第71話 新生な4人
その日、説明により大分時間が遅くなってしまったので俺は彼女達を泊めることにした。まぁ、気軽に泊めるのもどうかと思うんだが同居するわけだし……いいかな? いや、本当は良くないだろうな……
と言うわけで彼女達が無事魔装を得るというプロセスは突破した。現在俺はメルに家の中を紹介しつつ今後の要求をする。
「それでここら辺にトレーニングルームを作って欲しいです。研究室とかはご自由に何処でも使ってください」
「おお。ありがたいで、こう見えてワイは一応研究者やからな。そういうんがないとキツイところや」
「そうですか。それでアルテミスに連れて行って貰えるんですか?」
「あー、それなんやけど……ちょっとまだ答えが出てないみたいなんや……すまんな、流石にいきなり魔力量が千倍の者を複数と言うわけにもいかないんや……こっちから協力を持ち出しておいてホンマに申し訳ない」
「いえ、それは想定内ですから大丈夫です」
本当はアルテミスに今すぐにも行きたいがあちらの世界が拒むというのは想定内。今現在で出来る事を随時やって行く。本来の『ストーリー』でも彼女達は向こうの世界に行くがそれはこちらでの様々な戦闘を経て信用をされてから。それをいきなりにはいかないだろう。
「すまんなぁ、魔装ならすぐにでも用意できるんやけど……ところで、なんであんなに種類が必要なんや? 子供用の服まで用意するんやろ?」
「魔族が一般市民を今後襲う事は想定内。そこで一般の服を着て紛れ込み、わざと逃げ遅れることで不意打ちをすることが出来る。さらにそれをあらゆるバリエーションですることで魔族に一般市民への手出しを抑止させることが出来るということです」
「ああ、なるほど。本当に逃げ遅れた人間が居た時に手出ししづらい状況を作るという事やな?」
「そうです」
それだけが理由ではないが大体そんな感じだ。一般市民が人質に取られると色々めんどくさい。万が一現場に間に合わなかったことも想定する。
「いや、でも子供服はどうするんや? 着れへんやろ体格てきに」
「そこは幼児化する薬でも作ってください」
「出来へん事もないけど……それはちょっと時間かかるで?」
「そうですか……出来るだけ早くお願いします」
「分かったで」
彼女は優秀な研究者であっちの世界にはこちらにはないファンタジーが溢れている。『ストーリー』でも『魔装少女』の幼女化はあったので薬は作れるだろう。
「じゃあ、早速作業するからあんさんは部屋でゆっくり……」
「いえ、手伝います。何でもいいですから」
「あー、じゃあ魔力貰ってええか? その装置に注いでくれや」
「はい」
彼女の近くにある機械に魔力を注ぐ。時間を無駄にしない為に俺はしっかりと今後について考えを巡らせた。
◆◆
「できたわ、二体目の怪人……」
「おお、そうなのか。前回は全く情報が分からなかったからな。今回こそ相手の情報が欲しいな」
「わかってるわ。今回は速さに特化した怪人。魚雷人よ」
黒の戦艦内、ミッシェルが新たなる怪人を作り上げお披露目をする。半魚人のような体つきだが全身からバチバチと放電している凶悪そうな怪人だ。
「イエーイ! ビュンビュン!! 俺さまはスタート出来たら一番速いぜ!! ビュンビュン」
魚雷人は戦艦内を雷速で走り回る。それには魔族たちも驚きを隠せない。
「おお、中々じゃねぇか」
「……俺程ではないが」
「まぁ、今の所は情報集めだからね」
「情報集めじゃ終わらないぜー!! うっかり倒しちまうかもな!! ビュンビュン!! 俺はスタートしたら一番速い!!」
戦艦内を特急列車のように走り回る。
「ま、取りあえずあっちの世界に向かってくれる?」
「直ぐに向かうぜ。俺はスタートしたら一番速いからな!!」
怪人が現代に到着するのは明日の午後……一体どのような戦いになるのかそれは誰にも分からない。
◆◆
彼とメルちゃんが何やら話をしている中、僕たちは泊めてもらうので夕食を作るという話になった。
「アオイちゃんは料理できるの?」
「ぼちぼちのぼちくらい出来る」
「そっか、じゃあ四人で作ろう。何が良いかな?」
晩御飯のメニューを決めるというのはかなり大変な物だ。僕は自炊だから凄い分かる。
「……から揚げが良いんじゃない……深い意味ないけど」
「いいですね。十六夜君も好物ですし!!」
「そうね。から揚げにしましょう」
アオイちゃんがから揚げを提案することで今晩はから揚げに決定。アオイちゃんはから揚げが好きなのかな?
