憂鬱ロージのテッサ語り
「そういえば聞きそびれていたね。ひとまず君の名前くらい教えてもらってもいいかな?」
街を歩きながらロージさんが言った。
「タツル・サギヌマです」と俺は答えた。
「タツルくんか。ふむふむ、なるほど」
ロージさんは納得したように頷いてから、話を続けた。
「どうもタツルくんには、テッサについてきちんと話しておいたほうがいい気がする。だから余計に感じる部分もあるかもしれないけれど、ちょっと長めに話すことにするね」
ロージさんは語る。
俺の知らないテッサのことを……。
「今から10年くらい前のことだ」
「ちょっと待って。いったいどこから話す気なんです?」
「僕とテッサの出会いからだけど?」
「さすがに余計すぎません?」
「僕とテッサの出会いが、余計……、だと……?」
「すみません。もう口を挟んだりしないので、お話を進めてください」
「それでは……」
ロージさんは語る。
俺の知らないテッサの過去を……。
「今から10年くらい前のことだ。少し早めに仕事を引退した僕は、辺境の星ガラドヨルムで余生を過ごそうと居を構えた。まあ簡単に言えば、田舎でのんびり暮らそうと思ったわけだね。ちなみに、それまでの僕は都会の喧噪の中で過ごしていたよ。しかもちょっと偉い立場と言うか、いわゆる有名人になっちゃってね。おかげで精神をすり減らす毎日だったよ。特にSNS。あれには参ったね。つぶやくたびにコメント欄にアンチが現れるんだもん。つぶやきの内容をよく読みもせずに否定してきたり、関係のないことで怒ってきたり、もう散々だった。あいつら匿名なのをいいことに無責任な誹謗中傷を言ってくるんだよ? もう信じられなかったね。僕だって人間なんだ。悪口を言われたら傷つくし、腹が立つこともあるんだ。それなのに有名人だから仕方がない、他人の意見をありがたく聞け、これくらい我慢しろなんて言われても限界があるよ。どうしてそれが分からないのかな? もしかして分かっているからやっているのかい? まったく嫌になる。こんなんじゃダークサイドに堕ちてしまうよ。だから僕はその仕事をさっさとやめてやったのさ。いや、これは語弊のある言い方だね。正直に言えば、僕は疲れ果ててやめざるを得なかったんだ。今でこそ言えるけど、当時は本当に大変だったよ。僕はすっかり鬱になってしまってね。何をしても誰かに否定されるような気がして、何もできなくなってしまったんだ。それで仕事をやめて、ガラドヨルムで過ごすことにしたんだよ」
おい、これロージさんの過去じゃねえか。
しかもほとんど個人的な呪詛じゃねえか。
俺は思わず突っ込みそうになったが、どうやら話が戻ったようなので黙って聞き続けることにした。
「ガラドヨルムに暮らし始め、ついでにSNS離れにも成功した僕は、少しずつ心身ともに回復していった。田舎暮らし万歳! 大自然、最高! そんな時だったよ。僕が異様なオドの流れを感じ取ったのは。
未知のエネルギーであるオドは、様々な現象を引き起こす。特にオドの量が多かったり強すぎたりすると具合が悪いんだ。
その時僕が感じ取ったオドもそういう危険があるものだった。だから僕はオドの発生源を確かめて、場合によっては対処する必要があると思った。
僕はすぐに流れの源を探し始めたよ。そのオドは強いがゆえに簡単に感じ取れたから、流れを辿るのにはそれほど苦労しなかった。やがて僕はオドに導かれて孤児院に辿り着いた。
その孤児院で、僕はテッサに出会った。
そう。オドの流れの発生源は、テッサだったんだ。
オドの使い手はオドを感じ、操ることができる。テッサは無意識にその能力を発揮してオドの流れを作ってしまっていた。自分の力が制御できずに暴走してしまっていた。それだけにテッサの才能には出会った瞬間気がついたよ。まさに才能が溢れていたわけだからね。当時のテッサはまだ6歳くらいだったけれど、あの子が干渉できるオドの量は並外れていた。
はっきり言って、恐ろしいほどだった。
正しく導かなければ、この子はこの銀河に災いをもたらすだろう。
テッサを見てそう直感したくらいだ。
それで僕はテッサを孤児院から引き取り、育てることにしたんだ」
「あのテッサに、そんな強大な力が?」
一区切りついたところで俺はロージさんに質問をした。
「そうだよ。彼女は銀河を揺るがすほどの力を秘めている。あの素直で優しいテッサからは想像できないかもしれないけどね」
いや、どちらかと言うと素直で優しいテッサのほうが想像てきないんだけど。
俺はそう思ったが、もちろん口にはしない。
ロージさんにテッサの悪口は地雷。さすがの俺も学習する。
「それで、素直で優しいテッサを引き取ってからは、どうなったんですか?」
俺が話の続きを促すと、ロージさんは再び語り始めた。
「それからは厳しい修行の日々ってやつだよ。もちろんそんな一言で片付けられないことがいろいろあったけれど、時間の都合もあるからこの辺りの詳しい話は割愛しよう。とにかく、テッサは僕の教えをどんどん吸収して、オドの使い手としての才能を開花させていった。それだけでなく、人としても素直で優しい子に育っていった。彼女を引き取った時はどうなることかと不安だったけれど、それは杞憂だったんだ。いろんな意味で、テッサは正しい能力の使い方を習得していった。
これならオドの使い手として外に出しても大丈夫だろう。
そう思った僕は、テッサをアーカルにさせようと考えた。
え? アーカルが何か分からない?
タツルくんって意外と……。いや、何でもないよ。
アーカルっていうのは、アーカル騎士団に所属しているオドの使い手のことだ。その目的は銀河の平和と秩序を守ること。それだけにアーカルは、銀河の守護者として人々から憧れや尊敬の念を抱かれている。
じつは僕がやめた仕事というのがこのアーカルだったのさ。どうだい? 驚いたかい? こう見えて現役の頃は、戦争を終わらせるために武力介入したり、宇宙海賊を壊滅させたり、それはもういろいろとやったんだよ。まあ、そうやって活躍してしまったばっかりに団長なんてものをやらされることになって、その責任の重さから鬱になり、仕事をやめることになったんだけどね。あは……、あははは……、あはははははは……。
ごめん、話を戻すね。
とにかく、アーカルはオドの使い手の中でも一部の人だけがなれる誇り高き職業なんだ。だから僕は、テッサをアーカルにさせてやりたかった。
そのためにはどうしたらいいか。
じつはアーカル騎士団はね、次世代のアーカルを育てるために学校も運営しているんだ。名前はそのままアーカル養成学校。才能のあるオド使いが銀河中から集まる名門校で、当然だけどその学校に入ることがアーカルになる一番の近道だと言われている。
だから僕は15歳になったテッサをアーカル養成学校に入学させることにした。テッサは試験を余裕でパス。入学は正式に決定した。
この出来事がだいたい三ヶ月前のことだよ。
つまり今回の失踪事件に深い関係があるのは、ここからだね。
さて、アーカル養成学校に入学が決まったテッサだけど、学校はガラドヨルムから遠く離れた銀河連合の中心惑星コントラルにあるんだ。当然家から通うわけにはいかないから、テッサは我が家を離れて学生寮に住むことになった。
テッサを引き取ってからと言うもの、僕たちが別々に暮らすのはこれが初めてだった。寂しさや不安もあったけれど、これもあの子のためと思って僕は我慢した。本当だよ? 泣いてなんかいないよ? それにね、離れていても連絡くらいは取れるからね。
テッサが学生寮に住み始めてからと言うもの、僕は電話やメールでよく近況を知らせてもらっていた。それによれば、テッサは学校や友達とうまく馴染めているようだった。コントラルの大都会っぷりに戸惑うこともあったみたいだけど、それにも少しずつ慣れていった様子だった。よく分からないけれど、映えるスポットとやらで友達との自撮り写真を送ってきたりもしたよ。
テッサからの連絡に僕は安心した。
