第26話 真の彼女の主張?
「だ、だからそういうわけじゃなくて~……」
「イツキくんの言い訳を聞きたいわけじゃないんです! どうして同じクラスにあの子がいる上、隣の席じゃなくてイツキくんの膝の上に座っていたのかを聞いているんです!!」
「そんなこと言われても、そういう場合俺じゃなくて……ミズハに聞いてもらえると助かるというか、どいてくれるはずで――」
「わたしこそがイツキくんを攻略する彼女なんです!! 後から出て来られたら困るんです!」
「そ、そんなこと言われても……」
さかのぼること数分前、というよりホームルームが終わるまでの時間帯。
廊下でバッタリと再会したミズハこと、はずみとで話がそこそこ盛り上がった後のことだ。
その時点でリンはもちろんのこと、一樹とも遭遇せず、何事も無いまま一緒に教室に入った。
そこまでは良かった。
問題は、ホームルームが始まって終わるまでに起きた出来事だ。
予鈴が鳴りいざそれが始まる時になると、どういうわけか、はずみは俺の膝の上に座りだす。
さすがに近くの席の女子も男子も、驚いて言葉を失っていた。
しかし担任は何も言わない。
「……え、どういう――」
「そのままの意味だ。ウチとイツキはそういう仲。リアルで会ったら、同じようによろしくって言ってた。忘れたのか?」
「同じように?」
「白ネコのウチを膝に乗せて、いつも座っていた。それを思い出せ」
白いネコキャラのミズハを膝に乗せた……?
いやいや、あれはだって仮想世界だから触れたように見えていただけのはず。
問題は、それをどういう口約束にしたかどうかだ。
あっ……そういえば。
「ミズハとリアルでも、こういう風に触れ合いたい……?」
「そう。だから、約束通り今してる。イツキの女って証になる」
「で、ででも、ここは学院で、教室でホームルームの時間で……」
「心配するな。先に担任と話を付けておいてある。一緒になる約束の為に必要なことだから、気にするなって言っておいた」
「えぇぇぇぇ!? そんなバカな……」
「他の女子、男子が気になるようなら、ウチが締め出すから問題ない」
――といった感じで、はずみは誰の目も気にせずに膝の上に座っている。
姿勢的に非常にまずい。
何より担任よりもリンと
それすら気にならないのか、はずみは黙って前を向いたままだ。
この姿勢に俺自身は、理性を一所懸命に保つ努力をし続けるしかないわけで。
彼女の体に触れるわけにもいかず、地獄のホームルーム時間は何とか終わった。
「一応聞くけど、ホームルームの時間に座って来る約束でも?」
「違う。イツキが希望するならいつでも座る。でも、次は無いから安心しろ」
「そ、そっか~それなら……」
「今日、イツキの家に行く。行って挨拶するから」
「――はい? え、何しに?」
「婚約の挨拶。イツキと約束したから、親に挨拶する」
「え? ええ? こ、困るよ! というか、家には親はいないから!」
「それならイツキの部屋に行く。行って済ますから」
何を済ますのかまでは、聞く勇気が無い。
あまりの展開の早さと、妙な大胆さで思考が全く追いつかないだけだ。
そうこうしているうちに、ホームルームが終わり休み時間となる。
その途端はずみは俺から離れて、隣の席に座り直した。
「え? い、いつから隣に?」
「今日から。それも話はつけてある」
「そ、そっか……」
◇
ミズハを動かしていたはずみの行動が読めない。
彼女の大胆すぎる行動に納得出来ず、真っ先に俺を廊下に呼び出したのはリンだ。
「どういうつもりかって聞いているんですっ!! どうなんですか、イツキくん!」
「な、何というか、ミズハと俺とで約束をしていたみたいで……それであんな行動に出たというか~」
「それって、婚姻ですか?」
「そんな感じかなぁ~と」
「でもですけど、わたしが彼女……真の彼女候補なんです! だからあれこれやっているのに、後から出て来ておいてあんな反則的な行動を取るなんて、ありえないです!!」
「そ、そうだよね~……」
「そういうわけなので、放課後はわたしとデートですからね?」
「えーと、放課後は約束が出来たみたいで……」
「問答無用で連れて行きますから!!」
はずみの行動に対し、特にやましい動きだったり、触れたわけでもなかった時間。
しかしその光景をまざまざと見せつけられたリンは、相当切れたらしい。
想像出来るが、きっと一樹も怒り狂って問答して来るはず。
そうだとしても、白いネコキャラミズハの勢いは、止めようがなかったりする。
本当にどうしよう。
とにかく昼休みになったら、何とかする考えを浮かばせなければ。
◇
『やぁ、
昼休みになり、全力疾走で廊下を走り屋上にでも行こうとしていたら、ヒナに捕まってしまった。
今日はとことん女難らしい。
「え、昼もそこで?」
「そうそう、ソファーで食べさしてあげる」
「た、食べさせ――!?」
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