第41話 訓練生、ダンジョン初日

 ネネが攻撃魔法の曲射を覚えて現象操作の練習を始めた翌日、今日は訓練生が男女別チームに分かれての初のダンジョン実戦訓練の日でもある。


 整列した訓練生を前に軍服姿のレオーナが訓示を述べている。

 凶熊討伐から帰って来てからコソコソ作っていた一品で、今日はある意味卒業式なのでレオーナには着飾って貰った。

 内側にワイシャツを着ているとはいえ上着の胸元は鳩尾みぞおちまで開いていてボタンで留められていて、ボタンの下からは外に開くように裾が広がっているのでシャツの下腹部が丸見えになっている。

 つまり夜、シャツを着せずに上着を着た時の事だけを考えて作ったデザインだったりする。


 下はパンツ(長ズボン)、タイトスカート、ヒラヒラのスカートから3タイプ。

 スカート着用時には腰まであるストッキングか、ガーターベルトと腿までのストッキングかが選択可能。


 着色については間に合わなかったので全身白で、帽子もまだ作っていない。

 それでもレオーナは常に増して美しく輝いていた。

 まだ誰ともマンネリ化してないが、新衣装登場の夜はコスプレで致すのを当たり前の習慣にしておくためにも、今夜のレオーナは軍服半脱ぎで致すしかない!!

 今はパンツだが、今夜はヒラヒラを頼むか。


 ヒーローズ、バルキリーの両チームには、今日は1階のみと厳命してある。

 明日以降は自由に冒険すればいいが、不慣れでまだチームに探索者も居ないとなれば、階の上り下りだけでもかなりの時間がかかる。

 彼等が資源調達の役割を果たせるようになるのは、まだまだ先になるのかもしれない。


 俺達のチームは2つに分かれ、それぞれのチームの後ろからついて歩いて、ダンジョンでも通用するのかを見定めるのが目的だ。

 ヒーローズにはエロ餓鬼2匹が居るので女が近くに居ると勝手に行動して使い物にならなくなる。

 だから分けた人数は1:7だったりする。

 ヒーローズ、監視1名。

 バルキリー、監視7名。

 かたやムサイ、かたや華やか。

 アンディとパトリオットには殺意を持たざるを得ない。

 始まる前からやる気にヒビが入りかねない状況だが、これもお仕事と割り切っていきますか。


 △△▽▽◁▷◁▷


 ヒーローズのリーダー、モハメド。

 金髪碧眼の24歳、騎士。

 堅実実直な好青年で、指導していたレオーナ達からだけでなくヒーローズの5人からの推薦でリーダーに選ばれた。

 残り2人は自分がリーダーだと立候補していたが……


 サブリーダーのギブソン。

 茶髪茶目の27歳、騎士。

 ストイック過ぎるのでリーダーよりサブに向き、モハメドに着けて飴と鞭の鞭を期待されていてそれを自覚している。


 ベテランのガルシア。

 黒髪黒目の29歳、斥候。

 斜に構えた言動に惑わされがちになるが非常に有能で観察力に優れる。


 新人ロマニ。

 紺髪イエロー目の16歳、魔法使い。

 面白い着眼点と発想をもつ地属性魔法使い。


 新人レイシス。

 金髪碧眼の15歳、魔法使い。

 線の細いショタな見た目の闇属性魔法使い


 問題児パトリオット 

 赤髪金目の15歳、戦士

 年の割にマッチョ。


 問題児アンディ。

 青髪緑目の15歳、戦士(探索者希望)。

 普通の体格だが器用。


 狂信者ポチョムキン。

 茶髪茶目の17歳、僧侶。

 転職石の閃きで神の存在を感じで狂信し始める。

 他人に強要しないのでその点については放置されている。


 ギブソンとガルシアは問題児に対して暴力を振るわず態度や言葉で力の差を見せつけるので、アンディもパトリオットもヤバイとかまずいと思い素直に言う事を聞くので、年上ならではの巧みな手綱の握り方をしていると言える。


