第34話 あの日の再現
流石にエルネシア達も復活しているかと、朝にはダンジョン周回を切り上げて休憩所に戻る。
ダンジョンワープで外に出て変身を解除すると、思いもよらない再開が待っていた。
ポフッ。
凶熊の囮になる直前にペットになったモンスターのオトが、顔の側面に抱きついてきたのだ。
「おおおおっ、お前オトか、エルネシアもネネも何も言わなかったから……でも、また会えて嬉しいぞコンチキショー!」
オトは顔からぴょんと飛んで着地すると俺に対してファイティングポーズを取った。
「お前まさか、武者修行の旅に出ていたのか!?」
コクリ。
「いいぜオト、お前の成長確かめてやる。手加減なしだ、本気で来い!!」
ダッ!
僅かな踏み切りの音と共に、かつてとは比べ物にならない速さで飛びかかってくるオト。
懐かし差につい、盾はないがあの時と同じように無手の左手を掲げて防御する。
ドバボギィ!
耐久力も激上がりしている俺の腕を蹴ったオトは、あの時と同じように、いやそれ以上に酷い骨折をして声なき悲鳴を上げて蹲っている。
しゃがんで大回復と状態回復をオトにかける。
「オト、あの時と比べてお前は遥かに強くなった、だが俺の方がその何倍も成長したからこうなったに過ぎない。それだけ俺の戦った相手は強敵だったと言う事だ」
オトは落ち込み座り込んで俯いている。
「オト、エルネシアが言うには探索者のダンジョンワープは8人が限界だが、使役されたモンスターなら別に1体連れていけるそうだ。だからお前が希望するなら、俺達と一緒にダンジョンで冒険しないか?」
手を差し伸べると顔を上げたオトがバッと飛んできて、今度は顔の正面から抱きついて頬ずりしてきた。
顔に柔らかい毛と腹の感触が当たって気持ちいいが、呼吸し難いので引き剥がし肩に乗せる。
オトが正面を向いて座り落ち着くと、そのまま休憩所へと帰った。
△△▽▽◁▷◁▷
エルネシア達は全員起きていた。
「ただいま」
「あっシバ君、お帰りなさい」
「あーうん、ただいまヴェルカ、あいつ等どうしたんだ?」
だが、うち5人が少しばかり青ざめていて、ヴェルカだけが出迎えてくれた。
「はい、レオーナ達は話し半分に聞いていたら実際は話しの数倍凄かったので、エルネシアちゃん達はシバ君がパワーアップして帰ってきたので、みんな少々怯えていています」
「俺だけかなり強くなっていてもエルネシアとネネは恋人だし、レオーナ達は不可抗力とは言え保護したんだから自立できるまでは多少の支援はするぞ?」
(これは本気で自覚してない? エルネシアちゃん達の話では、当初は僅かながら自覚があったような素振りがあったと言ってましたが……本人が状態回復や浄化も使ってますから体に問題はないはず、何かの特殊な職業のようですし、強くて便利だからこそのデメリットとかでしょうか?)
「クスクス、シバ君はうっかりさんですね」
「どういう事?」
「私達はあのような人達に
ギギギギギギギギギ。
油の切れたブリキロボのように首を動かし、奥にいる恋人2人と新恋人らしい3人を見る。
コクリ。
全員一斉に頷きやがった。
「これからシバ君はみんなのために村作りしてくれるんでしょ? 私達もできる限りのお手伝いするからさ、シバ君も頑張ってね」
それからヴェルカは抱きついてくると耳元で
「頑張った分だけ、夜はご褒美をあげるからね」
「オゥー……」
大人の女性のギャップと色気にやられ、しばし棒立ちになるのだった。
△△▽▽◁▷◁▷
ピザだけで簡単に朝食を済ませると、村作りのための作戦会議を開始する。
「知っての通り俺の戦闘力はかなり高い、その理由の1つは天職だ、天職の名を総職系男子と言い獲得した全ての職業を現職にする」
『えっ!』
『なっ!』
『それは』
恋人達の驚く声が重なるが話しを進める。
「1つは初期職業が勇者で、今は英雄も持っている」
当然驚くけど無視して。
「他の職業の話しは長くなるから飛ばして、最後の1つは変身だ。ある日現れた凶熊をエルネシアとネネから引き離すのに囮になり、かなりの期間をかけて1人で討伐したんだが、凶熊のドロップアイテムがこの自分サイズの凶熊に変身する能力を持たせるベルトだったんだ」
もう誰も驚き過ぎて声も出せないらしい。
質問も来ないようだし職業について軽く説明しとくか。
「勇者と英雄の他に持っている代表的な職業は魔法使いで、ご覧の通り8属性、ネネと同じだな」
知らなかったのかレオーナ達4人が同時にネネへと顔を向ける。
それに対してネネは少しばかり誇らしげに微笑んで見せた。
「他には戦士や職人、奴隷商人に僧侶神官大神官とかはよく使うな、それを言ったら斥候系がいくつかに探索者もだったか。あとは……面倒であんま覚えてない」
ネネに向いていた視線がこっちに来た。
「肩に乗ってるのは魔物使いとして使役したウサギのオトだ、武者修行に出てて今朝帰ってきたらしい。これだけ職業を持って変身までする俺が村に留まって指示と労働をしてるのは無駄で、ダンジョンでアイテムを集めてくるべきだと思うんだけど、どうよ?」
「その場合は誰が指示を出すんですか? 私達か倉庫の中の誰かから選ぶんです?」
「村の設計図を用意してあるから、レオーナ達に選んでもらった村長に丸投げしようかなと。あっ倉庫で思い出した、ゼオラ、これ読める?」
ゼオラにテーブルの下で拾った羊皮紙を渡す。
「拝見しよう……これは! これをどこで!!」
「昨日、村の予定地で」
「この羊皮紙には精霊文字で今夜この場所に精霊女王が来るから、出迎えの準備をしておくようにと書いてあるが、文面には明晩ではなく今夜となっている。つまり昨夜だ」
『ええええええええええええええええ!!』
室内には5人の女性の声が響き渡った。
逆にまだまだ生意気盛りだと自覚している俺は、相手の都合を考えない身勝手な要求に怒りにならなかった思いが不快感になって意識を占めた。
相手の態度次第では……
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