どうやら新生活を楽しめているようだな、と。
だけど入学して一ヶ月、あの子に異変が起き始めた。
最初は些細なことだった。
ある日テッサから、お小遣いが欲しいという連絡が来たんだ。僕はテッサのために毎月生活費を送っていたんだけど、それだけでは少し足りないということだった。
確かに僕が送っていた生活費は、コントラルで暮らすには心許ないものだったらしい。僕はついガラドヨルムの物価で考えてしまっていたんだ。
そこで僕は、臨時でいくらかのお小遣いを送ってあげた。
テッサは『ありがとう。大切に使うわね』と言った。
だけどその翌週、またテッサからお小遣いが欲しいという連絡が来たんだ。テッサ曰く、この前もらったぶんで生活費は大丈夫だけど遊ぶお金があまりに少ないということだった。
都会で遊ぶにはそれなりにお金がかかるのだろう。しかもテッサは遊びたいお年頃。せっかくお友達ができたのに一緒に遊ぶお金がないのは可哀想だ。
そこで僕は、臨時でいくらかのお小遣いを送ってあげた。
テッサは『ありがとう。大切に使うわね』と言った。
だけどその翌週、またテッサからお小遣いが欲しいという連絡が来たんだ。今度は授業で使う道具を買うのにお金が必要ということだった。
授業のためなら仕方がない。それに、これでテッサが立派なオド使いになるのなら安いものだ。
そこで僕は、臨時でいくらかのお小遣いを送ってあげた。
テッサは『ありがとう。大切に使うわね』と言った。
だけどその翌週、またテッサからお小遣いが欲しいという連絡が来たんだ。『あー、オレオレ。オレだけど、会社のお金を使ったのがバレちゃってさー。今日中に200万エンス返さないとやばたにえんなんだよねー』とのことだった。
そこで僕は、慌てて指定の口座に指定の額を振り込んだ。
テッサは『サンキュー。おかげで助かったぜ』と言った。
大金を振り込ませてしまったのが気まずかったのか、そのあとのテッサはお小遣いの催促も普段の連絡もしてこなくなった。
その頃には、僕はテッサの様子がおかしいことになんとなく気づいていた。何か悪いことでもしているんじゃないかという予感もした。だけど世話を焼き過ぎるのもどうかと思ったし、アーカル養成学校には優秀な教師もいるんだ。だから何かあっても大丈夫だろうと、僕は気にしないようにしていた。
テッサが失踪したという知らせが入ったのは、その直後のことだった。
『テッサがこつ然と姿を消しました。もちろん我々は全力で探していますが、未だ発見には至っていません。事件に巻き込まれた可能性も考慮して今後はコントラルの警察にも動いてもらう予定です』僕に連絡をくれた学校の教師は、そんなことを言っていた。
想定外の事態に僕は少なからずショックを受けた。
だいたい五日くらいはそのショックで寝込んだ。
だけど、いつまでも寝込んでいるわけにはいかない。
動けるようになった僕は、テッサを見つけるべく行動を開始した。
宇宙船に乗り込み、オドの導きを頼りに星々を駆け巡った。
そうして探し続けること一ヶ月。
僕はとうとうこの星に辿り着き、テッサを見つけ出すことに成功した。
そう。それがついさっきのカフェでの出来事だ」
ここでロージさん、いきなり涙を流し始める。
「だからね、あれは僕にとって感動の再会だったんだ。それはもう自然と涙が溢れてしまうほどのね。だけど……、だけどテッサは、僕のことを変態だの痴漢だのと! なぜなんだいテッサ! 僕はこんなにも愛していると言うのに! もしかしてこの一ヶ月のあいだに僕のことなんて忘れてしまったのかい!?」
「うん。とりあえず落ち着こうか」
どうやらロージさんとテッサの物語は、現在に追いついたらしい。
その衝撃的な事実やらツッコミどころに本来なら俺がリアクションをするところだろう。だけど見ての通りロージさんのほうが狼狽しまくっているので、俺はむしろ冷静になってしまった。
確かオドって精神が大きく影響するんじゃなかったっけ?
