短編集

蒼乱

私達の仕事をなくす為。

俺は仕事仲間のポールと共に5人1部屋の寮へと入っていった、他の3人はまだ訓練中のようだ。

普段なら棟ごとに1ヶ月交代で寮に泊まり、訓練を行うのだが最近はパンデミックや外交、差別反対デモによって出動命令が多く陸軍本部が緊急状態を緩和するまで寮生活をする羽目になった。

「なぁジョン、もう軍服脱いでいいかな?」

「どうせ出動命令が出るんだ、栄養だけ取っとけ」

俺はポールにそう言いゼリー状の栄養食を渡す。

そこで扉が開き上官が現れた。

こんどはデモ隊が暴動でも起こしたのだろうか。

「お前ら、これを使って近くのマクドナルドでハンバーガーを単品で1つ買ってこい。なるべく早くだ。」

そういって彼は20ドル2枚を俺に渡した。

「いや、ですが上官。まだ緊急状態緩和とは聞いてないのですが。」

「それはもう解除されたんだ。言ってなくて悪かった。まぁそのせいで俺は書類の処理に追われてるんだがな。今夜は寮の見回りなんてしていられないくらいには疲れているだ。急げ、なんならママチャリでも使え。」

そう言った上官は唇の右端を上げニンマリとした顔で俺を見た。

上官が西洋紳士に見えてしまった。

「いや大丈夫です。体力鍛えたいんで走ってきます。」

「ちょ、ポール、バカ!

上官、ハンバーガー1つですね?わかりました。それでは。」

そう言って俺はポールを寮から引っ張り出し裏にある駐輪場に向かうい、ママチャリをだして陸軍基地の前の池の周りを走っていく。

「なんで今日に限ってハンバーガー1個だけなんだろうね。上官は絶対ビックバーガーのセットでコーラとサラダなのにね。」

ポールが天然なのは迷惑だったが、今だけはそれも悪くないと思えた。

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