ねえ」


 安堵しているクロスに、サービスの水を用意していたミオが声を掛ける。


「あれ、返さなくていいの?」

「……あ、そうだ!」


 リンデールが来店したら絶対に返さなければと思っていたのに、安堵の気持ちが強すぎてすっかり抜けていた。

 ミオに礼を言ったクロスは<異世界対応金銭登録機キャッシュレジスター>――通称<異世界用レジ>から手のひら大の布袋を取り出すとリンデールに差し出した。


「リンデールさん、こんなにいただけません」

「何じゃ、まだ持っておったのか」


 突き返された謎解きの報酬ロロール国の金貨に、リンデールは眉根を寄せた。子供にしか見えない幼い顔立ちには信じられないと言いたげな表情が浮かんでいる。


「マスターのおかげで騙されずに済んだのじゃ。受け取ってくれんと儂の気が済まんよ」

「いえ、そういうわけには……。結果的には僕の推理もどきが正しかったみたいですが、あの時点では不確定な推論でした。明らかに分不相応です」

「結果として正しい推論だったのじゃから分不相応ではなかろうよ。そもそも儂は〝マスターの推論が正しいかどうか〟ではなく〝退魔師にどのような対応を取れば良いか〟という方針を示してもらった礼として報酬を支払ったのじゃ。たとえ推論が間違っていようがいまいが報酬には関係のない話じゃよ」

「しかし……」

「――いらっしゃいませ」

「あ、いらっしゃいませ!」


 どちらも譲らない議論は、新たな来店客が訪れたことによって一旦中断した。ただ、『笑顔のマーク』が書かれた持ち手付き木札を手に取ったクロスは「お好きなお席へどうぞ」と決まり文句を言いつつも、これ幸いとばかりに布袋をリンデールの前に置いた。一瞬の隙を突かれたリンデールは「むう……」と唸っている。


「あの……マスター」

「はい?」

「突然申し訳ないのですが……実は、折り入ってお話が……」


 入店したばかりの客――ショルダーバッグを持った人間種系の男が、おずおずと申し出る。


「ほう……」


 その言葉に、リンデールは笑みを浮かべながら呟いた。何やら楽しそうな気配がすると、確信したような表情だった。



  ✦✦



「申し遅れました。私は徒陸とりく迷宮めいきゅうのペンネームで活動している推理作家の端くれです」


 一般的なサイズの名刺をクロスに差し出しながら、入店客は自己紹介する。


 入店直後、マスターであるクロスに「折り入って話がある」と告げた彼は、特に目立ったところのない人間種系の男だった。短く切った髪と瞳の色は黒で、ミオと殆ど変わらない肌の色を持ち、オーバル型と呼ばれる楕円形の眼鏡を掛けた顔は三十代半ばに見える。身体は中肉中背で、猫背気味であることを除けば、良くも悪くもあまり印象に残らないタイプの容姿だ。


「徒陸……さん」


 男の名前を確認したクロスはカウンター越しに名刺を受け取った。「折り入って話がある」ものの秘密にするような内容ではないとのことで、カウンター席で話を聞くことになったのだ。徒陸と隣に座る先客リンデールのコーヒーを淹れているミオの表情に変化はないが、『推理作家』という職業を耳にしたリンデールはグリーンの目を輝かせながら事の成り行きを見守っている。


(――結菜ゆいなとクロウが使ってる文字だ)


 真っ白い紙に印字された『推理作家・徒陸迷宮』の文字は、クロスとミオが使用している言語であり、友人であるクロウと結菜の母国語でもある。どうやら徒陸は友人二人やミオが元居た世界か、もしくはそれに類する世界から来た人間のようだ。


「……店主のクロスです」


 どこか別の世界にいるだろう友人二人に想いを馳せたクロスは、けれどすぐに気持ちを切り替えると徒陸に尋ねた。


「あの、もしかして以前ご来店されたことがおありですか?」

「えっ? ええ……そうです。三か月ほど前、一度だけ……」


 顔を覚えられていたことに驚いた徒陸が答える。

 喫茶・ノードは客の入りが少ない喫茶店だ。加えて、店主であるクロスが該当の来店客が初来店か否かを覚える努力をしているとくれば、客の顔を覚えるのはそこまで難しいことではない。