そんなメンタルで大丈夫か?
「ご、ごめん。また取り乱してしまったね」ロージさんが申し訳なさそうに言った。「とにかく、これでテッサの今の状況は分かったかな?」
「まあ、なんとなく」
ロージさんのおかげでだいぶ状況が把握できた。
とりあえず今回の事件に絞って簡単に整理しておこう。
①まずテッサはアーカルになるため、ロージさんのもとを離れて学生寮に暮らし始めた。
②しかしテッサは学生寮から突然失踪、行方不明になる。
③恐らくその前後、テッサは金儲けのためにスペースランナーになり、10億エンスの借金をした。
④そして学生寮を抜け出したあと、テッサはスペースランナーとしての活動を開始。
⑤一方で何も知らないロージさんはテッサの行方を追い、やがてこの星で感動の再会。
⑥だけどいろいろとバレるのが怖いテッサはロージさんから逃げている。
謎な部分もあるけれど、流れとしてはざっとこんな感じか。
「で、ロージさんは俺を巻き込んで、なんとかテッサと話をつけようとしているわけか」
確認がてら呟くとと、ロージさんがすかさず反応した。
「ま、巻き込んでしまってごめん……。そうだよね、タツルくんにとっては無関係な話だよね……。それなのにこんなよく分からないおじさんに付き合わせてしまって……。僕は本当にダメな男だ……」
「ちょっと呟いただけなのにネガティブに捉えすぎだろ……。それにまったくの無関係というわけではありません。俺とテッサは同じクランのメンバーなので」
「ク、クランだって? と言うことは、テッサは今スペースランナーになっているのかい?」
「あっ、はい。じつはそうなんです」
「じゃあ君たち二人は、恋愛的なパートナーじゃなくてビジネスパートナーだったんだね」
「その話また掘り起こすの? 散々否定したのに?」
「だって僕の予感では、テッサは男と駆け落ちするために学校から失踪したって……」
「予感よりも目の前の現実で判断してくださいよ!」
「あれ、ちょっと待てよ……」
「今度は何ですか」
「いや、そもそもテッサの駆け落ちは予感じゃなくて、僕の妄想だったよ」
「予感と妄想の区別がつかないってオドの使い手として大丈夫なの!?」
「だって仕方がないじゃないか! テッサが突然いなくなっちゃって、不安で不安でしょうがなかったんだもん! テッサに何があったんだろう、今頃どこで何をしているんだろうって考えたら、止まらなくなっちゃったんだもん!」
「ああ……。それはまあ……、心中お察しします」
「でも、実際のところテッサはなんで失踪なんてしたんだろう……。もしかして、アーカル養成学校になんて入りたくなかったんだろうか……」
それからロージさんは、しんみりとした様子で不安を吐露し始めた。
「テッサを引き取ってからというもの、僕はあの子を立派なオドの使い手にするために育ててきた。それが世のため人のため、そして何よりあの子のためになると思って、いろんなことを我慢させて厳しい修行を積ませてきた。そのおかげかは分からないけれど、あの子はあの歳にして強力なオドの使い手になった。そのことに僕は満足した。あの子がアーカル養成学校に合格した時も当然だと思うのと同時に鼻が高かった。この調子ならアーカル騎士団に入団して、銀河の平和のために活躍するのも確実だと思った。
だけどそれは、僕の自己満足だったのかもしれない。
僕はあの子に、僕の夢を押しつけていたのかもしれない。
あの子は、本当は……。
本当は、アーカルになんてなりたくなかったのかもしれない。本当は、学校になんて通いたくなかったのかもしれない。本当は、他にもっとしたいことがあったのかもしれない。本当は、僕の言うことを仕方がなく聞いていたのかもしれない。本当は、オドの修行なんてしたくなかったのかもしれない。本当は、僕の子どもになんてなりたくなかったのかもしれない。
本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は、本当は……。
だからあの子は何もかもが嫌になって、こんなことをしているのかもしれない……」
沈黙が俺とロージさんのあいだを流れて行った。
ロージさんの呆れるほどの落ち込みっぷりに、俺はため息をついてから言った。
「でも、それも全部ロージさんの妄想ですよね? 妄想が言い過ぎなら憶測と言ってもいい。とにかく、テッサの気持ちを勝手に考えて勝手に落ち込むなんて無駄もいいところですよ。それこそ自分の中のテッサとやり取りしているだけのただの自己満足じゃないですか。そんな風に落ち込むのは、本物のテッサの気持ちを確かめてからにしてください」
「でも……」
「でも?」
俺は今にも泣き出しそうなロージさんの顔をじっと見た。
するとロージさんは涙をぐっと堪え、前を見据えて言った。
「……いや、タツルくんの言う通りだね。僕はテッサと向き合うためにここまで来たんだ。それなのに話を聞く前に落ち込んでいたんじゃ、話にならないよね。ありがとう、タツルくん。君のおかげで勇気が出たよ」
俺は安堵のため息を吐きながら小さく笑った。
まったく、世話のかかる大人だ。
でも、俺からしても二人には向き合ってもらいたい
お互いの気持ちをちゃんと伝え合ってもらいたい。
これは本来親子の問題で、俺なんかが口出しすべきことじゃないのかもしれないけれど、ロージさんの話を聞いて改めてそう思った。
その結果、テッサはスペースランナーをやめて学校に戻ることになるかもしれない。そうなったら俺は再び路頭に迷うことになるが、それはそれで仕方がないだろう。テッサには自分の人生があり、ロージさんには娘を思う気持ちがあるのだ。その決定を俺は尊重しなければならない。
ただし……、俺も死にたくないからそうなった時はしっかり泣きつかせてもらうけどな! 尊重はするがごねないとは言ってない! 俺にだって人生があるんじゃボケェ! こっちはテッサの都合に振り回されているんだから、何かしらの補償をしろ!
まあ、よく考えるとただの言いがかりな気もするが……。
……。
ロージさんに頼んだら助けてくれないかな?
とりあえず俺の問題はその時になったら考えよう。今はテッサとロージさんの問題を片付けることが優先だ。
そんな風に考えているうちに、俺たちはテッサが指定した場所に到着した。
「あっ。どうやら待ち合わせ場所はここみたいですね」
スマートノートに表示された地図を見ながら俺は言った。
その場所にはレンガ作りの比較的大きな建物があった。それ自体にもその周囲にも人の気配はなく、寂れている。少なくともここは人が集まる場所ではないらしい。宇宙港が近いのか、上空には巨大な宇宙船が飛び交っていた。
「ふむ。ここは資材置き場のようだね」俺の予想を補足するようにロージさんが言った。
「隠れているって言っていたし、テッサはこの中にいそうですね」
さて、ここからはひと仕事だ。
俺は軽く気合いを入れて言った。
「それじゃあテッサを説得してくるので、ロージさんはここで待っていてください」
「説得? どうしてタツルくんが説得なんてするんだい?」
「えっ……?」ロージさんの返答に俺は困惑した。「でも、テッサと話ができるようにって……」
「うん。僕は話ができるように協力して欲しいとタツルくんに言った。だけど、説得して欲しいとは言っていないよ」
あれ、そうだっけ?
いや、この際正確な言葉遣いはどうでもいい。
どっちにしても俺は、話し合いの場を設けるための説得要員だと思っていたのだけれど……。
「えっと……、じゃあ俺は何をすれば……?」
「それはもう、一つしかないよ」
次の瞬間、ロージさんは腰から光の剣を取り出し、その刃を展開した。
昨日テッサが使っていたライトなセーバーと同じ武器。
その剣先を俺に突きつけて、ロージさんは言った。
「タツルくんには人質になってもらう。もちろん協力してくれるよね?」
「ふぇ?」
テッサがロージさんのことを悪魔と呼ぶ理由が、分かった気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます