午後の調査(3)

 地上に戻ると、すでに日は彼方西に沈みかけており、少しずつだが夜が訪れていた。

 早速僕は蓋を閉めると、彼女に先ほどのことを聞いた。

「さっきはどうしたんだ……」

 彼女は少し黙ってから、僕の目を見て答えた。

「信じられないかもしれませんが、人がいました」

「人?」

「まあ、もっと細かく言えば人じゃないとは思うんですけど……」

 彼女が続ける。

「あれは人にしては大きすぎました。恐らく三メートル近くあったと思います。それに……」

「それに……?」

 妙な空気が場を支配する。

「その生物と私、目が合ってしまったんです。だからまずいと思って身を隠したのですが……」

「そうか……」

 まさかそんなことがあるのだろうか?僕の感情は最初こそ恐怖が支配したが、もしかしたら、もしかしたら何かしら人類の想像を超えた進化を遂げた生物が生息しているかもしれない、そう考えると身震いした。

 だが今はそんなことをゆっくりと考えている場合ではない。

「とりあえず暗くなる前に帰ろうか」

 僕は彼女にそう言うと、急いでバイクの元へ向かった。


研究所に着くころには辺りは真っ暗になっていた。

「そういえば昨日はどこで寝たんだ?」

 僕はバイクの片づけをしながら彼女に聞いた。

「昨日?寝てませんけど……」

「睡眠は必要ないのか?」

「眠らなくても特に支障はないんですけど……」

 彼女はそう言うと大きくあくびをした。目元には涙が溜まっていた。

「今日は疲れたので寝ようと思います」

「そうか、なら僕の部屋の隣の部屋を使うといい」

「あ、分かりました」

 彼女はそう言うと、ヘルメットを脱いでガレージから出ていった。

 唯一の長距離移動手段であるバイクを丁寧に整備していたが、一つ彼女に聞き忘れたことがあった。

「そういえば風呂はいいのか?」

 僕はガレージから顔を出して、彼女に聞こうと思ったが既に廊下に彼女はいなかった。


 ある程度の整備が終わった後、僕は今日の調査の結果を整理していた。

 破壊状況、距離、天候など色々な対象があるが、やはり今日一番の注目と言えば……。

「地下には本当に生物が生き残っていたのか?」

 この疑問が頭から離れなかった。考えれば考えるほど気になってしまう。

「彼女言っていた『目が合った』というのも気になるな……」

 あの暗闇で本当に目が合ったというのなら、その生物というのは暗闇でも目が利くということだろう。

「一体どんな生物なんだ?」

 気が付くと僕は紙に、その生物の予想図を描いていた。それも一枚ではなく、二枚、三枚と書いたのだが……。

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