 ただ、徒陸の場合は少し勝手が違っていた。――徒陸の容姿自体は印象に残らないタイプだが、来店時の様子が印象に残っていたのだ。


 あれはまだミオが従業員として働く前のことだ。夕暮れ時に来店した徒陸は店内の隅にあるテーブル席でブラックコーヒーを静かに飲んでいた。しかし、目の下には酷いクマがあり、その表情も随分と曇っていて、何か悩み事があるのは間違いなかった。

 もしかしたら、意図せず異世界転移した末、異世界交差地点に迷い込んだのかもしれない。もしもそうだとしたら、何か手伝えることはないか声を掛けたほうが良いのでは――。

 だが、クロスは徒陸に声を掛けなかった。――ある時突然、まるで天啓に導かれたかのようにメモを取り始めたのだ。その後、徒陸の表情は嘘のように明るくなり、きちんと会計を済ませて喫茶・ノードをあとにした。呆気に取られているクロスを一人残して。


「推理作家の方が一体どのようなご用件でしょうか……?」

「実は……マスターとこのお店をベースにした推理小説を、私が暮らしている世界で発行させていただきたいのです」

「えっ」


 用件を述べた徒陸に、クロスは驚きの声を上げた。――僕と喫茶・ノードをベースにした推理小説?


「――マスターが探偵の小説が出るのかの?」

「え、ええ……マスター本人ではなくスケルトンの探偵ですが、もしマスターにお許しいただければ……」


 目を爛々と輝かせたリンデールに、徒陸は圧倒されたように答えた。小妖精エルフの一種であるリンデールは身体こそ小さく外見も幼いが、片田舎の村長を務めているだけあって何か底知れぬ雰囲気を秘めているのだ。


「ええと、実は、初稿を持ってきておりまして。もしよろしければ一読いただいたのちご検討いただけませんか? 勿論モデル料はお支払いいたしますので……」


 そう言って、徒陸はショルダーバッグから紙の束を取り出した。右上部分を黒いクリップで留めたA4と呼ばれるサイズの紙束は分厚く、書かれた文字は手書きではなく印字だ。


「分かりました。しっかり読むと時間が掛かりそうなので軽めに読ませていただきます」


 原稿を受け取ったクロスは言葉通りぱらぱらと小説を読み始めた。コーヒーを提供し終えたミオも徒陸とクロスの許可を得て、クロスが読み終えた分を手渡してもらっている。

 一方、<翻訳トランスレーション>の魔法を習得していないリンデールは徒陸に「何故マスターをモデルにしようと思ったのか」と事情を尋ねていた。



 ――三か月前の徒陸は、それはもう困り果てていたらしい。喫茶・ノードに訪れる五年ほど前に推理作家としてデビューし勤めていた会社を辞めたものの、デビュー作以降に出した本はあまり売れず、デビュー当時から世話になっている編集者にも「今のままでは厳しい」と宣告されていたのだそうだ。出版社の新人賞だけでなくサイトに投稿された小説も書籍化されるご時世、新人作家は養鶏場で採れる卵のように次々生まれていく。ヒット作を生み出せない作家など出版業界にとっても読者にとっても不要な存在だ。


 ただでさえ作家として生計を立てるのが厳しい状態なのに、このままでは生計を立てるどころか作家であり続けることさえ難しくなる。

 焦った徒陸は担当編集者に「この日までに新作を書いて見せる」と期限を決めて約束したが、途中まで書いた話は肝心の探偵役がどうにも気に入らず、謎解きを考えることはおろか書き進めることすら出来ずに時間だけが過ぎていった。



 だが、そんな徒陸に機転が訪れる。――異世界交差地点に、突如迷い込んだのだ。



 原稿だけでなく専業作家人生終了までの秒読みが始まった徒陸の自律神経が大いに乱れ、まともに眠れない日々が一週間続いたある日、徒陸は元居た世界から異世界交差地点へと転移した。どうせ何も思い付かないのなら夢で見た内容を基に探偵役を作ってやると半ば自棄になって筆記用具を傍らにベッドに横たわった時のことだった。


 眼前に広がる、モニュメントクロックが乱立する真っ白な世界。追い詰められていた徒陸には今見ている光景が夢か現実かさえ分からなかったが、どちらだろうが徒陸には関係なかった。『当店はスケルトンが経営しております』と書かれた喫茶店に入った徒陸がマスターと思しきスケルトンにブラックコーヒーを注文し、諦めにも似た気持ちで一服していたまさにその時、徒陸は気付いた。「探偵をスケルトンにし、安楽椅子探偵として異世界の喫茶店に謎を持ち込ませれば良いのだ」と。


 その後、無事に元居た世界へと帰還した徒陸は通常時の二倍の速さで一冊分の原稿を書き上げ、初稿を担当編集者に提出した。担当編集者は「デビュー作よりも面白い」と太鼓判を押したが、異世界とはいえ実在のスケルトンと喫茶店がベースになった作品だ。出版する前に承諾を得なければと考えた徒陸は、何とかして異世界交差地点に転移しようと試みた。

 初稿のコピーをショルダーバッグに入れ、毎夜身に着けて寝ること一週間。徒陸は無事、異世界交差地点に転移することが出来たのだそうだ。



「ふむ。儂は転移魔法で行き先を異世界交差地点ここに固定して転移しておるのじゃが……そなたは転移魔法が使えんのじゃな」

「ええ。私たちの世界では転移魔法どころか誰も魔法を使えません。少なくとも、異世界転移の魔法が使えると認められた人はいないはずです」

「なるほどのう。魔法以外の文化が発展した世界というわけじゃな? 儂が暮らしている世界にも魔法を扱えん代わりに他の文化を発展させた種族がおるから雰囲気は分かったぞ」


 温かいミルクコーヒーを口にして、リンデールは納得したように頷いた。一方、徒陸は「やっぱり世界の数だけ色々な種族がいるんですね……」と目を輝かせている。

 だが――。


「ところで、マスター。――トリクの小説は面白いのかの?」


 リンデールが発した直球の質問に、徒陸は一瞬で表情を曇らせた。


 小説における評価というのは、多くの場合、絶対的なものではない。自分にとっては最高の出来だと思った話でも総合的な評価が良くなかったり、逆にいまひとつ手応えを感じられないまま書いた話でも意外と評価が良かったりすることは多々ある。また、たとえ内容が優れていても文体が好みでないといった理由で評価が下がることも往々にあるものだ。


「……あの、マスター。どうでしょうか。読んだ部分でまずいところがあれば二稿で修正させていただきますが……」


 他人の評価を気にしすぎるきらいがある徒陸は恐る恐る尋ねる。だが、原稿に目を向けたままのクロスは「そうですね……」と答えた。

 既に数十ページを読み進めていたクロスは、原稿に目を向けたまま答えた。


 少なくとも、これまで読んだ部分の内容に問題はない。探偵の種族は確かにスケルトンながらキャラクター性や口調はクロスと違っているし、登場する来店客の描写も喫茶・ノードの客を再現しているものではない。徒陸の世界では異世界に転移する者も滅多にいないようだから、この小説を読んだ人物が謎解きを求めて喫茶・ノードを訪れることはないだろう。


 ただ――クロスには、一つだけ気になることがあった。


「一話目の終わりにある『向こうが透けて見える身体と同じく謎を見透かす名探偵――。店名が〝スケルトン〟であるのは、彼の種族がスケルトンだからという単純な理由だけではないのである』っていう描写は……?」

「あ、それは私が考えた設定です。読者に覚えてもらうにはインパクトが必要かと……」


 徒陸は気恥ずかしげに答えた。自らのペンネームが『徒陸迷宮』であるのも、苗字か名前のどちらかが印象に残ればという想いから命名したのだろう。


「……あの噂の出所って……」

「うん……」


 原稿から顔を上げて呟いたミオに、クロスは頷いた。


「あの……その設定、誰かに話しました?」

「いえ、特に話してはいないはずですが――……あ、待ってください。話したわけじゃないんですが、元の世界に帰る前に店の外でぶつぶつ呟いていたかも……」


 三か月前の出来事を思い返しながら、徒陸は答える。


 徒陸によると、骨組みとなる設定や店名の『喫茶・スケルトン』は店内で考えたものの、店名の由来自体は店を出てから思い付いたそうだ。当時の徒陸は深刻な寝不足が原因で一種のワーカーズ・ハイになっており、記憶は定かではないものの、店の近くでメモを取りながら設定を呟いていたかもしれないとのことだった。


「なるほどのう。儂が聞いた『喫茶・スケルトン』の噂はそれが由来じゃったか」


 徒陸の説明にリンデールが頷く。


 異世界交差地点に足を踏み入れる者は大きく分けて三種類。喫茶・ノードに用がある者か、偶然迷い込んだ者、もしくは事情があって別世界への移動にワンクッション挟む者だ。


 恐らくは、徒陸が一人設定を呟いている時に通り掛かった後者がいたのだろう。そして喫茶・ノードを目にし、異世界交差地点にある喫茶店には謎を見透かす名探偵がいると勘違いして別の世界へ移動した……。その結果、キャッチーな設定だけが真実味を帯びて他の世界にも広まったのだと考えれば辻褄が合う。


「我ながら覚えやすくていい設定だと思っていたんですが、何か不都合が……?」

「いえ……」


 尋ねた徒陸に、クロスは声に苦笑を滲ませて答えた。


「お気になさらないでください。恐らくもう大丈夫だと思うので」

「はあ……」

「それに、一応最後まで読ませていただきますが……基本設定に修正する箇所はないかと」

「では……?」

「ええ。発行自体は何も問題ありません」

「本当ですか! ありがとうございます!」


 快諾に顔を輝かせた徒陸は「それでは一読後に契約書にサインを……!」とショルダーバッグから契約書を取り出した。クリアファイルに入れられた契約書には日付記入欄の他に署名・押印欄が設けられている。


(署名の他に押印が要るのを「ハンコ文化」って言うんだっけ。こういう時の為にハンコを作っておいて良かった)


 喫茶・ノードでハンコが必要になることは滅多にない。ただ、一部の客からハンコ入りの領収書を求められることが稀にあり、その際は友人が作ってくれたハンコを使用しているのだ。

 一人頷いたクロスはミオに頼んで契約書の内容を確認してもらうことにした。力の大半が失われたとはいえ、福の神兼貧乏神として様々な会社の業務をチェックしていたミオはクロスが知らないようなことも知っているのだ。


 チェックの結果、契約書に問題はなかったようだ。モデル料の金額に不服がなければ署名しても大丈夫だとミオは言い、そのついでに「もう少し貰ったほうが」ともアドバイスした。クロスとしては不服などない額面だったのだが、来店客の少なさを案じているらしいミオはこの機会にたっぷり稼いでほしいようで、小説を読みながら「こっちの『喫茶・スケルトン』は稼いでそうだな……」と羨ましげに呟いている。


 初稿を読み終えたクロスは契約書にサインをし、念の為にコピーを取って徒陸に渡した。初稿自体も貰えるとのことだったので、有難く受け取っておく。


「ありがとうございます! これで首の皮が繋がります……!」

「お力になれて良かったです。もし異世界交差地点この世界にまた来ることがあったらいつでも寄っていってくださいね」

「はい! 無事出版された暁にはお渡しする本を持って寝ますので。それでは……」


 店の外まで見送りにきた三人に、拝み倒さんばかりの勢いで頭を下げた徒陸は契約書入りのショルダーバッグを大事そうに抱えて歩き始めた。石畳の上を歩く徒陸の背中は白い霧の中を進み、やがて消える。


「あの人、ちゃんと再起出来るのかな」

「どうだろう。僕は面白いと思ったけど、元の世界で売れるかどうかは別だろうから……」


 喫茶・ノードの店の前、クロスは率直な意見を口にした。


「でも、あの本が売れなくても徒陸さんは諦めないんじゃないかな。絶対に諦めないって気持ちがあったから異世界交差地点ここに来られたんだと思うし」

「ま、そうかもね」

「結果はそのうち分かるじゃろうて。――さて、儂もそろそろ家に帰るかの」


 幼い顔立ちに笑みを浮かべたリンデールはフードを被ると懐に手を入れ、銀貨を取り出した。


「代金はこれで丁度じゃな」

「えっと……そうですね、大丈夫です」


 コーヒー代に必要な銀貨の枚数を思い出しながら答えたクロスに、リンデールは半ば銀貨を押し付けるようにして手渡し、二人に手を振りながら元の世界へと帰っていった。


(また来てくれるといいなあ)


 徒陸もリンデールも、各々必要な報告を終えたのだ。今後喫茶・ノードを訪れるとは限らない。それでも姿を見せてほしいと思うのはクロスのエゴだ。


「さて、僕たちも片付けを――あ!」


 ミオを連れて店内に入ったクロスは、カップ類が置かれたカウンターを見るなり叫んだ。

 クロスの後ろに立つミオはいかにも仕方ないと言いたげな顔で「そういえば」と呟く。



 また来店してほしい。――というより、また来店してくれないと困る。





 手元に残ってしまった布袋を見つめて、クロスはため息を吐いた。




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