32.真夜中のタクシー

「ねえお客さん」


 運転手は助手席に語りかける。


「こんな夜中に海に行きたいだなんて、失恋でもしたんですか? いや、違うか。だってお二人はカップルですよね。私が言うのもなんですがお似合いですよ」


 後部座席の僕は怖くて口が利けない。僕は1人だし、海に行くなんて言っていない。いったい誰と話してるんだ?


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