 戦闘は騎士2人が1戦ごとに交代で前に出て塩太陽の進みを防ぎ、若手は前衛後衛1人ずつが順番に戦闘に参加。

 問題児が前で武器を振るい魔法使いが攻撃魔法を使って、ポチョムキンは僧侶なのに盾と棍棒を握り信仰を叫びながら最前線にて攻撃している。


「生きる事はぁぁぁ、神の与え給うたぁぁぁ、試練に他ならないぃぃぃっ!」

「ポチョうるせぇっ、僧侶が最前線に出んな、俺達が目立てねえだろうが!」


 ポチョムキンは前衛後衛で判断するなら後衛なのだが、武器の選択が前に出る事を目的としているので今は前衛として扱っている。

 今後どうなるかはチームで決めてもらうしかない。

 モハメド達年長者はこれを纏める苦労人なので、3人にはたまに酒の差し入れをしておこう。

 こんなのをチームに入れなきゃ冒険できないなんて、飲まなきゃやってられないだろうからな。


「次、後ろから来たぞ」


 斥候一本で続けてきているので俺より職業が育っているガルシアが、背後から塩太陽の接近をヒーローズに伝えている。

 職業が育っている分、索敵範囲も相応に広いのだろう。

 多数の職業を強制的に同時に育てている俺では、彼の索敵範囲に追いつくまでにどれ程かかるのだろうか検討もつかない。

 これは総職系男子の数少ない短所と言えるだろう。

 なぜなら、今もモンスターの接近に気付けなかったのだから。


 隊列を変えるかと相談しているモハメドとギブソンだが俺が行くとガルシアが走り出し、塩太陽の攻撃を全て躱しつつカウンターを入れてあっさり倒して、それを誇るでもなく戻ってきた。


『グヌヌ……』


 なにやらスケベコンビが唸っているが、俺よりモテそうな活躍された、とかその辺りだろう。

 もしかしたらこれが年頃のエロ男子の正しい姿なのかもしれない。

 表面上エロくない男子も居るし、エロに興味がないとか興味が薄い男子も居るだろうから、全男子の正しい姿ではないだろう。

 あのまま日本で生活してたら、死を身近に感じて生きていなかったら、俺もあんな感じだったのだろうか?


 △△▽▽◁▷◁▷


 昼になりヒーローズを案内してバルキリーと合流、俺の案内でダンジョンから出る。

 巨大羊皮紙と細い炭は渡してあるから、マッピングをどうするかはそれぞれのチーム次第。

 希望者がいつ探索者に転職するのかでも変わってくるだろうなあ。


 ダンジョンモンスターのドロップアイテムは、日本で買える一般的な物が品質の基準としては近い。

 なので異世界人達からはとても高品質で、レオーナでさえ初めてだというグレードの物が多い。

 だが調味料が絶対的に足りないので調理可能な料理は多くないが、それでも美味いと高評価。


 中でも最も人気の食品が20階のピラザニアというピラニアのモンスターが落とすピザとラザニアだ。

 このダンジョンで唯一完成した料理を落とす階で、そこに使われているであろう調味料は他の階でも出ない。

 バリエーションも豊富で毎日食べない限りは飽きない程度には多い。


 飲料では頭が蛇でその下は人間の脛と蛇の尻尾になっている脛ークは蛇酒のみだが、猪のモンスターのチョコザイは各種酒類を落とすので、チョコザイの酒が1番人気でモハメド達に差し入れしようと思っているのがこっちの酒だ。


 差し入れの事は黙って、全員にダンジョンの10階までの出現モンスターとドロップアイテムについて説明しながら昼食をとった。


 スケベコンビがドロップアイテムが自分の物になる前提で、誰それにプレゼントして付き合って貰うぜ等と話していたが、モハメド、ギブソン、ガルシアが頷いていたので後で説教だろう。

 通貨のない現状、村の物資は全て共有財産で、過剰に持っていかない無駄遣いをしないなら自由に持ち出せるのだ。

 それを忘れて勝手な事を言っているが、お前達2人の衣食住の全ては俺が提供した物だからな?

 貰うだけ貰っといて仕事で得た物を還元しないで私物化しようだなんて……まあバカだから何も考えずに欲望のままに喋ってるだけだろう。

 周囲の評価がガンガン下がっているのにも気付かないで、2人は恋人ができた後の事を大声で語り合っていた。

 バルキリーの1人がスケベコンビを殺意の籠もった目で睨んでいるし。

 なんだかなあー。

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