これからは皆で同居と言う事になるけど……こんなことになるなんて僕は全く想像できなかった。異世界の話。侵略者の存在。どれも荒唐無稽だが現実に起きてしまったので信じるしかない。
僕だけじゃない、世間一般でもかなり困惑の声が上がっている。
SNSのトレンドは『化け物』、『魔法少女現る』関連の事が二位からずらっと書かれている。一位は『
ニュースは何度も化け物による破壊活動について報道している。そんな凶悪な化け物と戦うわけだけど……彼が居ると思うとちょっと安心する。だって、僕も怖いけれどやれるだけのことをやるつもりだし、同時に彼一人で十分ではないかと思うからだ。
改めて彼は普通じゃないと思う。良い意味で。
「それじゃあ、から揚げを作りましょう」
「そだね……」
「あ、その前に私はパパとママに連絡しないと……」
まぁ、色々考え過ぎず彼女達との料理を今は楽しもう。
◆◆
夕食を食べた後、僕たちはお風呂に入り、そして借りた部屋で四人で並んで寝ることになった。彼はメルちゃんと色々やることがあるからまだ寝ないらしい。
布団の上で全員で向かい合い話し始める。
「アオイちゃんもしよかったら女子力向上委員会入ってよ」
「何それ?」
「女子力を向上させる目的の集まりだよ! お買い物したり会話のレパートリーを増やしたり楽しいんだ!!」
「……いいの?」
「いいよ! それじゃあ、寝る前に早速やってみよう! このボードにお題の答えを書いて」
「大喜利なの?」
「そう言うときもあるだけだよ!」
アオイちゃんにボードを渡して僕はお題を伝える。コハクちゃんと火蓮ちゃんは準備万端だ。
「それじゃあ、この写真で一言」
スマホのアプリでランダムに写真を表示する。トラックの写真が映ると真っ先に火蓮ちゃんが手を上げる。
「異世界転移装置」
「?? 良く分からないけど……可愛いから百点」
「え? 基準甘くない? しかも良く分からないって言ってんじゃん……」
「良いんだよ。可愛いは正義だから」
「あ、基準が崩壊してる感じね……」
アオイちゃんはまだこの委員会に慣れていないようだ。考えるより慣れた方がいいよね?
「彼氏に別の女のにおいが……そんなときどうする?」
「はい」
「コハクちゃん」
「監禁……ではなくしっかりと向き合って今後について話し合います」
彼女のボードは上の方が黒くグジャグジャと書かれて一部見えないが、綺麗な字で今後についてしっかり話すと書いてある。
「後半は偉い、前半ちょっと怖いけど……まぁ、九十点かな。可愛いし……ちょっと怖いけど……」
「いやいやいや、ダメでしょ。監禁とか言ってるし、向き合うって全部吐きだすまで瞼無理やりこじ開けて聞く狂気と言う意味でしょ。って言うかなんであーしがツッコミ役なの? あと判定基準が甘すぎ」
「ナイスツッコミ!」
「そんなサムズアップされても……」
僕の見立てた通りアオイちゃんはかなり面白い。新たなる可愛い女の子で輪が広がった感じがする。
新生女子力向上委員会の初回はかなり盛り上がった。
◆◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます