完璧な姉を真似し続けてた俺は、異世界では何でも真似できるようです。

華夏猫

第一部 オカランド

第一章 喫軌

第0話 突然の別れと姉

「お宅の娘さん凄いわねー。時ノ下ときのした高校に受かったなんて!」


 こんな会話、日常茶飯事である。褒められているのは俺の姉である木下美由紀きのしたみゆき。時ノ下高校は偏差値75もある、世界的に有名な学校だ。そんな高校に入った姉は、


「近かったから入った」


 など、意味不明な事を言うし、さらにはその学校で学力、運動ともに学年1位を誇り、誰が見ても容姿端麗のハイスペックすぎる姉であった。

 それに比べて俺の順位はど真ん中、成績も普通。平凡すぎるのだ。そんな俺に、いつも優しく接してくれるし、バカにしたりもしない姉の事をいつも尊敬していた。だが、気がかりなことがある。親や周りの人だ。俺がいくら頑張ったって姉と比べられて、大したことないだとか、もっと頑張りなさいだとか言われる。周りの人だって、姉に比べて俺は劣っている劣っていると、バカにしてくる。


 そしていつからか、俺は姉の真似をするようになっていた。


 姉と同じ時間に起き、同じ時間に朝食を食べ、同じ時間に家を出る。さらには同じ文房具、同じ仕草。そんなことまで真似をするようになっていた。そうなってしまった俺はそれを悔やんでいるわけでもなく、後悔しているわけでもない。姉の真似をするおかげで、姉と同じ時ノ下高校にも入れたし、親からも少しは認めてもらえた気がする。


 だが、そんな幸せな事は、長く続かない。


「咲人、美由紀が……」


 ある日。突然美由紀が亡くなった。小学生たちが道路で遊んでいたところに、トラックが激突しそうになった。それを美由紀が助け、美由紀が犠牲になった。もちろん小学生は助かった。子供を連れて何人かの親が俺の家へ押しかけ、土下座までしていった。

 俺は尊敬していた姉を無くし、学校へ行く気力も失っていた。第一に真似をしてきた俺にとって姉は、今じゃ言葉にできないくらい大切で、もはや自分自身と同じようなものであった。



 美由紀が亡くなって数日後、俺は目が覚めると、見慣れない景色が並んでいた。


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