第39話 テイソウ危機からの救世主!?
「や、やめっ……」
ここは学校で保健室で、ベッドの上。
どういう想像を働かせても、保健室のベッドで拘束されるとか思いつかない。
翠川有紀……顔がイケメンで、中性的でもあるのにこんな一面があったなんて怖すぎる。
保健室から俺をずっと見ていたって、それってつまり……。
「キミは男子なのに、乙女みたいな反応を見せるね。それも含めて可愛がってあげるけど」
「ユウキは攻略組でも何でもなくて、それって……」
「うん、そうだよ。僕は幹の全てを初めから知っている。ゲームの中身じゃなく、本当の中身をね。だからいいよ? 安心して僕の胸に飛び込んで来ても構わない」
飛び込むも何も、仰向けで身動き取れずに拘束されてるんだけど。
間違いなく恋愛に絡んで来そうにない対象だったのに、自ら絡んで来て監禁とか。
こんなのは望みたくない。
こんなことなら、斬られる覚悟でリンとみこさんにもっと色々……などと、こんなことを走馬灯にしても仕方がない。
「……じゃあ、そろそろ始めようか」
「は、始めるというと……ゲームじゃ……無いよねぇ」
「あははっ! いいね、それ。ゲーム形式で始めようか? 幹が望むなら、僕を上から下まで攻略していってもいいんだよ?」
「は、ははは……」
これは高難易度過ぎるゲームだ。
こんな時、バーチャル世界のスキルとか色々使えたら……などと絶対不可能なことにすがってしまう男の悲しさ。
男子たるもの、妄想とバーチャル世界の中では、色んな想像と自分の中の将来設計は立てまくりだ。それは素直に認めたい。
しかし今から始めようとしているよろしくないゲームは、設計に含まれていない。
こんな危機的状況にこそ、令嬢の力が欲しいのに。
ダメもとで叫ぶか? それとも歌でも歌って失神でもさせ……るほど、俺は残念ながらどこかの世界のガキ大将じゃない。
「幹、ほら、キミの顔半分が弾力を感じて来る頃だね。目を閉じて、口を大きく開けて待機してくれるかい?」
「な、何を? んぷぷぷぷ……!?」
「――はぁっ、ふぅっ……悪い男の子だね、キミ」
頭が悪い男の子ですが、何か? などと反論不能だ。
これはいかん、いかんよ本当に。
「じゃあ次は中腹に迫って行こうか」
「山の中腹は舐めたらあかんぜよ……」
「あぁ、舐めないよ。その逆はどうかな?」
そっちの意味じゃないのに、本当に危険すぎるゲームだぞこれは。
『イ、イヤアアアアア!! やめてぇぇぇくださぁぁぁい!』
――と、焦りに焦って男らしさを捨てて悲鳴を上げた、まさにその直後だ。
保健室の窓、ドア、壁の至る所からドンドンと音が鳴り出した。
「――ふん、愚かな女ばかりだ」
捨て台詞を吐き捨てながら、ユウキさん単独脱出。
「えっ、ユウキ? おーい?」
待て待て、こんなあられもない状況で放置は駄目だろ。
そして、
『助けに来……雑魚イツキめ!! 弱々すぎるぞ、バカッ!』
声だけ聞こえて力尽きた。
後はどこにでも連れて行ってくれ、救世主の友……ミズハ!
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