第四話 展示室から
アルラウネに
「……顔、埋めたい」
思わず漏れた心の声に、主が小さく肩を震わせた。
「少年。気持ちはよく分かるが、止めた方がいい。うっかり起きられなくなったら困るだろう?」
「起きられなく?」
「この子の性質でね。相手から熱を奪うんだ。
だから枕にしちゃったり、うっかり抱えちゃうと、寒さのあまり起きられなくなってしまうかもね」
茶目っ気たっぷりに笑っているが、語られた話の内容に、慶太は思わず手を引っ込めた。こんなにも可愛い見た目なのに、そんな恐ろしい一面があるだなんて。思えばクラスでも、外見と中身が合わない子がたまにいる。そういうものなのだろうか。
慶太の様子を楽しげに見ていた主だったが、次をうながすように向かいのガラスケースを指さした。そこには、淡い茶色の髪を、鼻唄でも歌っているのだろうか、とても楽しげに三つ編みにしている、人形サイズの少女がいた。顔立ちから考えると、ヨーロッパの方だろうか。頭にモコモコの帽子をかぶり、水色の、雪の結晶が入った、これまたモコモコのワンピースを着ている。彼女の後ろには小さなログハウスがあり、そこで生活しているのだな、と想像出来る。
「彼女は誰ですか?」
「彼女の名前は、スネグーラチカ。ロシアの、サンタクロースの孫だね」
「サンタクロースの孫?」
サンタクロースとは、白いヒゲをたいそう付け、赤い服と帽子をかぶった
「ロシアでは、サンタクロースのことを、『マローズ爺さん』と呼ぶらしいよ。そして、共にするのは孫のスネグーラチカだ、と言われているんだ。元は雪の
唇に人差し指を当てて、そうほほ笑む主の顔を見あげたあと、慶太はもう一度ガラスケースを見つめた。近寄ってみると、慶太に気付いたのか、スネグーラチカは美しく笑い、手を振ってきた。
しばらく手を振りあっていたが、スネグーラチカは気が済んだのか、また髪を編み始めた。
「ここは、不思議な所ですね」
「そうですか?」
「ええ……不思議な所です」
来た道を振り返ると、紹介された精霊たちがそれぞれ好きなことをして生活している。まるで今までがそうであり、これからもそうであるかのように。
「……今日は、もう帰らないと」
気付けば陽は大きく
だから、
「あの」
「何だい?」
「明日も、来て、いいですか?」
慶太の
「もちろんだとも。
いつでもおいで」
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